「パンチくんはイジメられている」「海外の愛護団体からも連絡が」世界的人気の子ザルに異常事態…ガセ、寄付金詐欺、無許可グッズ販売も 市川市動植物園も困惑
「パンチくんはイジメられている」「海外の愛護団体からも連絡が」世界的人気の子ザルに異常事態…ガセ、寄付金詐欺、無許可グッズ販売も 市川市動植物園も困惑

日本のみならず世界的にも話題となっている市川市動植物園の子ザルのパンチくん。母親に育児放棄されたため、人工哺育で育ったパンチくんは、オランウータンのぬいぐるみ“オランママ”を母親がわりに抱きしめている。

 

その愛らしい姿がSNSで拡散され、またたく間に人気者となったパンチくんだが、その人気に乗じて飼育員をかたった偽SNSアカウントで寄付金詐欺が行なわれるなど、異常な事態が起こっている。現状について市川市動植物園の安永崇課長を取材した。

「パンチくん池落とし」動画の真相

市川市動植物園の2月の入園者は約47,000人、これは前年比2倍以上の数だという。3月に入ってからも客足は衰えることなく先週末には約9000人が訪れた。

3月7日には韓国の音楽グループであるBLACKPINKのリサが市川市動植物園を訪れ、その様子を自身のInstagramに公開して大きな話題を呼んだ。

今のこの状況について安永崇課長はどう感じているのか。

「ローカルな園ですから、もともとは近隣の方がのんびり、ふらっと来るというような利用形態だったのですが、今は来園する方の半数近くが外国の方だったり、大きなトランクをガラガラ転がしていて観光でいらした方だったりします。

著名人の方が来られる時には事前連絡をいただくケースといただかないケースがあるので、すべてを把握しているわけではありませんが、事前に連絡をいただいた方に関しては把握しております。

動物を見にお忍びで来るということはこれまでほとんどなかったと思います。このような状況は動植物園の歴史上初めてのことだと思います」

連日、さまざまな報道やSNSでパンチくんの情報は発信されているが、直近ではパンチくんが群れの猿に無理やり池に落とされる動画が拡散され、『パンチくんはイジメられているのではないか?』という“イジメ疑惑”が話題の中心だった。

安永課長が状況を説明する。

「パンチがイジメられているという一連の動画についてですが、基本的に人間でいうイジメや虐待かというとそういう事ではないんです。

パンチは最年少ですから群れの中では下位になります。

序列の上のサルからすればしつけという意味合いなんです。

池に落とされる前にもパンチが地面を引きずり回される動画もありましたが、あれはパンチが別の子ザルに対しマウントを取り、それがきっかけで起こりました。

切り取られた動画だけを見るとパンチだけがやられているように見えますが、他のサルもやられています。それに本気でパンチに致命傷を与えようとしているサルはいませんでしたよ。あくまでしつけ教育と認識しております。

ですが、順位の高い個体から手を出される場面が増えてきたことから、一時的にその個体数頭を群れから離します。当面この状態で様子を注意深く見守ります」

「パンチを売ってほしいと英語で言っている電話もあって…」

こうした状況に対し、パンチくんの置かれた環境を非難する動物愛護団体だったり、「イジメられているならお金を出すから買い取りたい」と過剰とも思える反応をする人たちもいる。実際に電話が鳴りやまない時期もあったという。

「一時は電話を切ったらすぐに次の電話が鳴るという状況の時もありました。メールも膨大になってきていて職員ができるだけ誠実に対応するようにしていますが、われわれの能力に追いつかないレベルになってきていて……。

外国語でパンチがどうとか言われる電話もかかってきます。ニュアンスとしてしかわからないのですがクレームだったり、パンチを売ってほしいといったことを英語で言っている電話もありました。そういう時は『ノットフォーセール(Not for sale)』と返事していました。

もちろんクレームだけでなく、応援のメールや電話などもたくさんあります。園に訪れてくれて応援してくださったり、私の場合、『Xの中の人だ』と声をかけてくださる方もいて、そういったことは非常に嬉しく思っています」

パンチくんを巡っては市川市動植物園のあずかり知らぬところでTシャツなどをはじめパンチくんグッズが販売されているが、それだけでなく、飼育員をかたったSNSの偽アカウントによる寄付金詐欺まで行なわれている。

「市川市動植物園として公式グッズはありませんし、色々な商品があるとは聞いていますが、市川市動植物園として許諾している商品はありません。

それから市川市動植物園が公的に発信しているのは公式サイトとX以外にはありません。個人的に飼育員などは園に関する公的な情報発信を一切行っていませんので十分注意していただきたいです。

ありがたいことに応援したい、寄付したいという声が非常に増えておりまして『寄付について近日発表します』というお知らせはしているのですが、まだ詳細は発表しておりません」

1歳の誕生日がひとつの節目

現状、園としてはパンチくんを群れに戻すことを第一目標と考えている。そして徐々にだがパンチくんが群れに受け入れられている兆候も見られているという。

「パンチと交流する個体も増えてきていますので、園としては群れ入れが着実に進んでいるものと評価しています。

オランママと一緒にいる時間も少しずつ減ってきていますし、親代わりに思っている飼育員がエサを持ってサル山に入るとエサそっちのけで飛びついていましたが、先週初めて飛びつかない日がありました。

少しずつ群れの中で生活していくというようなことが増えていくのではないかって思っていますし、そうなってほしいと期待しています」

これまで市川市動植物園が人工哺育後に群れ入れに成功したのは、5頭中4頭だったという。

「ある個体は引っ込み思案で群れになじめず、群れから攻撃され続けてしまうということがありました。我々も飼育方法を工夫したりするのですが、最終的にはサルの性格の部分も大きいんです。

どうしても群れになじめなかったその子は今も1頭で別の檻にいます。そういう意味ではパンチはアクティブですし、われわれも頼もしく思っております。

いつになったらオランママ離れ、飼育員離れをするのかというのは私らもわかりません。群れに馴染んでもお母さんの場合はお母さんとして接するので、パンチが成長したのちオランママや飼育員にどう接するのかは現状ではわかりません。

ニホンザルは生まれてから半年までは母親のもとにくっついていて、半年から1年ほどで徐々に群れでのルールを学んでいきます。

パンチは今年の7月26日が1歳の誕生日ですから、そこで群れ入れが順調かどうかひとつの見方はできると思っています」

1歳の誕生日にパンチくんがどんな成長をしているのか今から楽しみである。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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