WBC敗退で「ネトフリ解約」トレンド入り…それでもNetflixは“150億円投資”を回収できたのか?
WBC敗退で「ネトフリ解約」トレンド入り…それでもNetflixは“150億円投資”を回収できたのか?

ワールド・ベースボール・クラシック2026(WBC)は15日、準々決勝で日本はベネズエラに逆転負けで敗退し、4強入りを逃した。Netflixが日本独占配信していたことから、Xでは「ネトフリ解約」が一時トレンド入りした。

WBC目的での加入者が多かったためだ。しかし、約150億円とも言われる巨額の投資であっても、十分なもとは取れそうだ。

WBC効果で300万以上の新規契約者を獲得?

NetflixがWBCを日本国内で独占配信したことで投資額に見合うリターンを得られたかどうかを判断するには、新規契約者数や継続率の実数が重要になる(ただし現時点で公表値は限定的)。そのヒントになりそうなのが、産経リサーチ&データが3月13日に発表したアンケート調査だ。

それによると、「WBC1次ラウンドの日本戦をリアルタイムで視聴しましたか?」との質問に「Netflixで視聴した」との回答は29.4%にのぼっている。そのうち「WBCに合わせて契約した」との回答は43.6%だ。

日本の総世帯数は約5500万世帯。インターネットとテレビの普及率を加味してNetflix視聴可能なインフラを持つ世帯を7割とすると、29.4%は約1132万世帯に相当する。さらにその43.6%をWBC目的の新規契約とみなすと、約494万世帯となる。もっとも、この試算は前提の置き方に大きく左右される。

日本経済新聞は2026年2月のNetflixの利用者数が約1200万人で、前年同月比で36%増の300万人増加したとの試算を報じている。同記事によると、2026年3月2日~8日はダウンロード数が前年同月の4.8倍、利用者数は2.3倍に急増したという。

産経リサーチ&データをベースにした試算値とそう離れてなさそうだ。

Netflixは広告つきスタンダードプランで、キャンペーン期間中の初月が498円。
スタンダードが795円、プレミアムが1145円である。
翌月から広告つきプランが890円、スタンダードが1590円、プレミアムが2290円に値上がりする仕組みだ。

90%が広告つきプラン、8%がスタンダードプラン、2%がプレミアムプランに加入したとすると、1か月目のNetflixのWBC効果は約26億円。2か月目で約74億円、5か月目で約219億円を突破する計算だ。

しかし、解約が発生するため、実際の売上はもっと低いはずである。

高めの解約率を設定しても約半年で投資回収できる

仮に初月で解約した人が30%いたとする。2か月目でさらに8%、3か月目に5.5%、それ以降も5.5%の解約が続いた場合のシミュレーションでも、6か月経過でWBCによる新規加入者の累計売上が150億円を突破する計算だ。

なお、アメリカの調査会社のアンテナによると、動画配信サービスの有料会員の解約率は月平均5.5%で、平均契約期間は20か月弱だ。初月に解約する人が多く、3か月程度で通常の解約率に戻ったとしても、平均契約期間内に投資額を超えるリターンが得られる計算なのだ。

WBCの開催は、MLBと選手会による労使協定の合意が必要だ。交渉が決裂した場合、次の大会は先送りされる可能性もある。

つまりNetflixは大きなリスクを取って投資を行なったわけだが、結果としてそれに見合ったリターンを得られた可能性は高い。

Netflixはスポーツ以外のコンテンツでも、ヒット作を連発していた絶妙なタイミングであったことも見逃せない。Netflixアニメ映画『超かぐや姫!』は新規ユーザーの映画ランキングで1位を獲得。『ONE PIECE』の実写版は批評家や一般視聴者から高評価を得ている。世界的なヒット作となった『地面師たち』の人気も底堅い。

視聴者を長期間にわたって繋ぎ止めるコンテンツが充実しているのだ。

Netflixの独占配信を3割が受け入れるという現実

そして、Netflixが革命的だったのは、公共性が高かったスポーツの視聴に対してお金を払うという文化を形成しつつある点だ。

先の産経リサーチ&データの調査で、Netflixの独占配信という異例な形になったことへの回答では、「地上波で見られないのは残念だが、放映権料の高騰などを考えればビジネスとして仕方ない」が21.3%、「これからの時代、世界的なスポーツ大会が有料配信になるのは自然な流れだと思う」が9.4%だった。3割超がNetflixの独占配信を受け入れているのだ。

アメリカでは、スポーツ専門チャンネルが早くから発達しており、ケーブルテレビなどで有料で見るという文化が定着していた。有料視聴のハードルが低いのだ。そうした文化が、スポーツ選手や関連団体に多額の資金が回る原動力になっていた。

アメリカ型の文化が少しずつ浸透する未来も見えてくる。

巨額を投じてスポーツの放映権を獲得した例に、ABEMAによる「FIFA ワールドカップ カタール 2022」の全試合の生中継がある。決勝トーナメント「日本対クロアチア」戦の視聴数は2000万を突破し、約2300万を記録した。しかし、無料だったために子会社のAbemaTVは四半期で103億円もの赤字を出す結果となった。

サイバーエージェントの狙いは明白で、ABEMAというサービスの認知度拡大だった。その後、視聴者数は堅調に推移してAbemaTVは黒字化を果たしている。

一方、Netflixの知名度は動画配信サービスの中でも群を抜いており、業界の先駆者として他社に一歩も二歩も先んじている印象がある。Netflixの日本のコンテンツ部門を統括する坂本和隆氏は、朝日新聞の取材に「Netflixが生活の一部になること」を目指すと答えている。

公共性が高いと考えられてきた日本のスポーツコンテンツの将来的な有料化を示唆するかのような言葉だ。

文/不破聡

 

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