今泉力哉が脚本と監督を務めるドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』が最終回を迎えた。そんな今泉に話を聞いたのは、新宿のとある居酒屋。
1日5時間以上エゴサを続けること。SNSに書いた言葉は残さず、DMで届く相談には基本すべて返事をすること。視聴者の反応を追いながら、自分と他人の“ズレ”を確かめていること。ドラマの反響とともに、今泉力哉の本音に迫った。〈前後編の前編〉
「ずっとエゴサしてます(笑)」
──居酒屋で飲みながらの取材って今までありました?
今泉力哉(以下同) いや……あまり記憶にないですね。昔1、2回くらいあったかもしれないですけど、そんなには。でも、ずるい取材ですよね。今ドラマの仕上げ期間なので普通だったら断るけど、飲めるなら……と思って(笑)。
──『冬のなんかさ、春のなんかね』には、飲み屋のシーンがよく出てきたということもあり。
多いですね。飲み屋もそうだし、とにかく食事のシーンが多い。
──もちろんです。SNS上の視聴者のリアクションも多種多様にみえますが、今泉監督もチェックされてるんですよね?
ずっとエゴサしてます(笑)。放送中も見てますし、1日5時間とか、もっとかな。電車で移動してるときも、仕事してる時間以外は永遠にエゴサしてます。寝てるときと仕事時間以外は、だいたい見てる。もう呼吸みたいなもんですね。
でもSNSのつぶやきは残さないって決めてるので、つぶやいてもすべて一定期間で消してます。いいねはめっちゃするけど、それもたまに取り消したり。炎上も怖いですし。2、3年前の投稿を前後の文脈なく急に掘られて、いきなり燃やされる、みたいなことも起きかねないので。自分としては、「(フォロワーなど)届く人に届いたらもう消す」ぐらいの感覚なんですよね。24時間ぐらい経てば伝わったかな、みたいな。
ちょうど昨日放送された回(第9話)のリアクションを見ていても、「登場人物もれなく嫌われてるな」って感じでしたね(笑)。知り合いからも「なんで文菜の浮気は許せるのに、ゆきおの浮気は許せないんだろう」みたいな感想が来たりして。視点の置き方次第で、情報の提示順次第で、こうも受け取られ方が変わるんだなって。
──視聴者の反応を見て、作品に反映させることはあるんですか。
物語そのものを大きく変えることはないですね。もう撮り終わっているので。ただ、編集の段階で「これは伝わり方がズレそうだな」と思った時に、補助線を引くことはありました。
今回だと、ダイジェスト版(Youtubeに公式にアップされている各話の短縮版)でテロップを足したところがあって。見ている人によって感想が分かれたほうがいいところと、そうじゃないところがあるので、後者だけ少しフォローした感じです。
具体的に言うと、第2話で文菜がエンちゃんをモデルに小説を書いているという部分。もちろんエンちゃんもそのことは知っていて、許可を得ています。それを、勝手に書いてる、と解釈してる人がいたので、文菜はそんなことしないよ、と。
大幅なテコ入れは物語を壊しちゃうので基本的にしないです。
正解より、人とのズレを探す
──個人的に印象的だったのが、第8話の旅館のシーンです。文菜(杉咲花)とゆきお(成田凌)がせっかく旅館に泊まったのに、朝食を食べないことに疑問を呈す視聴者が多くいました(笑)。
「ありえない」って声がたくさん届いてます(笑)。俺、そんなにいけないことだと思ってなかったんですよ。普通に「朝ごはんは食べない」「コーヒーでいい」って言う人、全然いると思ってて。というか、俺がそうなんで。食に対するこだわりがあまりないので、朝食をパスすることも全然ある。ギリギリまで寝てたいし。だから、あのシーンにあんなに反応が集まるんだって驚きました。
文菜を通して自分の感覚が否定されている感じで面白かったです。俺、やっぱズレてるんだなって、改めて思いました。
「コインランドリーでミッシェル・ガン・エレファントを聴く女の子なんておっさんの妄想だ」みたいな意見もありましたけど、そこはさすがに言い返せます。
──でも、その“ズレ”を自覚しているからこそ、視聴者の反応を見続けてしまうところもありそうです。
あると思います。正解を探してるというより、自分がどこで人と違うのかを確認してる感じに近いかもしれないですね。何が許されて、何が許されないのか。何がリアルに見えて、何が不自然に見えるのか。そういうのを見てると、自分の感覚のズレもわかる。それってつまりは他者を知ることですから楽しいですよ。だから、ずっと見ちゃうんだと思います。
──SNSは発信の場というより、むしろ観察や接続の場になっている。
そうですね。日々、知らない人からDMが来るんですよ。恋愛相談とか、人間関係の相談とか。基本的に全部、返事をしています。面白いんですよね、知らない視点に触れられるから。「どういう思考?」みたいな。俺からは絶対出てこない考え方もあるし、逆に同じような発想の人もいるし。
── 一段上がった位置から、人の相談に答える感じではないんですね。
ないです、ないです。年を取ったからとか、結婚してるからとかで、上の立場から答えるみたいな感覚は全然ないですね。俺も答えをわかっていないですし、一緒に悩む感じ。
ドラマの感想がばらつくこと
──魅力的な若手俳優を今泉作品を通して初めて知ることも多いのですが、普段どういうところにアンテナを貼っているのですか。
うーん、どこだろ。最近はあまり映画を観なくなっちゃったんですけど、自分より若い世代の監督たちの作品はよく見るようにしてます。だってそれが一番面白いはずだから。新しい人たちの映画で新しい俳優を知ることは多いですね。今後、自分が仕事を奪わそうな若手の才能あるつくり手の作品はチェックしておく、みたいな感じです。嘘です(笑)。
──視聴者の反応を見ていても、DMで相談を受けていても、今泉監督は“人の気持ちはそんなに簡単に整理できない”という前提でいるように見えます。
そうかもしれないですね。結婚してるから安心とか、こういう関係なら嫉妬しないとか、みんな結構すぐ整理したがるけど、俺はそんなにきれいに割り切れないと思ってる。だから、作品の中の人物も簡単には整理したくないんです。
見る人によって感想がバラける作品の方が豊かだと思っているんです。映画館とかでまわりの観客と一緒の感情になって、一緒に笑ったり、怒ったりして、そういう一体感を感じて「最高!」ってなるときもあるけど、自分ではそういうものをつくろうと思わないですね。
# 2に続く
取材・文/キムラ 撮影/杉山慶伍

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


