2026年1月、香川・高松で行われたベンチプレスの挙上重量を競う大会「JAPAN CHAMPIONSHIPS BENCH PRESS 2026 Classic(2026全日本ベンチプレス選手権大会『第27回クラシック部門』)」で、女子57kg級マスターズ5クラス(80歳以上)に出場した飯田徳子さんは、89歳ながら驚異の50.5kgのバーベルを挙上し、日本記録を更新した。
本格的にベンチプレスを始めたのは82歳のことだという。
「運動は贅沢だった」
──まずは、今年1月の日本記録更新の瞬間から教えてください。
飯田徳子(以下同) 正直にいえば、記録を狙っていたわけじゃないんです。私は次の試技で52.5kgに挑戦し、つぶれてもいいと思っていたくらい。ところが、たまたま福田先生(練習拠点「B.T.S.L FITNESS」の代表)がいらっしゃって、「50.5kgで日本記録だよ」と言ってくれた。それで50.5kgにしたんです。この歳でまだやれるんだと、うれしかったですけど、記録が出てもそれほど興奮したわけではないんですよね。
──落ち着いた受け止め方ですね。そもそも、飯田さんにとって「体を動かすこと」は小さい頃から身近なものだったんですか?
それが、子どもの頃はまったく逆だったんです。小学校3年生ときが終戦でした。岩手の山村で、子どもも立派な労働力の中、燃料や食料を探しに山に行く毎日でした。8人兄妹の4番目でしたから、親に頼ってはいられないわけですよ。
そんな状況だったから、運動は贅沢だった。余計な体力を使うくらいなら労働をしなければならない。だから今こうしてスポーツができることが、本当に豊かだと感じます。これを当たり前だとは思っていないです。
──「運動は贅沢だった」という感覚が原点にあるんですね。そんな人生の中で、本格的に運動と出会ったのは50歳になってからだったという。
小学校の教員をしていまして、退職まであと10年だと気づいたときに、老後に病院の待合室でお茶を飲むような生活はしたくないと思ったんです。
ちょうどその頃、職場の若い女性教員にマラソンに誘われて、「やったことないけどやってみよう」と。最初は8kmのレースでした。ゴールしたら周りがみんな涼しい顔をしているのに、自分だけぐったりで。これは何かコツがあるはずだと本を読んだり雑誌で勉強したりして、だんだん距離を延ばしていくことになりました。
──そこから20年近くもマラソンを続けられたとか。
大変だと思ったことがないんですよ。走ること自体が楽しいんだから。ゴールしたときの爽快感、達成感。あの気持ちがいいっていう感覚がまた欲しくて走っていたんだと思います。
大会に出るのも、誰かに勝ちたいとか、記録を出したいとかじゃない。大会は続けるための起爆剤なんです。力試しというか。でもそれより大きいのはね、「こんな楽しいことができる自分は幸せだな」っていう気持ち。私いつもそう思うんです。今思えば、それはやっぱり、子どもの頃にスポーツが贅沢だった時代を知っているからかもしれないですね。
78歳のときに敗血症で歩けなくなる
──やがてウルトラマラソン(100kmなど42.195kmを超えるマラソン)にも挑戦されましたね。
100kmを約50回走って、74歳で1週間かけて250 kmを走る「サハラ砂漠マラソン」にも4回挑戦し、3回完走しました。
──一方で、大きな病気やケガとは無縁ですか?
走り続けた影響か、両股関節に金属が入っています。右の股関節がまず壊れて、79歳で人工関節を入れました。左はその後、85歳ごろに手術。さらに78歳のときには、背骨にウイルスがついて敗血症になりました。
医者には「歩けなくなって車椅子の生活になる」と言われ、それでは何もできないと思い、「自分の責任で歩く練習をしたい」と交渉しました。それからは朝も昼も、時間さえあれば歩行器を使って病院の廊下を歩き回った。杖をつきながらなんとか自分の足で退院できる状態まで持っていきました。
──走れなくなり落ち込んだと思いますが、82歳でベンチプレスを始めたきっかけは?
走れないなら別のことをやろう、と切り替えました。どうしても体を動かすことをやめる気にはなれなかったんです。そうしてたどり着いたのが、上半身でできるベンチプレスでした。
──いまのトレーニングのスケジュールは?
様子を見ながら週5ぐらいでやっています。朝は6時25分にテレビ体操から始めます。それから競技用のベンチプレスをするために週3回はジムに行き、9時ごろから10時半ごろまで練習。その後、別のジムに行って、軽めにマシントレーニングを2時間半ほど。
帰宅後も寝る前にダンベルやゴムバンドで軽く体をほぐして、22時に就寝しています。1日に3回体を動かしている計算ですね。ただ、無理はしない。体を壊したら楽しめなくなりますから。故障しないで50kgだけは上げていきたい。
年を取ればそれなりに衰えてくる
──食事面はどうされているんですか?
人間の体は骨と筋肉だと思っているので、まずカルシウムとタンパク質です。
朝は必ず、煮干しをたっぷり入れたスープと、めざし、納豆、生卵3個。煮干しは粉にするより硬いまま噛んで食べるのがいい。顎も鍛えられるしね(笑)。昼夜は特に決めていないけれど、夕食に赤ワインを200cc。これが長年の習慣です。
──今年90歳になり、老いについて感じることはありますか?
3年前ごろから、自分が老化していると実感する場面が出てきました。荷物を置き忘れたり、新幹線の手配でミスをしたり。昔だったらすぐ気が回ったことが、回らなくなっている。それは認めざるを得ない。
でも悲観はしません。年を取ればそれなりに衰えてくる、それは抗わず受け入れて、その中でできることを楽しんでいく。あちこち痛くなって当たり前。
──その考え方は、すべての世代の人たちにも大きな励ましになりますね。
よく言うんですが、社会は年寄りを大事にしすぎてはダメだと思う(笑)。炊事洗濯をやってあげる、そういう優しさが人を弱くすることだってある。1人でやるしかない状況の方が、意外と元気だったりするでしょう。
自分でやるしかないから、頭も体も動かすんです。今の毎日は幸せだなって思いながら生きていれば、年齢なんて関係ないんです。
取材・文/全夏潤 写真/わけとく
<プロフィール>
飯田徳子(いいだ・のりこ)
1936年生まれ、埼玉県在住。元小学校教諭。89歳にして、女子57kg級マスターズ5クラスにて、ベンチプレスの日本記録保持者(50.5kg、日本パワーリフティング協会主催)。埼玉・東松山の「B.T.S.L FITNESS」(https://btsl-fitness.com/)をトレーニング拠点に活動を続けている。

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