「俺たちは本当に最高のバンドだったのか」…男闘呼組、27年ぶりセッションで出た“答え”
「俺たちは本当に最高のバンドだったのか」…男闘呼組、27年ぶりセッションで出た“答え”

2020年8月4日。ロックバンド・男闘呼組のメンバー4人が、実に27年ぶりに同じスタジオで音を鳴らした。

コロナ禍で2度の延期を経て実現したセッション。当時の記憶と不安を抱えながら、彼らが最初に演奏したのは代表曲『TIME ZONE』だった。その瞬間、メンバーの胸に去来した思いとは。

『人生はとんとんー成田昭次自叙伝―』より一部を抜粋、編集してお届けする。

2020年、27年ぶりに実現した男闘呼組のスタジオでのセッション

メンバー4人が心待ちにした3月のセッションは、世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス蔓延のため延期に。5月上旬にリスケされるも、この時も緊急事態宣言のため県外への移動ができず再び流れてしまう。2度の延期を経て、セッションは昭次の52度目の誕生日の3日後、8月4日に決まった。

8月4日––。4人での演奏どころか、4人がそろうこと自体が27年ぶり。舞台『the Slab Boys』の千秋楽以来のことだった。

その朝、昭次は自分が緊張していることに気づく。それでいてセッションが待ち遠しく、気持ちは逸(はや)った。昭次はメンバーの誰よりも早くスタジオに入ろうと、集合時間の1時間前に着こうと決めていた。



そこに健一からの電話が鳴る。
「みんな早めに名古屋に着きそうだから、開始時間1時間早められないかな? 」

きっと、メンバー全員が同じことを思っていた。

スタジオに電話をすれば済むはずが、いてもたってもいられず、昭次はスタジオへ向かった。運良く、「前がいないんで大丈夫です」とスタジオは時間変更を了承してくれた。

もうすぐメンバーがやってくる。

昭次はギターのセッティングをすぐに始める。じっとなどしてはいられなかった。自分のセッティングが終わっても、ただ座って待つことができず、メンバーのセッティングも始める。

「和也はここだったかな。健一はこっちだよな」

昭次がスタジオの外に荷物を取りに行った瞬間だった。遠くから、聞き覚えのある声が呼ぶ。
「昭次!!」

健一が大きく手を振って、こっちに向かって歩いてくる。
まるでお別れ会での再会シーンをリプレイしているようだった。唯一違ったのは、健一の隣に和也と耕陽の姿があったこと。

昭次の胸が高鳴る。
「セッションって言っても、ようは遊びなわけで。でも、メンバーの誰もが、せっかく27年ぶりにみんなで音を出すんだからって、すごい気合いを感じたんですよね」

和也だけは、昭次が名古屋に帰ってから、一度も会っていなかった。

健一の呼びかけに手を振り返す昭次が、元気そうなことに、和也は胸を撫で下ろす。この日、和也には確かめたいことがあった。

「あの頃、男闘呼組として自分たちのやってることに、ものすごい自信を持ってた。俺たちは最高なんだって。27年経ってもそのことを信じ続けた。ただ、あの頃、そういう暗示をかけることで虚勢を張ってたんじゃないかって思う部分もどこかであって。

暗示なら解けているだろう今、もしセッションして最高でもなんでもなかったら……暗示にかかっていただけ。
最高な男闘呼組は、ただの幻想だったらどうしようって怖さもあったわけ。

あの日俺たちは最高だったって自負が、その後の27年を支える背骨になってたわけで。信じたものは、やっぱ本物であってほしいじゃん。本当に俺たちは最高のバンドだったのか、それとも世間から揶揄(やゆ)された通り、事務所に作られたアイドルバンドだったのか、今日答えが出る」

「俺たちが信じたものは間違ってなかった」

27年の時を経て、最初に奏でた曲は『TIME ZONE』だった。

イントロが始まる。その瞬間だった。昭次は「一瞬で時間が巻き戻った」と感じた。

「正直、やれることはやってこの日を迎えたものの、まともに演奏できないんだろうなってどこかで思ってた。最後まで完走できなくて、何回もやり直したりするんだろうなって。

でも、そんなことはなくて。ひとりだったら多分できなかった。4人が集まったからできた。もちろん、魔法じゃないから、あの頃みたいにブワーッて弾けたわけじゃない。

だけど、何だろう。みんなの思いが、4人の思いが、この4人だからこそ、この4人だからこうなんだっていう感覚が蘇った。

変わってないんだ。やっぱり、俺たちって。この日のセッションは完璧なんかじゃなかった。でも間違いなく俺たちの音だった」

曲を重ねるごとに眠っていた記憶が呼び起こされていく。

「健一の音、昔からいちばんデカかったな。やっぱり今もデカいんだ。なんなら今のほうがデカいじゃん。和也がベースアンプをセッティングする仕草も、目があった時の耕陽の表情も、昔見た光景だった。これが岡本健一だ。高橋和也だ。
前田耕陽だ。これが男闘呼組だって。

いつかきっと、この日のことを思い出すんだろうなって、演奏中ですら思って。この瞬間に、あまりにいろんなことが詰め込まれすぎてたから。なんてすごい日なんだろうって。本当に夢みたいでした。なんか本当に」

初めて和也とセッションした日のこと、『ロックよ、静かに流れよ』のミッドナイト・エンジェルの演奏シーンの撮影のこと、さまざまな思い出が走馬灯のように昭次の脳裏を駆け巡った。

開始から5時間、セッションは終わった。

和也の表情は満足げだった。

「男闘呼組は、やっぱり最高のバンドだった、俺たちが信じたものは間違ってなかった。
たださ、この日に関しては、やっぱり昭次のことだよね。

耕陽と健一は名古屋で一度会ってたけど、俺は本当に10年以上ぶりで。

会えたことのうれしさとさ、こうなんて言ったらいいんだろうな。ああ、なんか、会った後、会いに来たことが間違いだったって思ったらさ、悲しいじゃん。で、そうはならなかったからさ。あいつはあいつのままだった」

構成/水野光博 写真/井村邦章

人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―

成田 昭次
「俺たちは本当に最高のバンドだったのか」…男闘呼組、27年ぶりセッションで出た“答え”
人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
2026年1月15日発売2,200円(税込)四六判/264ページISBN: 978-4-08-790209-9

伝説のロックバンド男闘呼組のボーカル&ギター・成田昭次、初の自叙伝が発売!
50歳を超えて精力的に活動しチャレンジを続ける成田が語る、男闘呼組活動休止、逮捕、芸能界引退、そして奇跡の復活。舞台裏にあった熱き想いと涙。すべての成田昭次ファンに贈る著者渾身の一冊!

引っ込み思案だった幼少期、兄の背中を見て飛び込んだ芸能界、男闘呼組デビューの裏側、突然の活動休止、2009年大麻所持で逮捕。愛する兄の自死。
地元・名古屋の工場で働きながら、ようやく築いた平穏な毎日。そして、2019年男闘呼組メンバーとの運命の再会。
安定した生活を捨て、2022年男闘呼組再始動…。知られざる半生のすべてを赤裸々に語る。
男闘呼組メンバーである岡本健一、高橋和也、前田耕陽のコメントも収録。

Myojo10000字インタビューのスタッフが集結。本書の口絵には、『明星(Myojo)』でデビュー前から成田昭次を撮り続けてきたカメラマン井村邦章による撮り下ろしカットを掲載。

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