〈体験ルポ〉座るだけで全身が洗える「ミライ人間洗濯機」に入ってみた…値段は6000万円、どんな人が買っているのか
〈体験ルポ〉座るだけで全身が洗える「ミライ人間洗濯機」に入ってみた…値段は6000万円、どんな人が買っているのか

機械の中に入り、座っているだけで全身を洗える――ズボラな人なら誰でも夢見たことがある「人間洗濯機」。風呂キャンセル界隈の人でもこのマシンに入りたいという人は多いだろう。

大阪・関西万博で初披露された際には国内外問わず大きな話題を呼んだ“未来のお風呂”とは、一体どんなものなのか。実際に体験してみた。

6000万円の超高級マシンを体験できる日がきた

お風呂に入るのが面倒くさい、そう思ったことがない人はいないだろう。車で言う洗車場のように、全自動でお風呂に入れたら、こんなに楽なことはない。

そんな人間洗濯機がついに完成、昨年の大阪・関西万博で展示され、大きな話題を呼んだ。そしてそれがなんと一般販売されることになった。その価格は驚きの本体・工事費・1年後のメンテナンス費を含めて税込6000万円。

いったい、どんな機械なのか気になる人も多いだろう。そんな人のために、ヤマダデンキの店頭で体験会が開かれることになった。

このニュース自体もXで大きな反響を呼んだが、そもそもなぜヤマダデンキで体験イベントが行われることになったのか。体験する前に、企画した株式会社ヤマダホールディングスの広報担当者に話を聞いてみた。

「今回のイベントは、すでに大阪・関西万博のときから製品そのものが話題になっていたこともあり、3月中の募集枠の10名に対して、応募総数は数十倍に上りました。話題の製品を体験したいというお客様のニーズと、良い製品を体験していただいたうえで納得いただけるものを購入していただきたいという我々の理念が上手く合致した結果だと思っております」

会場にはこのイベントのために特設ブースも設置された。

「このたび、店舗フロアの中に更衣室とタンクや操作PCなどがある機械室を併設した特設ブースを設置しました。更衣室を抜けて扉を開けたら目の前にミライ人間洗濯機が設置されているため、お着替えをされてからの移動や冷えの心配も少なく体験していただけるかと思います」

では一体どんなマシンなのだろうか。集英社オンラインは実際に試してみるべく、3月16日より体験イベントが開かれるヤマダデンキ LABI池袋本店に向かった。

テーマパークのアトラクションのような見た目

体験ブースに設置されたミライ人間洗濯機は、“ミライ“とついているだけあって、さながらテーマパークのアトラクションのような見た目をしていた。

全長は約2m45㎝で幅が1m15cm。幅だけなら平均の浴槽よりも短めではあるものの、長さはセンサーやプロジェクターがついている都合上長めだった。本体重量は約450kgでそこに、350Lの水が加わるため、およそ800㎏に及ぶ。

今回の体験に必要な条件としては、

・身長120cm以上200cm未満の方
・体重90㎏未満の方
・閉所恐怖症でない方

であること等が求められる。装置内部の座席に着座できなくてはならず、ハッチを閉めると上部の通気口以外は閉じ切った空間になる(何かあった場合は内部の緊急停止スイッチを押せば脱出可能)という都合からこのようなルールを設けているのだという。

いざ案内に従って骨伝導イヤホンを装着して椅子に座る。ハッチが閉まり映像と音声が流れ始めた。緊張の一瞬である。

イヤホンを通じて、プログラムの案内が聞こえ、画面には後述の心電図の測定を行なっている画面が映る。

まずは下半身のところまでお湯が張られた。温かい。洗剤は使っていないが、開発元のサイエンス社が誇る技術が生み出したという「泡」の作用で、お湯は白濁していた。

車の洗車のように水が噴き出すのかと思いきや、下半身はただお湯に浸かってるだけという印象だ。意外にも、特に洗われているような感覚はない。くすぐったくもない、妙な感覚だ。

しかし炭酸水のような、泡が弾ける音がずっとしていたのが印象的だった。

注水が完了すると上半身の番になった。一気に8か所のノズルからシャワーが飛び出し、ハッチの中が完全に個室のシャワー空間となる。これはイメージ通りだ。息が吸えるのか心配だったが、上に通気口があるため息苦しさはない。通気口から水が漏れているような様子もなく、その技術力に驚かされる。

勢いはあったが、くすぐったさや刺激はなく、非常に気持ちが良い。

しかし、これで本当に汚れは落ちているのか。あまりに洗練された優しい洗い心地であるため、不安になる。

実は今回、体験をするにあたり、効果を調べるためにヘアスプレーをしていった。通常ならシャンプーで丁寧に洗わないと落ちないものだったが、約3分間のシャワーに当たっている間にすっかりサラサラになった。驚きだ。

排水が終わり、身体を乾燥させる風が吹いた後、ハッチが開いた。

ここまで洗剤は全く使っていなかったのに、体験後は肌質が全体的に滑らかになった感覚があった。

すごい。しかしメンテナンスがかなり面倒くさいのでは? そう思ったが、基本的には布で乾拭きをする程度で構わないのだという。

約15分で身体の芯まで温まりながら、洗浄まで済ませられる技術にただただ驚くばかりだった。

シャンプーやボディソープも必要がない?

