1988年にデビューしたロックバンド・男闘呼組。しかし当時は第2次バンドブームの真っただ中で、「アイドルがやる偽物のバンド」と厳しい視線を浴び続けた。
『人生はとんとんー成田昭次自叙伝―』より一部を抜粋、編集してお届けする。
容赦ない罵声「ギター弾きながらバク転すんのか!」
時代は男闘呼組に対し激しい向かい風を吹かせた。
80年代後半、第2次バンドブームが起こり、男闘呼組のデビューと前後して、1987年にはTHE BLUE HEARTS、UNICORN、88年にはJUN SKY WALKER(S)といった名だたるバンドがデビューしている。
“イカ天”と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組『三宅裕司のいかすバンド天国』が人気を博し、バンドブームは最高潮に達した。
第1次と第2次バンドブームの違いは、“聴く”から“やる”へと変化したことだと言われている。結果、アイドル事務所に所属しバンド活動をする男闘呼組への風当たりは強まっていく。
「本物ではない。偽物のバンドだ」と。
「時代がね。本当にそういう時代だった。ちょうどバンドブームで、やっぱりアイドルがバンドをやるっていうことが、なかなか受け入れてもらえないというか。
特にイカ天に出るようなバンドは、地元の中学や高校の同級生が集まって組むことが多くて。僕らも、事務所を介して出会ってはいても、誰かに強制されたわけじゃなくバンドを組んで、ケンカしたり、笑いあったり、思春期のいちばん多感な時間を一緒に過ごしたんで、別にそんな大差はないはずで」(成田昭次)
それでも、色眼鏡が外れることはなく、容赦なく罵声は飛んだ。
「ギター弾きながらバク転すんのか! 」
男闘呼組がテーマ曲の『Midnight Train』を歌い、司会も務めたプロレス番組でのことだった。男闘呼組がプロレス会場の両国国技館へ着くと、「帰れ! 帰れ!」と観客から大ブーイングが起きた。黙ってやり過ごすメンバーを尻目に、和也だけは「うるせえんだよ、てめえら!」と怒鳴り返した。
数日後、たまたまバーでメンバーがプロレスラーのマサ斎藤に出くわすと、「あの曲、good(グー)! 」と言われ、救われた気がした。
ロックミュージシャンの内田裕也に「あいつらはね、俺、ロックだと思うよ」と肯定してもらえることもあった。男闘呼組をロックバンドとして認める著名人も日に日に増えていったが、それでも空港や電車内で絡まれることが日常となった。
野次られると、誰彼構わず応戦しようとする血の気の多い和也をなだめるのが昭次の役目だった。
ある生放送の討論番組に男闘呼組が出演した時だった。
「俺たちは、“男が闘いを呼ぶグループ”だ」
バンドブームを検証することをテーマに、多くのアマチュアバンドマンが参加し、男闘呼組のメンバーはゲストとして出演した。
生放送5分前、「ギリギリに行きゃいいじゃん」と、健一はいつものように楽屋でくつろいでいた。マネージャーが焦りだし、ようやく「大丈夫、今、行くから」と楽屋を出ると、何やらスタジオが騒々しい。
「おい、高橋来いよ。怖いのかよ! 」
「何だとこの野郎、てめえが降りてこい! 」
ひな壇最上段にいたバンドマンとゲスト席の和也が、今にも殴り合いが始まりそうな勢いで怒鳴り合っていた。
放送開始30秒前、MCが「とりあえず席につけ!」とどうにか諫(いさ)めるのと同時に番組は始まった。
メンバーの誰が言い出したかは定かではない。それでも昭次の記憶には、こんなやりとりが残っている。
「どこに行っても喧嘩が絶えなくて。でも、『これはこれでいいんだよ』って。俺たちは、“男が闘いを呼ぶグループ”だ。バンド名通りなんだ、受け止めようぜって。闘うことウェルカムでやってけばいいんだって。
俺たちには俺たちのやり方しかないんだから、だったらもう空き缶投げつけられたって胸張って堂々とやってるほうがカッコいいじゃんって。あの頃、たとえそれが虚勢であろうと、胸張るしかなかったんですよ」
男闘呼組を否定する者たちをねじ伏せようと、男闘呼組のメンバーは徐々に自らの手で曲を作り始める。それは世間に対する彼らなりの反抗だった。
そして反抗のベクトルは、彼らに偽物のレッテルを貼ろうとする者以外にも向けられるようになっていく。
「ロックバンドだから」という理由で、事務所名物のうちわやペンライト、手拍子での応援も禁止した。
テレビのインタビューには尊大な態度で臨み、何を聞いてものらりくらりと質問をはぐらかしてはインタビュアーを困らせた。
サインを求められた際、漫画『あしたのジョー』の主人公のライバル・力石徹(りきいし・とおる)の名前を書いた。そこに意味などなかった。
和也は「あの頃、俺は常に怒ってた。誰彼構わず」と当時を振り返る。
「要するにさ、シラフでいたら怖いから突っ張ってた」
「やっぱり、セックス・ピストルズみたいなアイドルとしてのあり方もあるわけじゃない。ほんとに人騒がせな、もう放送禁止用語をボンボン言っちゃったりとか。スキャンダラスな存在であることで、みんなから余計に注目を集めるみたいなさ。なんかそういう存在に向かっていっちゃったんだよね。
要するにさ、シラフでいたら怖いから突っ張ってた。こっちもなんか虚勢張ってないと、舐められんじゃねえかっていうのがあってさ。まだ10代、20 代の前半で若かったよね」
男闘呼組はデビュー時に、和也の独断で耕陽がリーダーに選ばれている。耕陽が選ばれた理由は「遅刻をしないから」だった。
アイドル雑誌の撮影で夕陽をバックに撮影しようと集合時間が設定されたことがあった。時間通りに来たのは耕陽だけ。他のメンバーが到着したのは、夕陽がとっくに沈んだ後だった。そんな時、耕陽が編集者に頭を下げるのが、毎度おなじみの光景だった。
構成/水野光博 写真/井村邦章
人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
成田 昭次
伝説のロックバンド男闘呼組のボーカル&ギター・成田昭次、初の自叙伝が発売!
50歳を超えて精力的に活動しチャレンジを続ける成田が語る、男闘呼組活動休止、逮捕、芸能界引退、そして奇跡の復活。
引っ込み思案だった幼少期、兄の背中を見て飛び込んだ芸能界、男闘呼組デビューの裏側、突然の活動休止、2009年大麻所持で逮捕。愛する兄の自死。
地元・名古屋の工場で働きながら、ようやく築いた平穏な毎日。そして、2019年男闘呼組メンバーとの運命の再会。
安定した生活を捨て、2022年男闘呼組再始動…。知られざる半生のすべてを赤裸々に語る。
男闘呼組メンバーである岡本健一、高橋和也、前田耕陽のコメントも収録。
Myojo10000字インタビューのスタッフが集結。本書の口絵には、『明星(Myojo)』でデビュー前から成田昭次を撮り続けてきたカメラマン井村邦章による撮り下ろしカットを掲載。

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