気づかいやお礼は二言も三言もなくていい…101歳の現役薬剤師が語る「ひと声」の大切さと「小さな」プレゼントが人の心を動かす理由
気づかいやお礼は二言も三言もなくていい…101歳の現役薬剤師が語る「ひと声」の大切さと「小さな」プレゼントが人の心を動かす理由

人間関係において相手を気遣う気持ちはどう表せばいいのか。101歳まで現役薬剤師として薬局に立ち続けた比留間榮子さんが大切にしてきたのは、「あなたに関心を持っていますよ」とそっと伝えること。

そして、相手の好きなものを覚えておくことだという。

 

著書『ほどよくまわり道して生きていく』(サンマーク出版)より抜粋・再構成してお届けする。

「ひと声かける」だけでいい

気づかいは「ひとこと」でいいのです。
相手に関心を持っていることが、伝わるだけで十分です。
相手の心の奥まで入っていって、変えようとするのはおせっかい。

薬剤師は「気にかける仕事」だと思っています。

そして、人のことを気にかけたり心配したりすることは、本来、自分が疲れているときや、落ち込んでいるときにはなかなかできないものです。

自分自身が地に足がつき、自立していてこそ、本当に相手を思い、気にかけ、心配することができる。だからこそ、私はまず、自分自身が心身ともに健康であることを、日々意識しています。

誰かを心配するということは、「心を配る」こと。それは相手の代わりに何かをしてあげることでもなければ、相手が変わることを期待することでもありません。

私でいえば、「ひと声かける」ということです。薬の説明を終えたあとに、「だいぶよくなってきたみたいね」と、ひとこと添える。

すると、お客様の表情が、ぱっと明るく、いきいきと変わるのを感じます。

心から相手のことを思うひと声は、何気ない言葉であっても、相手の心の中で大切な言葉に変わっていくと思うのです。

だから私は、さりげなく、「あなたに関心を持っていますよ」という気持ちを、言葉にしてお伝えします。

大切なのは、「ひとこと」というところ。二言も三言も、誰かの問題に深く首を突っ込みすぎると、いつのまにか相手の問題に絡まって抜けられなくなってしまうこともある気がします。

プレゼントなら「小さいもの」を

相手の好きなものを覚えておく。「覚えていますよ」と伝える。
それだけで、人は少し元気になります。
誰かを思う時間は、めぐりめぐって、自分を幸せにします。

お仕事をしている中で、お話しをさせていただいた人の好きなものや出身地を覚えておくことを意識しています。

以前話してくれたことを、心の片隅に置いておく。そして、ふとした会話の中で、「これ、好きだったでしょう?」「この前、こんな話をされていましたね」とお声がけする。それだけのことですが、とても喜ばれます。

自分のことを覚えていてもらえた、気にかけてもらえた、という実感は、思っている以上に心を温めるのだと感じます。そして、「あ、覚えてくださってたんですね」というときの相手の笑顔が、私の心も元気にしてくれるのです。

小さなプレゼントもよくします。一緒に働く孫の康二郎が好きな安室奈美恵さんが出ていた新聞の記事を切り抜いて渡したこともありますし、お客様がお好きな果物を見つけてお渡ししたりしたこともあります。

ものをあげているというよりは、「あなたを思い出しましたよ」という気持ちです。お相手の負担になってはいけませんから小さなものがいいですね。

人を思う時間は、自分の心も豊かにしてくれます。相手の喜ぶ顔を思い浮かべる時間は、それ自体が、静かな幸福なのだと思います。

文/比留間榮子

ほどよくまわり道して生きていく

比留間 榮子
気づかいやお礼は二言も三言もなくていい…101歳の現役薬剤師が語る「ひと声」の大切さと「小さな」プレゼントが人の心を動かす理由
ほどよくまわり道して生きていく
2026/3/111,540円(税込)160ページISBN: 978-4763142948101歳の薬剤師が手渡してきた
心の処方箋

焦らない、答えを急がない。
傷をいやし、心をほどく
ゆっくり効く「日にち薬」。


「ありがたい話なんて、何もでてきませんよ?
私は、ただの薬剤師ですから」
そんな飾らない第一声とともに、白衣姿の薬剤師がゆっくりとした足取りで現れた。
東京下町のとある一角、大正12年創業のその薬局と同じ年齢の、おばあちゃん薬剤師、
それが比留間榮子さんだ。


雨の日も風の日も、猛暑も大雪もものともせず、
日々、薬局に立ち続け、お客様に手を添え心を重ねること75年。
かけるひと声、添えるその手が
「榮子先生に会うだけで元気が湧いてくる」
「来るたびに握手をして、パワーをもらえる」
と地元で評判の薬剤師。

そんな彼女が、薬とともにそっと手渡してきた「言葉のくすり」。
権威ある称号も名誉な勲章もないけれど、
ただひたむきに、目の前のひとりに心を重ねる長い年月が調合した、
自分にも誰かにも、少しやさしくなれる処方箋。(イントロダクションより)

※本書は、小社で単行本(2020年10月)で刊行された『時間はくすり』を改題し、未発表原稿を含めて加筆、再編集したものです。

(読者の方の声)
●「優しい言葉でつづられた文章に温かくなりました。近所だったら通ってしまいそうです。折にふれて読み返したい一冊です」(46歳女性)
●「思わず夢中で読みました。誰しも悩みはある。不安もある。でも必ずのりこえられる。そう感じました」(39歳男性)
●「悩みを抱えている今、生きることが楽になりました」(48歳女性)
●「将来、薬剤師になりたいと思っています。
榮子先生のように一人一人の患者に真摯に向き合い、自分も成長を感じる人になりたいと思いました。この本は持っているだけでパワーが湧きます。心が沈んだり悩んだりしたときは、また読み返したいです」(17歳女性)

(目次より)
1章 好奇心はくすり
●何歳からでも新しくなれる
●安易に「わかった」と思わない
●「今を生きている」人でいる
●過去で自分を縛らない
●「疲れた」と言わない
●後悔は毒
●「ごめんなさい」はいち早く
2章 「続けること」はくすり
●朝一番の行動
●挨拶は物語る
●一歩目はごく小さく
●よい「あたりまえ」
●新しい人の声こそ聞く
●「一緒に」を口ぐせに
●「淡々と」がいい
3章 ぬくもりはくすり
●近すぎないから受け止められる
●「ひと声かける」だけでいい
●過ちは素早く認める
●「できていること」を見る
●そのときに考えればいい
●いつだって「お互いさま」
●良薬は口に苦し
4章 時間はくすり
●積み重ねが生むもの
●心が宿るものを残す
●時間が人を丸くする
●自分のことはずっと自分で
●家族は他人
●誰にもお役目がある
●1日を一生と思って生きてみる
編集部おすすめ