「有名になるほど兵役から逃げる者もいる」BTSが復帰作「アリラン」に込めた意味を考察する
「有名になるほど兵役から逃げる者もいる」BTSが復帰作「アリラン」に込めた意味を考察する

3年5ヶ月ぶりに復帰を果たしたBTSが、カムバックライブのタイトルにも、最新アルバムのタイトルにも「アリラン」という言葉を選んだ。誰もが一度は耳にしたことのあるあのメロディーに、彼らはどんな思いを込めたのだろうか。

韓国の民謡「アリラン」が持つ意味を紐解く。

メンバーがアリランに込めた意味

韓国の7人組ボーイズグループ、BTSのメンバー全員が兵役を終え、21日に韓国・光化門広場で『BTS THE COMEBACK LIVE : ARIRANG』を開催、3年5ヶ月ぶりに復帰を果たした。

2022年に起きた梨泰院での雑踏事故のような事態を避けるため、周辺では交通規制や、危険物品の検査などが徹底的に行われ、まさに市をあげてのライブとなった。警備の数が多過ぎた、ライブ後にHYBEの株価が15%下がったなど多くの余波を残しているが、ここでは彼らが選んだ「アリラン」を考察したい。

最新アルバムの1曲目でもあり、ライブでも最初に歌われた楽曲『Body to Body』は韓国の代表的な民謡「アリラン」の旋律を一部サンプリングしている。日本でも多くの人が聞いたことがあるであろう、「アリラン アリラン アラリヨ アリラン峠を越えていく」のメロディーが印象的だ。

BTSのメンバーは復帰に際し、生まれ育った韓国へのアイデンティティーに回帰したかったと公式インタビューでも語っている。

さてこの「アリラン」、メロディーは知っていても、どんな歌なのかは日本人にはあまりなじみがないかもしれない。

そもそものルーツは韓国でも諸説あり、不明とされる。文字として初めて記譜されたのは1896年のことだ。現在の形に近いアリランは、1926年の映画『アリラン』によって広く知られることとなった。

現地で在野の研究家として知られるキム・ヨンガプ氏(社団法人ハンギョレアリラン連合会常任理事)に話を聞いた。

「アリランは長年にわたって無数にアレンジされてきており、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、南北にまたがる“民族の歌”にもなっています。何度も歌詞に出てくる“アリラン峠”とは、もともと実在するものではなく多くの学者たちからも、人生で乗り越えなければならないものとして解釈されています。

過酷な受験戦争や、儒教文化ゆえの家父長制の影響を受ける嫁姑問題など、現代の韓国社会が抱える様々な問題もある意味では峠です。そしてこんにちの韓国人男性にとって、最も大きな峠が軍隊(兵役)に行くことです。

有名になるほど、そしてお金持ちになるほど、軍隊という峠から逃げる者もいます。それをメンバーの7人は堂々と、誇らしげに戻ってきました。”僕たちは峠を堂々と越えた、そして今、ファンと再会するんだ”というメッセージも含まれているのではないでしょうか」(キム・ヨンガプ氏)

BTSが20日に楽曲とともに公開した、公式の曲説明にはこんなくだりがある。

「民謡『アリラン』は、別れと懐かしさ、そして再び前へ進むことを歌う。それは文化や言語を超えて誰もが共感できる感情だ。新作は防弾少年団の個人的な経験から始まり、世界中の人々が共感できる物語へと広がっていく」

キム・ヨンガプ氏は「数多くのアレンジがなされてきたアリランですが、BTSが今回発表した2026年バージョンも、それもまた新しいアリランなのです」と語る。

兵役という一時的な別れを終えて、また前を向いたBTS。4月韓国でのライブを皮切りに世界34都市をめぐるツアーを開催予定で、日本にも4月17日と18日にやってくる。

取材・文/吉崎エイジーニョ

 
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