ガソリン300円の可能性も…価格高騰はどこまで続くのか? 原油だけじゃない日本の家計を直撃するエネルギー危機の深刻度
ガソリン300円の可能性も…価格高騰はどこまで続くのか? 原油だけじゃない日本の家計を直撃するエネルギー危機の深刻度

2026年3月現在、イラン情勢の緊迫化に伴い、世界のエネルギー市場が大きく揺れている。とりわけペルシャ湾の出口に位置するホルムズ海峡で西側向けを中心に通航制限が強まり、事実上の封鎖に近い状態となっていることが、ガソリン価格急騰の大きな要因となっている。

ガソリン価格高騰の行方

ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝であり、通過量は世界全体の約2割にも達する。日本は原油輸入の大半を中東に依存しているため、その影響を直接的に受けやすい構造にある。

実際、今回の危機では原油価格が急騰し、国内外でガソリン価格が短期間に大きく上昇した。3月中旬に前週比29円/Lの上昇が報じられるなど、短期間で急騰しており、生活コストの上昇が現実のものとなっている。 また、欧州でも国際エネルギー市況の上昇を受けて燃料価格が急騰しており、これは地域を問わず同様の構造的影響が及んでいることを示している。

では、この価格高騰は今後も続くのだろうか。エネルギー問題に詳しい専門家の江田健二氏に聞いた。

「短期的には、やはり高止まりしやすいと見ています。今回の値上がりは、需給そのものというより、中東情勢の緊張を受けた供給不安が一気に価格に織り込まれている面が大きいからです。日本のガソリン価格もすでにかなり高い水準にあり、すぐに大きく下がる局面ではないと思います。

一方で、中長期については先行きがかなり不確実です。情勢が落ち着けば原油価格は下がる可能性がありますが、今回は原油だけでなくLNGや物流にも不安が広がっており、影響が長引く可能性もあります。ですから、短期は高止まり、中長期は情勢次第で上下に振れやすいと見ています」

まず短期的には、供給制約が続く限り価格は上昇圧力を受け続ける。

現在、ホルムズ海峡ではタンカーの航行が大幅に制限され、原油輸送量が急減している。このまま供給不足が続けば市場は敏感に反応し、価格はさらに押し上げられる。

また、紛争が長期化すれば、日本国内でもガソリン価格が200円台を超え、最悪の場合300円近くに達するとの見方もある。

ただし、価格上昇が無限に続くわけではない。政府や国際機関はすでに対策に動いている。日本では3月16日に民間備蓄義務量の引き下げと国家備蓄石油の放出が決定され、需給の緩和を図っている。同様に、各国も戦略備蓄の放出や増産要請を進めており、これらは価格上昇を一定程度抑制する効果を持つ。

また、価格が高騰すれば需要が減少し、結果として市場全体のバランスが調整されるという側面もある。

これまでの歴史を振り返ると、地政学リスクによる原油高騰は一時的に収束した例も多いが、持続期間や影響の大きさは事案ごとの差が大きい。需給の調整や外交的解決が進めば、価格は徐々に落ち着く可能性もある。

原油高騰で電気・ガス・物流・企業コストまで上がる構造の問題

しかし、今回の中東情勢の悪化を受けた市場の価格高騰については一筋縄では収まらないとの見方もある。前出の江田氏がその懸念を指摘する。

「これまでも地政学リスクで原油価格が急騰することはありましたが、今回は原油だけの問題ではないところが大きいと思います。ホルムズ海峡への懸念に加えて、カタールのLNG拠点にも影響が及んでおり、エネルギー供給網全体への不安として見られています。

さらに今回は、見落とされがちですがヘリウムへの影響も重要です。ヘリウムは半導体やMRIなどに欠かせない資源で、カタールは世界供給の大きな一角を占めています。LNG設備の停止は、原油やガスだけでなく、こうした産業用ガスの供給にも波及します。

つまり今回は、単なる原油高ではなく、エネルギーと産業のサプライチェーン全体が揺れている局面だと感じています」

さらに、今回の状況で改めて浮き彫りになったのが、日本のエネルギー依存構造の脆弱さだ。依存先が偏っているため、同様の危機が起きるたびに価格が大きく変動し、その影響が幅広く波及しやすい。

「今回の問題で改めて感じるのは、日本の課題は資源がないこと以上に、依存先やエネルギー源の偏りが大きいという点です。中東依存が高いため、何か起きると価格上昇がガソリンだけでなく、電気・ガス・物流・企業コストまで一気に広がりやすい構造になっています。

今後のエネルギー政策を考えるうえで、「国産」と「デジタル化」がキーワードになると思います。国産というのは、再エネや原子力、省エネを含めて、海外資源に過度に依存しないエネルギーの比率を少しずつ高めていくことです。

デジタル化というのは、需要と供給をより細かく把握し、電力を無駄なく使い、系統や蓄電池も含めて全体を賢く動かしていくことです。

そのうえで、調達先の多角化、再エネと蓄電池の拡大、送配電網の強化、そして安定電源の確保を並行して進める必要があります」(前出・江田氏)

こうした状況を踏まえると、今後求められるのは、目先の価格高騰への対症療法にとどまらず、エネルギー供給の脆弱性そのものを見直していく視点だろう。

再生可能エネルギーの拡大や調達先の分散、送配電網や蓄電池の整備、さらには安定電源の確保を含めた中長期的な政策対応を着実に進めることが、日本経済と国民生活の影響を和らげるうえでますます重要になっている。

取材・文/集英社オンライン編集部

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