「私もこれまでか…」美川憲一が初めて意識した死の恐怖と盟友・小林幸子が支えた復帰の舞台裏
「私もこれまでか…」美川憲一が初めて意識した死の恐怖と盟友・小林幸子が支えた復帰の舞台裏

昨年9月に心臓手術後の体調管理のため一時的に活動を休止、そして11月にはパーキンソン病であることを公表した美川憲一さん(79)。そんな美川さんが3月3日に生放送されたNHK『うたコン 春の拡大SP』に出演し、盟友の小林幸子さんと共に復帰後初めてテレビでの歌唱を披露。

美川さんは「ここ一発、気合い入れたわよ」と振り返る。活動休止前までは大きな病気をひとつとしてしなかったそうだが、初めて脳裏に死がよぎり震える日々を過ごしたという。どう乗り越えたのか。〈前後編の前編〉

「このまま死ぬのかも。私もこれまでか」とがっくりきたわ

去年9月に洞不全症候群で入院し、のちにパーキンソン病が判明。その後、療養から復帰を果たした美川さん。病気に気づいたきっかけはロサンゼルスの自宅にひとりでいる時だった。

「去年8月12日にロスのマンションに帰ってすぐ、台所で意識を失って倒れたの。倒れた瞬間は覚えてないんだけど、ものの1、2分して気がついたら膝をぶつけたらしく内出血で真っ黒になってて。

27日に帰国してすぐ、さっちゃん(小林幸子さん)に病院を紹介してもらったの。9月1日に診察してもらったら洞不全症候群(不整脈の一種)と診断され、急遽、心臓にペースメーカーを埋め込む手術をすることになりました」

小林さんに紹介してもらったクリニックから、さらに大学病院を紹介してもらって転院。9月11日にペースメーカーの埋め込み手術を行なった。

「手術自体は無事に終えてホッとはしたけど、この際だから徹底的に調べてもらったんです。私自身、数年前から足がもたつく自覚があったからそれも伝えたら、お医者様が『もしかしたらパーキンソンかも』ということで検査をしました。

そうしたらパーキンソン病が判明して。さすがの私も『このまま死ぬのかも。私もこれまでか』と、ガックリきたわ」

パーキンソン病は、厚生労働省により難病に指定されている病気のひとつで、脳からの運動の指令がスムーズに伝達されず、体の動きが少しずつ不自由になる病気だ。

これまで“しぶとく生きる”をモットーにしてきた美川さんもさすがにかなり落ち込んだという。

「これまで死を恐れたことなんてなかったのよ。でも初めて死を意識したの。そうなるともう『もう歌えないのね。舞台にも立てない』なんて弱気な言葉が次々と浮かぶのよ。

そのたびに声に出して『大丈夫、大丈夫、歌えるわよ、なんのこれしき』と自分を励ましたり、悪いイメージは次々と考えないように遮断したのよ」

今の私だからこその重みを歌えたと思うわ

今年79歳になる美川さんは、これまで大きな病気ひとつせずしぶとく元気に過ごしてきた。だからこそ病に倒れたときは気弱になってしまったのだろう。

マネージャー以外は面会謝絶で、1か月半の入院期間は孤独だった。

「もちろんお友だちから私を気遣ったLINEなんかはきてたわよ。でも一人にお返しすると皆さんにお返ししなければいけなくなってしまうから、そういった連絡も遮断して快復に専念したの。

どんな時も結局は自分で自分を奮起しなければ何も始まらないからよ。私は相撲が好きなので、入院中はテレビの時間が楽しみでした。大関・霧島も高安も好き。

彼らの投げや足技を見てると、私の病気も投げてくれるような感じがして勇気づけられたし元気が出たわ」

退院後はパーキンソン病に有効だとされる運動療法を開始。これまでしたことのなかった、リハビリも兼ねたパーソナルジム通いを習慣づけた。

「今は1時間のトレーニングを週に2日続けています。足首に5kgのダンベルを吊るして後ろに引き上げたり、両膝にゴムチューブを引っ掛けて脚を外側に開いたりして筋力アップしてるのよ。

運動なんて大嫌いだったからキツいのよ。でもやるとスッキリするの。

だからなんとか頑張っているわ」

そんな初めて“死”を現実のものと感じて復帰した後、NHK『うたコン 春の拡大SP』に出演した時に美川さんが歌ったシャンソン『生きる』はSNSでも「シビれた」「感動した」などと大反響。

「サビの『生きる 生きる 今になって私は 生きることの 貴さを知った』という歌詞は苦難を乗り越えた今の私だからこその重みを歌えたと思うわ。

私、舞台で涙を流したことなんてなかったけど、あの時はポロッときたわよ。さっちゃん(小林幸子さん)と舞台からはける時に一瞬ヨロっとしちゃったのよ。

そしたら、さっちゃんが私の腕をグッとつかんでそのまま袖まで支えてくれて…生きててよかった、皆さまがいてくださってよかった、すべてに感謝よ」

1990年代の『紅白歌合戦』での“豪華衣装対決”が有名な、二人の盟友の支え合う姿に視聴者も感動に包まれたことだろう。

後編では美川さんの「終活」を聞いた。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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