「俺たちは“ダサいことは絶対やらない”と決めた」男闘呼組が覚醒した映画『ロックよ、静かに流れよ』…2万人が列を作った衝撃
「俺たちは“ダサいことは絶対やらない”と決めた」男闘呼組が覚醒した映画『ロックよ、静かに流れよ』…2万人が列を作った衝撃

1988年、男闘呼組は映画『ロックよ、静かに流れよ』で初主演を果たした。不良高校生バンドを演じた4人のリアルな演技は高く評価され、日本アカデミー賞話題賞など数々の賞を受賞。

この映画をきっかけに、男闘呼組は“普通のアイドル”とは違う道を歩み始める。メンバーが語る、グループ覚醒の瞬間とは。

『人生はとんとんー成田昭次自叙伝―』より一部を抜粋、編集してお届けする。

俺たちは決めたんだよ、ダサッて思うことは絶対にやらないって。

1988年、男闘呼組は映画『ロックよ、静かに流れよ』で銀幕デビューを飾る。

成田昭次が演じたのは、高校生・ミネさ。タバコを吸い、万引きをする素行の悪い不良役だった。同時にハムスターをかわいがる優しさや、万引きの濡れ衣を着せられた女子高生を助ける正義感の強い一面を持ち合わせていた。

ミネさは俊介(健一)、トンダ(和也)、トモ(耕陽)らとバンド「ミッドナイト・エンジェル」を結成するが、初コンサート前に、バイク事故で死んでしまう――。

メンバーは、特に和也は、この映画にかけていた。

「この頃、自分たちはアイドルらしからぬやり方で独自の道を作るんだって強く思ってた。アイドルの枠に収まらない新しいグループとして、自分たちのあり方を模索してたというか。



それは、楽曲制作やコンサートだけじゃなくて、演技の仕事に関しても。それが、自分たちのグループの個性を出すこと、他グループとの差別化につながるって思ってたよね。だから、そこに一生懸命こだわった。

長崎俊一監督はセリフの喋り方から何からとにかく本物志向で。いい映画を作るために、アイドルの殻を破り捨てて、その役にならなきゃいけないっていうスタンスだったんだよね。僕らは、この映画で、ホントに世の中をびっくりさせたいと思ってた。

映画『ロックよ、静かに流れよ』で、『あいつらはアイドルだけど、すごいね。やるよね。芝居上手いんだ』って思わせて、次の段階で、『バンドで演奏も自分たちでやるの?』『作詞作曲も?』ってのを目指してたから」

この映画によって、グループの方向性もより明確になったと健一も言う。

「映画の俺たちと、実際の俺たちが、すげえシンクロしたというかさ。耕陽以外の3人はリアルな世界で、まあ言ったら不良だよ。昭次は名古屋の、和也は(東京)烏山のヤンキーで。

俺は乱暴なことこそしないけど、いつも新宿の路上に座ってさ。

たまたまアイドル事務所に入ったけど、その偶然がなかったら、俺は夜の世界で黒服をやろうと思ってた。実際、誘われてたわけよ。男闘呼組のメンバーに出会ってなかったら、遅かれ早かれ、そっちの道、不良に戻ってたと思う。

映画の役柄として不良を演じて、元々俺ら、これじゃんって思ったんだよね。ある意味で素に戻れたっていうか。変に取り繕わず、あ、この方向で進めばいいってのがあったわけ。覚醒というか、再確認というか。

そしたらもう、アイドルの綺麗な衣装なんか着れなくなっちゃうよね。とにかく自分たちが着たいものを着る。好きなものしかやらない。俺たちは決めたんだよ、ダサッて思うことは絶対にやらないって。
男闘呼組になった時に」

映画公開イベントに2万人が列

4人のアイドルらしからぬ熱演は高く評価され、映画『ロックよ、静かに流れよ』は、第12回日本アカデミー賞作品部門話題賞、キネマ旬報ベストテン第4位、第10回ヨコハマ映画祭、作品賞、監督賞、新人賞など数々の賞を獲得することになる。

公開記念として、『前夜祭だよ!男闘呼組&光GENJI』と銘打ったイベントが開催され、ミニコンサートと映画上映が行われた。2500枚の当日券のみ販売されることが発表されると2万人以上がチケットを求め列を作った。

2月の寒さの中、少女が2日間徹夜したり、チケットを求めるために学校をサボったとして8人の中学生が補導されるなどニュースにもなっている。

映画の撮影期間、ロケ地である長野県松本市で4人は2ヵ月間、寝食をともにしている。その時間が、よりメンバーの絆を深めていったと昭次が言う。

「ずっと一緒にいましたからね。特にホテルの部屋割りが俺と健一、和也と耕陽だったのが影響したのか、プライベートでつるんだりするのも、その組み合わせが多くなっていって」

メンバーとの関係が深まれば深まるほど、昭次は不思議に思った。

「社長がメンバーのこと、グループのこと、どこまで見えていたのかわかんないですけど、グループのバランスがすごい良かったんですよ。4人とも性格はバラバラなのに。自分ができないことをこいつはできるってこと、それぞれのメンバーに対して思ってた。だから意見が対立しても、最終的にはどこかでわかり合えた。

これがもしメンバーが3人やふたりだったら違ってた。

4人だったからこそ。健一と和也はすごいイケイケな性格で。世間的には和也がイケイケだったように映るかもしれないけど、いちばんイケイケなのは多分健一で。ふたりが男闘呼組というグループのイニシアチブのようなものを握ってた。何かアイデアを生み出すのは、やっぱ健一とか和也だったから。

耕陽は頭がいいし、俯瞰(ふかん)して冷静にグループを見ることができる。社会性というか、男闘呼組という社会のルールや秩序を作って、男闘呼組の良心のような存在だった。

僕は僕で、ガンガン前へ行くタイプじゃなかったんで、よく言えばグループのブレーキ役としてバランスを取ってた気がする。グループのバランスってやっぱ大事で、イケイケの和也と健一がいて、ブレーキをかける俺と耕陽ってバランスが良かったんですよ」

構成/水野光博 写真/井村邦章

人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―

成田 昭次
「俺たちは“ダサいことは絶対やらない”と決めた」男闘呼組が覚醒した映画『ロックよ、静かに流れよ』…2万人が列を作った衝撃
人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
2026年1月15日発売2,200円(税込)四六判/264ページISBN: 978-4-08-790209-9

伝説のロックバンド男闘呼組のボーカル&ギター・成田昭次、初の自叙伝が発売!
50歳を超えて精力的に活動しチャレンジを続ける成田が語る、男闘呼組活動休止、逮捕、芸能界引退、そして奇跡の復活。舞台裏にあった熱き想いと涙。すべての成田昭次ファンに贈る著者渾身の一冊!

引っ込み思案だった幼少期、兄の背中を見て飛び込んだ芸能界、男闘呼組デビューの裏側、突然の活動休止、2009年大麻所持で逮捕。愛する兄の自死。


地元・名古屋の工場で働きながら、ようやく築いた平穏な毎日。そして、2019年男闘呼組メンバーとの運命の再会。
安定した生活を捨て、2022年男闘呼組再始動…。知られざる半生のすべてを赤裸々に語る。
男闘呼組メンバーである岡本健一、高橋和也、前田耕陽のコメントも収録。

Myojo10000字インタビューのスタッフが集結。本書の口絵には、『明星(Myojo)』でデビュー前から成田昭次を撮り続けてきたカメラマン井村邦章による撮り下ろしカットを掲載。

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