「妻は自殺じゃなかったのか」5年の“処分保留”を経て夫を急転起訴…9階転落事件の不穏な真相
「妻は自殺じゃなかったのか」5年の“処分保留”を経て夫を急転起訴…9階転落事件の不穏な真相

東京地検立川支部は17日、国立市の団地9階のベランダから妻を転落させ殺害したとして職業不詳、高張潤容疑者(49)を殺人罪で起訴した。この事件をめぐっては2021年の逮捕後、処分保留で高張容疑者は釈放されていた。

その後も検察と警視庁は捜査を続け、5年間に及ぶ処分保留後に異例の起訴となった。

防犯カメラには落下する直前、麻夏さんの背後に人影が

2021年2月28日、高張潤容疑者は妻の麻夏さん(当時41)を飛び降り自殺に見せかけて都営アパートの9階から転落させ殺害したとして殺人容疑で逮捕された。当時、事件の取材をしていた社会部記者が語る。

「2020年11月29日、高張容疑者は妻の麻夏さんの首を絞めるなどの暴行を加えた後、9階のベランダから突き落として殺害したと見られていました。遺体には窒息した際にできたと見られる出血痕があり、ベランダの手すりに麻夏さんが触れた痕跡もなかった。また、事件の様子をとらえていた防犯カメラには麻夏さんが落下する直前、背後に不審な人影が映っていたこともあり、自殺とは考えにくい状況でした。

いっぽうで、事件翌日の30日早朝に高張容疑者は自ら『タバコを吸いにベランダに出たら妻が倒れていた』『前日の夜に妻と喧嘩をした。子どもを寝かしつけていたら、妻がいなくなっていた』と110番通報しています。ですが警察は当初から高張容疑者の供述を疑い、何度も人形などをベランダから落下する“実験”を繰り返していた」

そもそも高張容疑者と麻夏さんは交際していた過去があり“元カレと元カノ”の関係だった。事件の数年前にヨリを戻し、2年前に結婚、2人の間には1歳の長女がいた。高張容疑者は「妻は育児に悩んでおり自殺だと思う」とも供述している。

別のフリー記者が当時の取材を振り返る。

「麻夏さんの母親は事件直後から娘の死に違和感を持っていました。

生前、麻夏さんは母親に離婚の相談をしており、相談を受けた際に『何かされるかもしれない。怖い』というメールも受け取っていました。また、『育児に悩んでの自殺』という高張容疑者の供述に対しても、『娘は育児を楽しんでいた』と真っ向から否定していました」

夫婦喧嘩がエスカレートした際に麻夏さんは複数回110番通報をしていて、近隣住民に助けを求めることもあった。2人の関係がうまくいっていなかったのは周知の事実だった。

「麻夏さんの母親は、高張容疑者が家に給料を入れず貯金を使い込んだことで不満を漏らしていたり、高張容疑者がペットの鳥を室内で放し飼いにして羽根や糞が散らばったことで、赤ちゃんだった長女の健康に影響がないか心配した麻夏さんと口論になっていたと語っていました。

いっぽうで高張容疑者の母親は、貯金を使い込んだという報道はニュアンスが違うし、鳥を放し飼いにしていたのは誤解と語っていた。鳥は手乗りインコで放し飼いにもしていないし、飼っていたのは2人が一緒に暮らす前の話だと主張していたんです。2021年の逮捕当初から高張容疑者側の主張と麻夏さんの遺族の主張は大きく食い違っていましたね」(前同)

「あの後、その部屋はずっと空き家だよ」

事件後、高張容疑者が身を寄せていた実家を改めて訪れ、母親に見解を求めたが、「病院から帰ってきたばかりで具合も悪いのでやめてください」と取材はできなかった。釈放後の高張容疑者の様子について近隣住民が語る。

「5年前の事件ね。なんでまた今更? 起訴? まだ捜査されてたんだ。ここ最近はもうずいぶん長い間、息子さん(高張容疑者)の姿は見かけてないよ。

最後に見かけたのは1年以上前とかじゃないかな。一応、すれ違えば会釈はするって感じだったけどね。ほとんど見かけなかったから住んでいるのかもわからなかった」

事件当時、高張容疑者は親族が経営する建築会社で働いていたが、その建築会社は今はもう廃業していた。親族とおぼしき男性に取材を申し込むと、『あんたには関係ない。帰ってくれ』と取り付く島もなかった。

事件現場となった都営アパートを訪れてみると高張容疑者と麻夏さんの暮らしていた9階の部屋は新聞受けにテープが貼られていて、ひっそりと静まりかえっていた。近隣住民が事件のその後のことを説明してくれた。

「あの後、その部屋はずっと空き家だよ。誰も住んでいない。事件直後に警察が来たきり、その後は来ているのも見かけたことないよ。最近になって警察や検察が聞き込みなんかに訪ねてきたってこともない」

東京地検立川支部は高張容疑者の認否は明らかにしていない。5年の時を経て捜査はいったいどんな進展を迎えたのか。

初公判の行方に注目が集まる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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