「野菜不足だから野菜ジュース」は単純すぎ? 「飲めばOK」の思い込みが危うい理由と見落とされがちなある条件
「野菜不足だから野菜ジュース」は単純すぎ? 「飲めばOK」の思い込みが危うい理由と見落とされがちなある条件

「野菜不足だから野菜ジュースで補う」はよくある発想だが、ここで注意が必要だ。野菜ジュースはあくまで飲み物であり、食べ物としての野菜の代わりにはならないと予防医療を専門とする濱谷陸太は指摘する。

野菜ジュースを飲むメリットとデメリットを解説する。

あらゆる食べ方を科学した『予防医療の医師が教える 最小の努力で最大の効果を得る食事学』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち2回目〉

野菜ジュースは野菜の代わりにならない

野菜ジュースや青汁(以下、まとめて「野菜ジュース」)についても、100%ジュースと同様、そこまで研究されているわけではないです。しかし、「野菜の代わりに(野菜が足りていないから)野菜ジュースを飲む」ということの妥当性については注意が必要です。

そもそも野菜ジュースは飲み物で、食べ物である野菜の代わりにはなりません。これは非常に大事なことなので、ここで少し掘り下げて解説します。

「食事を変えると健康に影響する」という科学的事実がありますが、その意味とは「食べる内容の構成を変えると」色んな疾患発症リスクが変わる、ということです。

すごく単純化して例を出します。食事の構成が「肉50%、米40%、野菜10%」という人がいるとします。この方は、明らかに肉の割合が多く、野菜の摂取量が足りていません。この方の食事構成から、肉を20%減らし、代わりに野菜摂取量を20%増やすとします。「肉30%、米40%、野菜30%」ということです。

すると、食習慣変更前と比較して食事の健康効果は高まったと推察されます。

これが食習慣改善の基本的な考え方です。この「それぞれの食材の割合をどう変えていくか」というのが本質なのです。だからこそ、単一の食材だけに注目しても、良い示唆が得られないのです。

さて、野菜ジュースは飲み物です。野菜ジュースを飲んだことで食事の割合はどう変わるでしょうか。たぶん、そのおかげで(食事としての)野菜の摂取量が増えるということは、普通ないのではないでしょうか。逆に野菜の摂取量が減ったとしても、それほどおかしくはありません。

しかし後者だとしたら本末転倒です。なぜなら、今までの研究が示してきたことは「食事として野菜を食べる量が多いほど健康に良い」ということだからです。食事としての野菜を多く摂取するとは、「野菜の摂取量を増やし、それ以外の(おそらく健康に悪い)食材の摂取量を減らす」という食行動を指します。「飲料」である野菜ジュースは、実際の野菜とは健康への影響が異なるのです。

なお、野菜ジュースの健康効果自体を否定しているわけではありません。

野菜ジュースの成分や作り方にもよります。本当にそれが野菜の成分に近ければ、健康に良い影響がある可能性はあります。野菜自体健康に良いわけなので、その抽出物が健康に良いというのは、栄養素の観点からも理屈は成り立ちます。「可能性」といったのは、それは科学的にまだ立証されていないからです。

例えば野菜ジュースでは食物繊維は野菜ほどは摂れないはずですし、多くの野菜ジュースには添加物が入ります。これら全部を踏まえて、本当に人間の健康にどう影響するかは、まだ十分には調べられてはいないということです。

「何の代わりに飲むか」こそが重要

野菜ジュースは飲み物なので、たぶん多くの場合は「何かの代わりに飲むもの」という位置付けにあります。そう、「何の代わりに飲むか」こそが非常に重要なのです。野菜自体の成分に近い野菜ジュースを、砂糖たっぷりのジュースの代わりに飲むのであれば、それは健康に良い効果がありそうです。

一方、砂糖が添加された野菜ジュースを緑茶の代わりに飲むという話だと、緑茶自体が健康に良いことが示されてきている以上、健康に悪く働くこともあり得ます。

「野菜ジュースを飲んだ方が健康に良いのか」という質問も、(他の食事に関する質問と同様に)イエスやノーで答えられるような単純な話ではないのです。

このように考えると、野菜ジュースの立ち位置が少し明確になるかもしれません。例えば以下のようなことが考えられます。

そもそも野菜ジュースに関する研究がほとんどないので、参考程度です(仮説も含んでいます)。

・食習慣を改善することを目標とする場合、野菜ジュースの出番はあまりない(ジュースは食事でないため)

・すでに色んな種類の野菜をしっかり食べられている人が、野菜ジュースを追加することで得られる効果はあまり期待できない

・どうやっても野菜の摂取量が増やせない人の場合、野菜ジュースをサプリメントとして使う分にはそこまで悪いものではない

・野菜ジュースをサプリメントとして使う場合は、野菜ジュースを飲む代わりに「健康に悪い飲み物」の量を減らせていればなお良い

・野菜ジュースを選ぶなら、なるべく添加物の少ない、生の野菜に近いものにすべき

一方で、「350グラムの野菜の目標量に対して、今250グラム程度の摂取量の人が、それ以上野菜摂取量をどうしても増やせないから野菜ジュースを飲むべきなのだろうか?」という疑問については、科学的な解答は現時点ではありません。こういう問いにこそ新しい研究が必要です。

なお、そもそも画一的に「野菜350グラム」というのはわかりやすさを追求した結果です。本来であれば体格に応じて摂取量の目標は異なるべきですが、それを考えると複雑すぎるのでガイドラインでは示されないのです。

#3に続く

文/濱谷陸太 写真/Shutterstock

予防医療の医師が教える 最小の努力で最大の効果を得る食事学

濱谷陸太
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