トランプが高市首相に突きつける「5つの要求」…軍事費GDP3%、憲法改正、対中同調まで 日米首脳会談の核心
トランプが高市首相に突きつける「5つの要求」…軍事費GDP3%、憲法改正、対中同調まで 日米首脳会談の核心

3月19日にアメリカで行われる予定の日米首脳会談は、日本の安全保障と経済戦略の方向性を左右する重要な局面となる。トランプ大統領は同盟国にも強い要求を突きつける「取引型外交」で知られるが、今回の会談でも日本に対して厳しい条件を提示する可能性が指摘されている。

軍事費のさらなる拡大や対中戦略での同調、さらには憲法改正まで──。日本が直面しうる「5つの困難」を国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏が解説する。

高市首相に突きつけられる「5つの困難」

3月19日に予定される日米首脳会談は、日米同盟の構造そのものを再定義する分岐点となるだろう。世界秩序が急速に流動化し、米国が「取引型外交」へと回帰する中で、日本はこれまで以上に重い決断を迫られる。

トランプ大統領は、同盟国に対しても遠慮なく要求を突きつけ、譲歩を引き出すことで成果を可視化する交渉スタイルを持つ。

一方、高市首相は安全保障と経済安全保障を最重要課題に掲げ、日米同盟の強化を政権の柱に据えている。両者の会談は、今後10年の日本の戦略を左右する重大な局面となる。

今回の会談で米国側が提示しうる要求は多岐にわたる。もちろん日米同盟強化やレアアースに関するサプライチェーンの強化などの両国の利益となる内容は速やかに実行されていくことになるだろう。

しかし、その中でもトランプ大統領は高市首相に対して厳しい幾つかの要求を行う可能性が高い。今回は予想される5つの困難について整理した。

日本には財政負担と国内政治の調整が大きな課題に

まず第一に、「軍事費拡大と基地負担の一体的増強」である。日本はすでに防衛費を大幅に増額しているが、トランプ大統領はくわえてGDP比3%への引き上げや、極超音速兵器・無人戦力・ミサイル防衛など特定分野への重点投資を求める可能性が高い。

さらに、在日米軍の駐留経費負担の増額や基地インフラ整備の追加負担を求めることも想定される。

軍事費と基地負担を「同盟の対価」として一体で扱うのがトランプ流であり、日本にとっては財政負担と国内政治の調整が大きな課題となる。

第二に、「国際安全保障での負担拡大」である。これは在日米軍の負担とは別に、より広範な地域での役割拡大を含む。イラン攻撃の見通しは依然不透明であり、仮に長期化した場合はインド太平洋地域の安全保障体制に大きな穴が空くことになる。

日本に求める要求はその分大きなものとなるはずだ。特にホルムズ海峡での機雷除去は、日本の掃海能力が世界的に高く評価されていることから、米国が強く求める可能性がある。

中東情勢が不安定化する中、高市首相は現在の国際情勢を存立危機事態とは認めていない。仮に存立危機事態と認めた場合、日本国内にどのように説明するかはもちろん、日本にとって大きな外交判断となる。

トランプが求めてくる「同調」とは

第三に、「対中戦略でのより明確な同調」である。半導体・レアアース・AIなど戦略分野での対中依存削減を数値目標として求め、輸出規制の共同強化を迫ることが考えられる。

特に対中国の観点から、レアアースを一定価格で買い取ることを決める貿易圏構想に対する同調が求められるはずだ。その場合、欧州諸国が同構想に同調する前に、日本が一歩前に踏み出す形となるだろう。

さらにカナダ主導の、米中双方から距離を取る新たな国際枠組みへの不参加を求めるなど、米国の影響力が及ばない多国間枠組みを警戒する姿勢も懸念される。

日本にとっては外交の選択肢を狭めるリスクがある一方、米国との関係を優先することで得られる安全保障上の利益も無視できない。

「憲法改正」を求めてくる可能性

第四に、「憲法改正」を求められる可能性がある。台湾有事における日本の役割について、従来の“曖昧さ”を排し、後方支援や基地使用の明確化を求めることが狙いだ。

高市首相が自民党単独で衆議院3分の2を得たことで、「憲法9条改正」はより現実的な課題となった。トランプ政権は、台湾有事における日本の行動制約が米軍の作戦に影響することを懸念しており、法的制約の緩和、すなわち憲法改正を含む制度改革を求める可能性がある。

実際、2月頭に筆者が米国を訪れて共和党保守派の会合に出席した際も憲法改正に関する議論が活発に行われた。通常、憲法改正要求は内政干渉になる話だが、トランプ大統領は平然と求めてくるかもしれない。

これは日本の安全保障政策の根幹に関わる問題であり、国内政治の大きな争点となることは避けられない。

第五に、「通商・エネルギー分野での米国優先の徹底」である。トランプ大統領は貿易赤字の是正を重視し、日本の自動車産業を繰り返し問題視してきた。しかし、最高裁判所によって一部の関税権限を否定されたことから、トランプ大統領は自らのメンツを回復する必要に迫られている。

エネルギー分野での米国企業優先の姿勢が強まる

そのため、同状況下において、自らの通商手腕を改めて誇示することは急務だ。したがって、自動車関税の引き上げをちらつかせながら、農産品市場のさらなる開放や事実上の日米貿易の再交渉を求める可能性がある。

さらに、遅々として進まないアラスカパイプラインへの日本の投資参加や、LNGの長期購入契約など、エネルギー分野での米国企業優先の姿勢が強まることも予想される。これらは日本の産業構造やエネルギー戦略に長期的な影響を与えるだろう。

以上の5つの課題は、いずれも日本にとって政治的・財政的・戦略的に重いテーマである。しかし同時に、これらの要求は日米同盟を深化させ、日本の国際的地位を高める機会にもなり得る。高市首相がどこまで譲歩し、どこで一線を引くのか。3月19日の会談は、単なる外交イベントではなく、日本の安全保障と経済戦略の未来を決定づける重大な節目となる。

 文/渡瀬裕哉 写真/shutterstock

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