名護市辺野古の海上で船2隻が転覆し、研修旅行中だった女子高校生1人と男性船長(71)が亡くなった事故は20日、第11管区海上保安本部によって転覆した2隻を管理していた市民団体の事務所への家宅捜索が行われるという新たな局面を迎えた。
出航判断の基準の曖昧さ、海上運送法上の登録が確認されていないことなど、安全管理体制の不備が疑われており、「命どぅ宝(命こそ宝)」を掲げてきた基地反対運動の在り方も問われている。
「出航の判断は事故で亡くなった『不屈』の船長に一任されていた」
第11管区海上保安本部(海保)による家宅捜索は「春分の日」の3月20日朝から行われた。
辺野古沖で転覆した「平和丸」「不屈」の2隻を管理・運航していた「ヘリ基地反対協議会」と称する団体の名護市街の事務所、辺野古漁港近くにある団体の活動拠点の2カ所に海保の捜査員が入った。
捜査員は、事務所から押収品が入っているとみられる段ボールを運び出したほか、拠点内のプレハブ小屋やテント内の掲示物などを調べて2時間以上にわたって捜索した。
「海保は、業務上過失致死傷や過失往来危険の容疑での立件を視野に強制捜査に踏み切りました。今後、海上運送法で定められた『内航一般不定期航路事業』への登録の不備があった疑いも視野に調べを進めるとみられます」(地元メディア関係者)
ホームページなどによると、団体が発足したのは1997年。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)での日米合意により米軍普天間飛行場の移設先として名護市辺野古のキャンプ・シュワブが浮上。
現工事の前身計画となる、辺野古沖への「海上ヘリポート案」の受け入れを巡る住民投票に向けて「反対」の意思を示す市民や団体が集まって結成された「名護市民投票推進協議会」がその前身だ。
住民投票では「反対」が「賛成」を上回ったものの、当時の市長が受け入れを表明したため、「海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会(略称・ヘリ基地反対協議会)」と名称を変更し、「新基地建設反対」を掲げる抗議活動を続けてきたという。
22日には、転覆船の実況見分も行われ、海保は捜査を本格化させている。
「今後、捜査の焦点となりそうなのは、団体内での指揮系統の解明です。団体によると、当日の出航の判断は事故で亡くなった『不屈』の船長に一任されていたそうです。
事故当日の現場では波浪注意報が発令されており、生徒たちを乗せて船を出す判断を下した船長には業務上過失致死傷などの容疑がかかりますが、本人が亡くなっているために被疑者死亡で公訴棄却の判断が下される見込みです。
ただ、船の管理は団体側が行っていたわけで、団体メンバーの誰に責任を問うべきかの判断を慎重に見極めることになりそうです」(同)
「事故による一部世論の反発が最高裁判断に影響しないか…」
辺野古新基地建設工事を巡っては、2019年の県民投票(有権者に占める投票率52・48%)でも「反対」への投票が70%超を占めるなど、県民の間で賛否が分かれている現状がある。
高校生の未来を結果的に奪ってしまった事故の責任は厳しく問われるべきだが、今回の事故によりネット上では反対運動そのものを否定する声が高まりを見せており、反対運動に関わる人たちや基地建設に忌避感を抱く県民の間には「基地反対の声がかき消されてしまうのでは」との危機感も漂っている。
「辺野古の新基地建設工事については、埋立工事の承認を巡る県と国との裁判が2015年に当時、翁長雄志氏が知事を務めていた県に対して国が起こした訴訟を皮切りに計14件の裁判がありました。いずれも県の敗訴に終わりました。
一方で、県が起こしたものとは別に住民が国を相手に起こした抗告訴訟もあり、こちらは2024年5月に二審の福岡高裁那覇支部が『原告に法律上の利益がない』などとして原告側の訴えを退けた一審判決を破棄し、審理を一審に差し戻す判決を下して住民側の望みをつないでいるのです」(地元の法曹関係者)
訴訟は、住民側の「原告適格(原告となる資格)」を認めた高裁判断について、被告となっている国の上告を受理とするか不受理とするかの最高裁の判断待ちの状態にあり、今後の反対運動の帰趨を占う上でも注目されている。
ただ、今回の事故を受けて反対運動への逆風が強まるなか、「事故による一部世論の反発が最高裁判断に影響しないかという懸念が強まっている」(同)のだという。
「仮に最高裁が国の上告を受理すれば、高裁判断はひっくり返り、原告の訴えが一審判決に続いて退けられることになります。原告団の中には今回、事故を引き起こしたヘリ基地反対協議会のメンバーも加わっているため、その危惧はさらに強まっています。
最高裁の判断次第では、反対運動が文字通り、完全に行き詰まることになってしまう」(前出のメディア関係者)
長らく沖縄の政治課題となってきた「辺野古」が社会の後景に追いやられてしまうのか否か。重大事故の検証とともにその趨勢にも注目が集まっている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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