社会現象を巻き起こした『涼宮ハルヒの憂鬱』の放送から20年。若干18歳で主演を務めた平野綾さんも、すでに38歳になっていた。
ハルヒ抜擢も「なんでこの役が私にきたんだろう…」
――“ハルヒといえば平野綾”というほど、声も役もマッチしていたかと思います。あの役作りはどのようなアプローチで生まれたのでしょうか?
平野綾(以下、同) じつはハルヒ役に関してはオーディションを受けてないんです。ボイスサンプルを録って、いつの間にか決まっていたという感じで。
ただ、意外に思われるんですけど、私はもともと内向的で本好きなオタク女子だったので、キャラクターとしては長門タイプだったんです(笑)。
――ハルヒ同様、平野さんも活発なイメージがあるので意外です。
原作はもちろん読んでいたので、ハルヒ役が決まったときに「私、こんな過激こと言えない!」と思いました。「なんでこの役が私にきたんだろう……」って。
――超自己中で口も悪いキャラクターですからね。
当時、声優としてのキャリアも浅くて、大人しい役どころや実年齢より上の役が多かったこともあり、私の中の元気な役のレンジが本当に狭かった。その中で「気の強い女の子ってこんな感じかな?」とハルヒの表情を真似しながら一生懸命やったらああなっただけで、役作りというよりは精いっぱいの私……でした(笑)。
――斬新なストーリーとハルヒの強烈なキャラも相まって、『涼宮ハルヒの憂鬱』は社会現象になりました。どのタイミングでブームを実感したんですか?
その頃はSNSや動画投稿サイトというサービスが始まったくらいの時期だったんですけど、秋葉原のホコ天で大勢の人が集まって(EDテーマの)『ハレ晴れユカイ』を踊るって動画が動画投稿サイトで拡散されたんですよ。
――ニコニコ動画などで大きな話題を呼んだ伝説の動画ですね。ハルヒ熱が冷めやらぬまま、2006年10月放送開始の『らき☆すた』では、いわゆる萌えキャラの泉こなたを演じました。
『らき☆すた』も『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じ座組(KADOKAWA×京都アニメーション×Lantis)の製作だったのでオーディションなしでオファーをいただきました。こなたと同じ位置に泣きぼくろがあるからという理由で(笑)。
――そうだったんですか(笑)。しかし、ハルヒとの声のギャップに多くの視聴者が驚きました。
制作陣が言うには、ハルヒとはまったく違う役を演じることで『この役を平野綾がやってるのか』という衝撃がほしかったということでした。ありがたいお話ですよね。
忙しすぎたブレイク時
――『涼宮ハルヒの憂鬱』の大ヒットで、世間のイメージでは“平野綾=ハルヒ”が完全に浸透したかと思います。そのことがキャリアにおいて足かせになったことは?
当時は何をやってもハルヒを求められたのはあったと思います。役をいただいて自分の中で役作りをしてアフレコに臨んでも、“ハルヒみたいに”とまでは言われないにしろ、明らかにハルヒを求めてるなと感じることは多かったです。
チャレンジしたい声のトーンや芝居の感情は却下されてしまっていたので、その時期はいろいろ悲しかった記憶があります。
――それもハルヒのキャラが強烈すぎたせいですね。
それでもまだ10代で声優歴も浅いのに、あれだけの大役をいただいて代表作にもなった。そんなことは役者としてなかなかないことだから、その葛藤には早めに抜け出せたかもしれないですね。
――“声優・平野綾”で知名度が飛躍的に上がってテレビ、とくにバラエティ番組にも多く出演しました。
今では当たり前ですけど、当時は声優がテレビに出るなんて珍しい時代。だから、バラエティに出ようものなら即叩かれて……(苦笑)。役作りよりもそっちの葛藤のほうが大きかったかもしれないです。
――今も昔もアニメ、声優ファンには、こだわりの強い人もいますからね。
ファンが嫌がるのと、バラエティだと面白おかしくいじられてしまうので、当時はアニメ業界としても声優をテレビに出すのは遠慮すべきという暗黙のルールがありました。
でも、私はそもそもがテレビ業界出身で事務所もそちらに強かったので、せっかくハルヒブームでいろいろ声をかけていただけるようになったんだから、積極的に表に出てアニメ、声優業界をもっと知ってもらおうということになったんです。
――それが炎上してしまった。
『涼宮ハルヒ~』を見て私を知ってくださった方も多いので、「こういうことを言ったらハルヒっぽくなるかな」と意図的に発言したこともありますし、事務所やテレビ側の演出で言うことが決められてることもありましたしね。
当時の所属事務所からは私自身のキャラクターだけじゃなく、髪型や着る服まで決められてましたから。
――そうだったんですか⁉
2006年頃は、「声優といえばこの髪型だろう」という事務所の意向で黒髪パッツンストレートでした(笑)。でも私、前髪につむじがあるからどうしても分かれちゃう。だからストレートパーマをかけて毎日すごく時間をかけてセットしてました。
――忙しいのに大変ですね……。
本当に目まぐるしいスケジュールでしたね。朝帰ってきて、そのまま次の現場へ行くみたいな。まったく寝られないような生活で大学を辞めざるを得なくなるし、体も壊してしまうしでこのままでは死んでしまうと思いました。働き方を変えるためにも、事務所を辞める話し合いを以前からしていたんです。
――でも売れっ子だから事務所としてもなかなか辞めさせたくはないかと思います。
だから茶髪にしました(笑)。
――グレた中学生みたいです(笑)。
前髪パッツンだったのに(笑)。
ネットでの反響もある程度、計算してやってるみたいなところはありました。
――扱いに困る印象を事務所に持たせておけば、辞めやすいと。
そうですね。そのタイミング(2011年)で『嵐が丘』の舞台のお話がきたんです。もともと舞台がやりたくてこの世界に入ったわけなので、「今なら挑戦できるかもしれない」と、ひとつの仕事に集中させてもらえる事務所に移籍したんです。
ネットはうまく付き合わないと怖い
――声優と舞台役者、どのような違いを感じますか?
舞台は年齢や外見に合った役にどんどん移行していくので、役と一緒に人生を歩めている感覚があるんです。声優は声が変わらなければ、若い役でも延々に演じ続けられる。だから両方できたら最強だなって。
――ネット民とのバトルや事務所移籍騒動もあっただけに、舞台中心となってテレビやアニメから遠ざかれば、世間からは干されたと思われますよね。
それはもうしょうがないので、結果でわかっていただけるよう取り組みました。いちいち説明しても埒があかないですから。
――SNSに関して、今はさらに怖い時代になってるかと思いますが。
ネットリテラシーがほぼなかった時代も経験してきましたけど、今はまた別の怖さがあると思っていて、やっぱり便利な物ってうまく付き合わないと怖いですよね。
――『涼宮ハルヒの憂鬱』放送から20年、改めて当時を振り返ってみて。
当時は仕事量がすさまじくてまったく余裕がなかった。目の前のことに必死で日々をどう生き抜くかしか考えられなかった。その時と比べると、今はスケジュールだったり自分の時間だったり、自分のためにどうすればいいかを考えられるようになったのが一番の変化だと思います。
いずれにしても、たくさんの景色を見せてくれたハルヒ、そして声優というキャリアには感謝しかありません。
――後編では、平野綾さんの波乱万丈のキャリアを振り返ってもらいます!
(後編に続く)
取材・文/武松佑季
撮影/村上庄吾

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