《わさビーフ生産ストップ〉「重油が来なくて工場が動かせません」ホルムズ海峡封鎖で早くもスーパー棚に異変…他メーカーのポテチは大丈夫?スナック協会を直撃
《わさビーフ生産ストップ〉「重油が来なくて工場が動かせません」ホルムズ海峡封鎖で早くもスーパー棚に異変…他メーカーのポテチは大丈夫?スナック協会を直撃

中東の戦争の影響がついに国内のスーパーの棚に表れ始めた。「ツーンとおいしい!」が売り文句のポテトチップス「わさビーフ」が、工場の燃料が調達されずに生産が止まったというのだ。

ガソリン価格の高騰の次には、食品や日用品の供給停止が起きるのか――。

重油はポテトチップスを揚げるための食用油を熱するボイラーの燃料

わさビーフは埼玉県川口市の山芳製菓が1987年に発売開始したヒット商品。袋の背面に書かれた「誕生秘話」には、

「当時の開発担当者は、アメリカで出会ったローストビーフに西洋わさび(ホースラディッシュ)を組み合わせた美味しさに感動しました」と書いてある(製品のわさびパウダーの原料には国産わさびを使用と同社は説明)。

発売から39年のロングセラー商品が生産中断に追い込まれた経緯を同社に尋ねると、生産が止まったのはわさビーフだけでなく、「しおビーフ」や「明太マヨビーフ」など、同社の製造するポテトチップス全9種すべてだという。営業担当のAさんが話す。

「うちは兵庫県朝来市に工場がひとつあるだけで、そこですべての自社製品と、取引相手のプライベートブランド(PB)商品を一部つくっています。工場の燃料は重油を使っていますが、先週供給元から『価格が上がる』という連絡が来て、さらに『供給が難しい』と言ってきました。

結局そのあと一度も供給はなく、以前から工場にストックしてあった重油で操業を続けましたが12日には自社製品の製造ラインを止め、その旨のお知らせをホームページで行ないました。

その時はほとんど知られていなかったのですが、16日にオンラインショップを休業するお知らせを出すとわさビーフの生産停止が広く知られたようです。現在、わずかに残った重油でPB商品だけをつくっている状態です」(Aさん)

重油はポテトチップスを揚げるための食用油を熱するボイラーの燃料で、1週間に約2万8000リットル必要だという。

他のメーカーの工場はガス火力が大半だが、また値上げが…

ホルムズ海峡の封鎖によるタンカー輸送の停止により木原稔官房長官は「3月下旬以降、日本への原油輸入は大幅に減少する見込みだ」と16日の会見で述べていたが、その時にはすでにわさビーフは作られなくなっていたことになる。

Aさんは「製造に関するリスクはいろいろな面で準備していますが、今回の燃料のように海外の情勢が絡んで急に起きるような要因に対しては自助にも限界があり、今回は対応ができなかったということです」と話す。

こうした状況は他の菓子でも起きるのか。

スナック菓子メーカーでつくる日本スナック・シリアルフーズ協会の関係者が現況を説明する。

「スナック菓子の大手メーカーで工場の燃料に重油を使っているのはおそらく山芳の朝来工場だけで、ほかに灯油を使っているところもありますが大半は天然ガスを使っています。重油は火力のコントロールが難しく、新しい工場はガス火力が大半なんです。

今のところ天然ガスの供給は重油ほど切迫していないので、工場燃料の調達困難が原因で製造に支障が出そうだというメーカーは今のところほかには聞いていません」

今すぐ他のスナック菓子も商品棚から次々姿を消す状況ではないようだが、原油の供給減は当然菓子業界にも重くのしかかる。

「トラック燃料などの物流経費も包装紙も高くなると見込まれます。この先物価上昇が続けば、実質賃金が上がらない消費者がお菓子の値上げについてこれず、買ってもらえなくなるのではという不安はあります」と協会関係者は気をもむ。

わさビーフの生産ストップが報じられた17日、都内スーパーのスナック菓子コーナーでは、わさビーフの在庫だけが明らかに少なくなっていた。

山芳製菓のAさんによれば、次に重油がいつ工場に届くかはわからない。Aさんは「再開のめどはまだ立ちませんが、そうなればまたぜひ、わさビーフをご愛顧いただきたいです」と話している。

いつでもスーパーで買えた身近なものが姿を消したり手が届かない値段になったりする。戦争の陰がついに生活に差してきた。

※「集英社オンライン」では、今回の記事についてのご意見、情報を募集しています。

下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