「いつ加害者になるか怖いです」自転車青切符導入で…大型トラックドライバーが最も恐れる“死角事故”の実態
「いつ加害者になるか怖いです」自転車青切符導入で…大型トラックドライバーが最も恐れる“死角事故”の実態

4月1日から道路交通法の改正により、自転車の交通違反に「青切符」が導入される。自転車はこれまで以上に車道走行が徹底され、歩行者の安全性向上が期待される。

だがいっぽう、大型トラックを運転するドライバーたちは、「事故が増えるのではないか」「加害者になってしまうのでは」という不安を抱えているという。

現役のトラックドライバーと、自動車の警報カメラを提供する会社の担当者に話を聞いた。トラックドライバーの立場に立つことで、自転車に乗車する側も気をつけるべき点を知ってほしい。

約113の違反が対象…自転車は「原則車道」の時代へ

今回の青切符導入は、自転車関連の事故増加を受けて導入される制度だ。法改正により自転車の車道の原則左側通行をはじめ、信号無視や一時停止無視、スマホを見ながらの運転など、約113種類の反則行為が新たに青切符の対象となる。

これまでは刑事手続きを必要とする赤切符しかなく、手続きの負担が大きく不起訴も多かったため、十分に取り締まれていない側面があったが、今後は違反があった場合にその場で警察官から青切符と納付書が交付され、反則金を納める必要がある。

いっぽうで課題もある。

自転車専用レーンが十分に整備されていない道路が多く、このまま自転車の車道走行が増えれば、危険な状況も増えると予想されている。

特に大型のトラックを運転するドライバーは、車道を走る自転車にヒヤっとする場面に遭遇することが多いという。(※取材は3月中旬に実施)

20トンの大型トラックを運転する

樋山祥さん(33)。

「都内は路上駐車が多く自転車が車道を走っていると、路駐を避けるために車線の中央側へ膨らんで急に目の前に飛び出てくることがあります。後方確認をせずに車線変更をおこなう方もいるので怖いですね」(樋山さん)

そもそも大型トラックは貨物を運ぶための車両であり、貨物を破損させた場合は運送会社やドライバー個人がその補償を負うことになる。

さらに大型トラックは通常の自家用車とは異なり、急ブレーキを踏むとタイヤがロックされ、車両の姿勢が崩れやすいという特性もある。

人命に代えられないのはもちろんだが、大型トラックが急に止まることは難しいのだ。

また、自家用車との大きな違いが死角の大きさである。

青切符導入後に強まる「死角」のリスク

実は運転席の真隣はドライバーの視界には入っていない。また、トラックの助手席側後方は自転車から「見えているはず」と勘違いされやすいポイントだという。

死角にいる人や自転車を検知し、ドライバーに知らせるカメラを開発している東海クラリオンの担当者がその危険性について指摘する。

「ドライバーが事前に安全確認をしていても、猛スピードで死角から進入してきた自転車が左折時のトラックの進路に入り込めば事故に繋がってしまいます。そして大型トラックと自転車の巻き込み事故は重症化しやすく、死亡事故となる割合が高いのです」(東海クラリオン担当者)

実際に事業用貨物自動車の対自転車事故の統計を見ると、令和2年以降交通事故全体は減少傾向にあるものの、左折時の事故はあまり減少していない状況が続いている。

「新車に関しては死角に人や車両がいることを検知する安全機器が搭載され始めているのですが、いま現場を走っているトラックの多くは、左側方に対する安全装置がついておらず、ミラーで目視をおこなっています。

また、大型トラックは荷台とドライバーの座席が分かれているため、人や自転車と衝突した程度の衝撃には気づけません。大型トラックが人や自転車を事故後に引き摺ってしまうのはこのためです」(前同)

不幸な事故は巻き込み事故だけではない。近年、利用者が増加しているスポーツタイプの電動アシスト自転車(いわゆるe-bike)のスピードにも困っているという。

「トラックは初速が遅いので、よく自転車に右から追い抜かれるんですけど、右後方も死角になってしまうため、やめてほしいです。最近はフードデリバリーが普及して、ロードバイクのように速度の出る自転車も多くなりました。

そうした自転車が死角から飛び込んでくるケースは、ここ数年で増えたと感じています」(樋山祥さん)

交差点で左折しようとしている車を右から追い抜くことは、当然対向車が見えにくい自転車にとっても大きなリスクだ。

いつか自分が加害者になってしまうのでは…

青切符導入は自転車側の危険や、歩行者の視点で語られることが多いが、トラックドライバーも加害者になってしまうのでは、と不安を抱えている。ドライバー歴2年の土屋希美さん(26)もその一人だ。

「ライブイベントで都内の繁華街のスタジオなどに機器を搬入することがありますが、道幅の狭い道路では歩行者や自転車が、トラックの真横スレスレを通り過ぎます。

悪気がないことは理解していますが、狭い道で死角から次から次に人が出てくるので、その場から動かせなくなってしまいます…。それでも納品の時間には間に合わせる必要があるので、交通整理がいない状況での搬入出はとても大変なんです」(土屋さん)

「また、うちの会社は鹿児島から青森まで走っていますが、田舎では自転車と歩行者が悠々通行できる大きな歩道のほうが多いです。そのような道でわざわざ自転車が車道を走るのは、車両との接触事故を増やすだけになってしまうんじゃないでしょうか? 

車を避けるために歩道に入って、その後、歩行者を避けるために車道に出てきて…という運転をされると、いつか自分が加害者になってしまうのではないか、とても恐怖を感じます」(前同)

歩行者の安全を守るという意味では、自転車の車道走行は大きな一歩だ。しかしそのかげで、大型トラックと自転車の関係には新たな緊張が生まれつつある。

自転車側は「被害者にならない」「加害者を生まない」ためにも、大型トラックの死角を理解しておくことが欠かせないだろう。

カメラなど最新機器の導入など、トラックドライバー側も今より更に安全意識を向上させる必要がある。

そして法律を施行する行政側は路上駐車の取り締まりを厳しくしたり、自転車の走行レーンの拡充など整備を進めるべきではないか。

インフラ整備と安全機器の普及を含めた対策も進んでこそ、青切符導入の狙いが本当の意味で生きてくる。

不幸な加害者と被害者がいま以上に増えないことを切に願いたい。

取材・文/福永太郎

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