原油不足の影響で青森の老舗銭湯が「閉湯」宣言…「イランの戦争が決定打です」店主が告白した厳しすぎる値上げ
原油不足の影響で青森の老舗銭湯が「閉湯」宣言…「イランの戦争が決定打です」店主が告白した厳しすぎる値上げ

ホルムズ海峡封鎖による国内の原油供給不足が懸念される中、青森市にある銭湯が営業の継続をあきらめ、5月31日に「閉湯」するとのお知らせを貼り出した。店主の男性は、湯船の湯を温めるボイラーの燃料である重油の値上がりが続いてきた中、2月28日に始まった中東での戦争が決定的だったと振り返る。

「この1年で2倍弱まで上がっていました」

「原油価格高騰に伴う燃料費の著しい上昇により、誠に残念ながら閉湯いたします」

3月17日、浴場前にこんな見出しの貼り紙をしたのは青森市にある「桂木温泉」だ。近年続く原油価格の高騰により、燃料費負担で経営を維持できなくなったとし、5月31日をもって「閉湯させていただきます」と書かれている。

18日も通常営業していた桂木温泉の店主、山口昌良さん(57)が事情を話す。

「本当は閉めることは1か月ほど前から考えていました。トランプさん(米大統領)がイランを攻撃したと発表した2月28日より前です。その理由は燃料の重油の値段が上がり続け、ずっと赤字が続いていたからです。

お湯を沸かすのに必要な燃料は夏場と冬場で量が変わるので一概には言えないですが、値段は大体、この1年で2倍弱まで上がっていました。ただ、イランの問題が起きてからは一気に上がりました。この問題は(閉湯に踏み切る決断の中では)大きいですね」(山口さん)

銭湯の湯を沸かすボイラーはかつては古タイヤや古い枕木などの廃材も燃料に使っていたが、粉塵や悪臭が出るため特に繁華街内にある銭湯ではほとんど使えないという。

「お風呂屋さんは他もほとんどが重油を燃料にしているはずで、この値上がりではどこも厳しいでしょう」と山口さんは話す。

3月下旬から原油の輸入不足の影響が深刻化するとみられ、石油製品は軒並み値上がりし、品不足も懸念されている。

常連客らは「これから行くとこがない」

資源エネルギー庁が18日に発表した石油製品の小売市況調査では、16日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットルあたり190.8円となり、9日の前回調査から1週間で29.0円上昇。200円を超えるスタンドも珍しくない。

さらに重油は、供給が止まるケースもすでに起きている。「わさビーフ」などを製造する山芳製菓は12日、重油調達難により工場操業の一時停止を公表した。ポテトを揚げる燃料である重油は先週から入ってこなくなったという。

東海地方にある銭湯でも、重油不足のため時短営業をするなかで臨時休業を計画したが、重油調達の見通しが立ったので臨時休業を撤回すると告知するなど、銭湯経営の苦しい状況がネット上でも報告されている。

近年、全国的に公衆浴場の数は年々減少してきている。今年2月の産経新聞の報道によれば、各都道府県の浴場組合でつくる「全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会」の集計で、組合に加入する銭湯数は戦後最も多かった1968年の1万7999軒から昨年は10分の1以下となる1562軒にまで減っている(スーパー銭湯やサウナ施設は除く)。

特に、重油ボイラーを使う銭湯の経営には、今回の“令和の石油ショック”が大きく響いてくる恐れがある。

桂木温泉は、銭湯最盛期であり山口さんが生まれた1968年に創業。祖母が番台に座る姿を見て育ってきたという山口さんによると、閉湯のお知らせを見た常連客らは「これから行くとこがない」と嘆いているという。

厳しい経営状況の中で、地域のために耐えてきた老舗の公衆浴場が消えるきっかけとなった今回の石油危機。基幹産業の維持も重要だが、石油製品を必要とする零細業者を救う対策も政府には求められている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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