では、なぜ洗浄剤を使わなくても全身が“洗濯”できるのか。

開発元である株式会社サイエンスの担当者はこう説明する。

「ミライ人間洗濯機は“カラダもココロも自動で洗われる”というコンセプトの製品です。まず、カラダの洗浄には、弊社が開発した『ミラバス』『ミラブル』という泡による2種類の洗浄技術を使用しています」

ミラバスは、湯船に3/1000mmのマイクロバブルを発生させる技術である。担当者によればマイナスの電荷を帯びた泡が、プラスの電荷を持つ皮脂や汚れを吸着する仕組みになっているという。ミライ人間洗濯機では湯船に浸かっている下半身がこの作用によって洗浄される。

一方、上半身部分の洗浄に使われていたのは「ミラブル」と呼ばれるシャワーの技術である。

こちらは1/10000mmのウルトラファインバブルを1秒間に2000回転させながら噴射することで、汚れを弾き飛ばすという仕組みだ。シャワーヘッドがヒットしたので、知っている人も多いだろう。

そして「ミライ」の技術はこれだけではない。背中にはセンサーがあり、心電図の機能が搭載されている。入浴するだけで疲労度や身体状態を測ることができる仕組みである。

骨伝導イヤホンからは浴槽内部の映像と連動した音声や音楽が流れる。センサーで測定された精神状態に合わせて、3種類の映像と音楽が自動的に選ばれる。

いったい誰が買っているのか

改めて株式会社サイエンスの担当者に話を聞くと、ミライ人間洗濯機の誕生秘話について教えてくれた。

「ミライ人間洗濯機は、元々は1970年の大阪万博で実現できなかったと言われてきた“人間洗濯機”を、弊社のミラバスやミラブルといった技術と、センシングというミライ技術によって実現したものです。“ミライ”の展示装置として作ったものであり、販売の予定はありませんでした。

しかし、昨年の大阪・関西万博で来場者に体験イベントを行なったところ、ものすごく好意的な反応が多かったんです。『これはいつ売るのか』『どこに設置する予定があるのか』といったご質問をいただいたり、アメリカの企業から導入の逆プレゼンをされたりすることもありました」

現在は15台ほどが成約済みだという。

「現在はすでに導入済みも含め、先ほどお話したアメリカの企業や大阪府内のホテルなどに合計15台ほど、設置・運用が開始または決定しています。最初の1台は構想から完成まで大体6年、費用としては1億円ほどかかりましたが、現在はご注文いただいたら1~2か月で納品が可能な受注生産体制が整っています」

しかし、今後無制限に受注を受け付けるつもりはないと担当者は続ける。

「費用的にも設備的にも導入のハードルは高いですから、永久に受注を受け付けるということは考えていません。導入いただいた施設が『これがあるから行ってみたい』と思ってもらえることが理想ですので、各都道府県に1台のイメージで、約50台を販売台数の目安としています」

最後に担当者は改めて“ミライ人間洗濯機”の役割を語った。

「ミライ人間洗濯機は、ミラバスやミラブル、心電図のセンシングといった技術のほかにも使用した水を浄化して循環させるウォーターセキュリティというシステムを取り付けることができます。このミライ人間洗濯機で一度に使う水の量は350L。こちらを何度か循環させてきれいな水として再利用することができるのです。

一般の浴槽でもお湯は約300L入るとされていますが、そこにご家族でシャワーで泡を流したり、掃除したりなどを考慮したら、実は水道代だけならミライ人間洗濯機の方が安くなることも想定されます。

新しい技術という意味で“ミライ”という名前ですが、水を無駄遣いしないことや、洗剤を流さないという、地球環境に配慮するという点も“ミライ”を見据えているのです」

ミライ人間洗濯機には間違いなく日本のお風呂文化の未来があった。湯船につかりながら、シャンプーやボディソープを使わずに身体を洗えるという点はもちろんだが、音楽や映像によるリラクゼーション、心電図による身体状態の可視化など、「入浴」という行為にさらに健康的な要素を加えることができる。

ヤマダホールディングスでの販売価格は、本体・工事・メンテナンスを含めて税込6000万円と高額だが、体験イベントは4月も実施予定。その後はお客様の反応をみて実施を検討する。ミライの選択肢として、最新のテクノロジーを体験してみるのはいかがだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部

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