3月5日に発売したNintendo Switch2ソフト「ぽこ あ ポケモン」が異例のヒットを飛ばしている。発売から4日で国内100万本、世界累計で220万本を突破した。
上級者向けのサンドボックスゲームを誰でも楽しめるものに
「ぽこ あ ポケモン」が属するサンドボックスゲームは、プレイヤーが明確なストーリーや目標・目的を与えられずに、広大な世界の中に放り込まれるゲームジャンルだ。
サンドボックスゲームの代表的なソフトが2011年リリースの「マインクラフト」だ。同ゲームは2023年に累計販売本数3億本を突破したメガヒットタイトルだが、弱点も併せ持っている。明確な目的と分かりやすい目標をつくれないゲーム初心者には難易度が高すぎるのだ。
この弱点を克服したのが、2016年にスクウェア・エニックスが発売した「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」だった。プレイヤーが素材やアイテムを加工する自由度の高さは従来のサンドボックスゲームを踏襲していたが、そこにストーリーを盛り込んだのだ。荒廃した村を復興させるという明確な目的と目標を与えて、誰でも遊びやすくしたのである。
「ドラゴンクエストビルダーズ」の2作目が「ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島」だ。このタイトルは世界累計110万本突破のヒット作となった。このゲームの開発を担当したのがコーエーテクモのオメガフォースだ。
開発ディレクターを務めた人物が枝川拓人氏で、「ぽこ あ ポケモン」ではチーフディレクターを務めている。両作の主要なポジションを同一人物が務めているのだ。
「ぽこ あ ポケモン」は土地を開拓してポケモンの生息地をつくるゲームだ。ポケモンが住みやすい環境をつくり、ポケモンをコレクションすることに目的と目標が置かれている。ポケモンはもともと原作者が少年時代に熱中した昆虫採集が原点だ。
サンドボックスゲームに、ポケモンのコレクション性の高さが組み合わさったことで、新たなゲーム体験が生まれたわけだ。
昆虫採集から飼育へと変化させた異色作
さらにサンドボックス×コレクションのゲーム体験に、「ドラゴンクエストビルダーズ」の開拓という要素が加わった。これにより、「テラリウム」のような面白さが生まれることになったのだ。
テラリウムとは、昆虫や両生類、爬虫類などの小さな生き物の生息環境をガラスケースの中に再現し、飼育して楽しむものだ。昆虫採集から飼育へと昇華させたのが「ぽこ あ ポケモン」なのである。
ここで疑問に感じるのは、「三國無双」を手がけるオメガフォースがなぜサンドボックスゲームに強みを持つに至ったのかだ。
オメガフォースとスクウェア・エニックスが初めてタッグを組んだのは2015年のアクションRPG「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」だった。ドラゴンクエストシリーズ初のアクションゲームで、100万本を突破した大ヒット作だ。
このゲームは開発期間が1年半に満たないともいわれ、無謀とも言えるスケジュールで生み出されたものだ。そうした環境下で、高いパフォーマンスを発揮したオメガフォースの開発力が高く評価されるようになった。
「ドラゴンクエストビルダーズ2」は、ドラゴンクエストという人気シリーズをサンドボックスに落とし込んだゲームの続編だ。こうした作品は薄味にもなりかねない。しかし、ファンの期待を上回るものに仕上げることができた。
オメガフォースはアクションに強い開発チームと思われがちだが、ユーザー目線でゲームをつくる開発力の高さに優れているのだ。サンドボックスゲームに強みを持つというよりも、難易度の高いゲームの開発に長けていると言える。
コーエーは1割の増収を達成することができるか?
「ぽこ あ ポケモン」のヒットにより、コーエーテクモホールディングスの株価は3月11日に年初来高値を更新した。市場の注目度は高く、業績への影響も大きそうだ。
コーエーの2024年度の売上高は831億円で、2%程度減収だった。会社が計画していた900億円には届かずに着地している。
2025年度の売上高は前年度比で1割増の920億円を計画している。
コーエーは2025年10月に「NINJA GAIDEN 4」をリリースした。このゲームは1988年に「忍者龍剣伝」として発売されて以来、根強い人気に支えられてシリーズの累計出荷本数が750万を突破している。新作のリリースはファンが待ち望んでいた。
しかし、コーエーは2025年4月~12月が減収である。
そうした中で、「ぽこ あ ポケモン」の220万本突破という景気のいいニュースが入ってきたわけだ。
自社のオリジナルタイトルのゲーム開発は、巨額の予算が必要で、ヒットさせる難易度も劇的に上がっている。ポケモンのように強力なIPを持つ会社との協業タイトルの開発に力を入れる会社が多くなっているが、タッグを組むにも実績が必要だ。コーエーが他社との協業で、人気のサンドボックスゲームで2つ目のヒット作を出した意味合いは大きいだろう。
精鋭部隊であるオメガフォースの面目躍如といったところだ。
取材・文/不破聡

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