「国民民主」公認取り消しの候補がまさかの当選…投票日に“うちの候補ではない”で大混乱、翌日に議員辞職へ
「国民民主」公認取り消しの候補がまさかの当選…投票日に“うちの候補ではない”で大混乱、翌日に議員辞職へ

3月8日に投開票された埼玉県議補選(南第2区・川口市、定数2)を巡り、国民民主党が投票前日に公認候補を除籍処分とし、公認も取り消す事件が起きた。候補者に過去の不祥事が分かったことが理由とみられるが除籍理由も明らかにしていない。

 

期日前投票が始まってから公認を取り消されても、除籍された事実を知らない有権者は多く、問題の候補は当選した後、翌朝には辞意を表明し議員選びは大混乱に陥った。国民民主党の候補者選びは一体どうなっているのか。

「当該の件は7年以上前の罰金刑による処分」

国民民主党を巡っては、先の衆院選東京7区で出馬した公認候補の入江伸子容疑者が知人のSNSマーケティング会社社長と共謀して運動員を買収していたとの公職選挙法違反容疑で警視庁が2月に逮捕している。

この時も党は入江容疑者を除籍にしており、党の候補者選定自体に重大な問題があるとの疑念が湧いている。

今回補選では国民民主党から西澤理(さとし)氏(38)が立候補。他に自民党と日本保守党、日本大和党がそれぞれ公認候補を立て4人で争われた。

ところが期日前投票も進んだ選挙戦最終日の7日午後になって党県連はSNSで、6日に西澤氏を除籍にし、7日に公認を取り消したと発表。玉木雄一郎代表はこの発信をリポストし「公認の判断に当たって通知すべき重要な事実を隠して公認を得たことが理由です」と説明した。

しかし、その内容を県連は明かさず、党公認候補とした組織の責任には「(候補者の資質に関する)判断を左右しうる情報が本人から事前に開示されなかった場合、把握するのは困難」と弁解している。

問題になった重要な事実とは何か。社会部記者が話す。

「2016年に千葉県の会社員が神奈川県警に逮捕された事件があり、当時報じられたこの会社員が西澤氏ではないかとの見方があります」

西澤氏は党の発表直後、自身のXで処分は受け入れると表明し謝罪の意を投稿している。

〈発表では、特定の事実の申告がなかったとの指摘がありました。

当該の件は7年以上前の罰金刑による処分であり、既に刑の言渡しの効力(5年)は失われております。刑が消滅した場合、履歴書の「賞罰欄」に過去の前科を記載する法的義務は原則ありません。〉

〈更生を誓ったものが、何年も何十年も社会的制裁を受け続け、二度と立ち上がれない社会であってよいのか。困っている人にこそ手を差し伸べる社会をつくることこそ、政治の役割ではないか。私はそのように信じています。〉

過去のことだといっても有権者からすれば「誤解を招くような隠し方」は困る

問題は有力国政政党が公認として立てた人物を投票日前日に、「うちの候補ではない」と言い出したことだ。ポスターを張り替える時間もなく、投票当日まで掲示板には国民民主党公認と書かれた西澤氏のポスターが掲載され続けた。

投票に来た60代の女性が証言する。

「国民民主のマークが掲示板にまだあるから、どうしても党の人だと見えてしまう。選挙前日にSNSで言われても私はインターネットをそこまで見ないしわからないよ。(記者に)言われるまで国民民主党の人が過去に問題を起こしていたなんて知らなかった」

同じく投票に訪れた70代の夫婦も、

「そんなことがあったなんて知らなかったよ。公認を出すからには、本来はもっと厳しく精査しなきゃいけないはずだよね。いくら過去のことだといっても有権者からすれば『誤解を招くような隠し方』は困る。

掲示板の表記もちゃんと変更すべきだと思うね」

と話した。選挙期間の大半を国民民主党候補として遊説して回り、ポスターにも党公認と書いてある以上、選挙の最終盤で公認を取り消したと発表してもすぐに認識されるはずもない。

結果、西澤氏は2万4594票を獲得し、自民候補に次いで2位で当選してしまう。しかし翌9日朝、西澤氏は前日のポストの後、非公開にしていたXを再開し、

〈今回の当選は、国民民主党からの公認取り消しが充分に伝わらないなかで国民民主党に対する期待を、私、西澤さとしに重ねていただいたものが多いかと存じます。
そうであるならば、私がこのまま議員として活動することは適切ではないと考え、即日、議員辞職することを決意いたしました〉

と辞意を表明する大混乱となった。

「人が集まりすぎているのにチェックできる者が足りない」

東京7区の入江容疑者の問題に続き、なぜこのようなことが起きるのか。ある国民民主党関係者は党内の現状について話す。

「SNSなどで候補者の公募をかけまくって人が集まりすぎているのにチェックできる者が足りないということに尽きます。その結果今回のような投開票日直前に過去の粗相がわかって有権者に迷惑をかける事態が起きてしまった。ほかに党内の人間が紹介した場合は党本部の面接も受けていないで公認をもらった人も一部います」

また県連の関係者は

「公認候補は基本的には2か月に1回のペースで開かれる『役員会』で決めます。選挙間際で急ぐ時はオンラインで集まる形もあります。メンバーは国会議員や県議(いまは0)、市議ら。

この10人が名前の挙がってきた候補を『公認するか、しないか』を各自の物差しで判断するわけですが、審査といっても事務局が身辺調査を完璧にやるわけじゃない。役員それぞれが、自分のルートで相手のことを調べてくる、っていうのがうちのスタイルです。

意見が割れても多数決で押し切るようなことまずせず『全会一致』が基本です。今回の西澤さんの件は『公募』で入ってきたのか、それとも有力者の『推薦』だったのかはわからない。でも、この10人の審査をすり抜けたか、誰かが背中を押したことは確かです」と話す。

西澤氏は自身のホームページや党のチラシで、2023年から元埼玉県知事の上田清司参議院議員の事務所で「公設秘書」を務めていたとアピールしてきた。西澤氏のポスターにも上田氏が顔写真付きで、

「データとファクトに基づく政策提案ができる西澤さとし君を私が推薦します」

とのメッセージを寄せている。上田氏には西澤氏が公設秘書を務めていたことが事実なのか、事実なら過去の経歴などを認識していたのか、について集英社オンラインは質問を送っており、回答があれば追記する。

衆院選で落選した候補者が逮捕されたことに続き、今度は除籍・公認取り消しした候補が当選してしまい、候補者が議席を返上する事態になった。国民民主党の候補者選びは根本から見直す必要がありそうだ。

※「集英社オンライン」では、今回の事件についての情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。



メールアドレス:
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X(旧Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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