「アナウンサーは置物」「喋るな」「三谷は邪魔」——。テレビ朝日アナウンサーの三谷紬アナはSNSに並ぶ厳しい言葉に、ときに落ち込んでしまうという。
令和ロマンくるまさんの厳しくも優しい言葉
自分が言った言葉が、意図したことと違う形で相手に受け取られ、「そんなつもりじゃなかったのに」と、頭を抱えた経験が、きっと誰でも一度はありますよね。
つい最近、収録中にアナウンサーという職業は難しいなと改めて感じる出来事がありました。
私が出演している『永野&くるまのひっかかりニーチェ』は、お笑い芸人の永野さん、令和ロマンのくるまさんと共演させていただいている番組です。
お二人に圧倒されることも多いのですが、収録中に「私が発言することで流れを変えてしまっているのではないか…と悩むことがある」と話したところ、くるまさんから「お前にそんなに影響されることはない。バカにするなよ、舐めるなよ」と言われてしまいました(放送もされています)。
もちろん、私はそんなつもりで言ったわけではありません。永野さんやくるまさんとの立場や実力の違いを感じていたからこそ、謙遜の意味で言ったのですが、「ああ、伝わり方ってこんなにも違うのか」と考え込んでしまいました。
テキストで書くとくるまさんの言い方が少しキツく感じられますが、改めて考えると「流れを止めるなんて気にすることなく発言してほしい」という、くるまさんの優しさなのかもしれないと思います。
それでも、O.A.を見た人によっては「私が二人に影響を与えていることに悩んでいる」、つまり私がおごっているかのように受け取られてしまう。
言葉とは本当に難しいものだと改めて感じました。
あのとき、私はどんな言葉を選べば本当の気持ちを誤解なく伝えられたのでしょうか。
「三谷はいらない」
私はアナウンサーです。「言葉を扱う仕事」をしています。
けれど実際のところ、準備された原稿を読むことが中心で、自分自身のことを語る機会はそれほど多くありません。
だからこそ、いざ自分の気持ちを言葉にしようとすると、思っている以上に難しく感じることがあります。
言葉と真剣に向き合えば向き合うほど、逆にわからなくなることもあります。
一体どんな言葉を使えば、私の本当に言いたいことは伝わるのでしょうか。
脳の中身をそのまま見せられたらどんなに楽だろう、と思うことすらあります。自分の思いがうまく伝えられなかったと感じるたびに、悔しい気持ちになります。
『ひっかかりニーチェ』は、1時間半ほど収録しても実際に放送されるのはわずか15分ほど。制作スタッフが空気感や流れを大切にしながら丁寧に編集してくれているからこそ、番組として成立しているのですが、どうしてもその場で感じていた細かなニュアンスや文脈のすべてをそのままお届けすることの難しさも感じています。
だからこそ、視聴者の皆さんに伝わる印象と、私たち出演者やスタッフがその場で感じているものとの間に、ズレが生まれてしまうこともあるのかもしれません。
SNSで目にする番組への感想には厳しい言葉もあります。
「三谷は邪魔」
「三谷はいらない」
「喋るな」
もちろん、番組への率直な感想だと思います。それでも、やはり少し落ち込んでしまいます。
SNSの評価を気にし過ぎるのはよくないことであるとわかっていますが、そこに書かれている言葉のひとつひとつが視聴者の意見であることも事実です。
だから私はできるだけ受け止めながら、話すべきときと話さないときを考えて収録に向き合っています。
およそ2年前に番組がスタートする前の打ち合わせで、局アナウンサーとして出演するいっぽうで、「一人の女性・三谷紬としても出てほしい」と演出の担当者から言われました。
最初はもちろん葛藤もありました。
それでも覚悟を決めて、その役割を受け入れました。自分なりに本心をぶつけながら番組に向き合っているつもりです。
そもそも、アナウンサーは自我を出してはいけないと誰が決めたのでしょうか。なぜそう思われているのでしょうか。人間なのですから、自我がまったくない人なんていませんよね。
そして『ひっかかりニーチェ』は、その自我を出すこと自体が求められている番組でもあります。
確かに、私は人より自我が強いのかもしれません。知らないうちにそれを押し付けてしまっていることもあるのかもしれません。自我をうまくコントロールできていないことに自分自身もずっとひっかかっています。
きっとこのような葛藤も見ていただいている方には伝わっていないのかなと思います。
SNSのコメントを読むと「アナウンサーは置物だ」「話していいのは原稿を読む時だけ」そんなふうに思っている人も一定数いるようです。まるで、置き型の原稿読みロボットのように。
けれど、私は言葉に悩み、誤解されれば落ち込む人間です。だから誹謗中傷を受ければ、やはり傷つきます。ベッドの上で体育座りをして考え込んでしまうこともあります。
と、収録後に悩んでしまうこともある『ひっかかりニーチェ』なのですが、3月20日に番組初となるイベント『ひっかかりニーチェの集い~みんなで深淵を覗く会~』が開催されました。
浅はかさが突き抜けているから凄い
イベントが終わった今、率直な感想は「まだまだ話し足りない!」です(笑)。
イベントを見てくださった方は悩みながら試行錯誤している、リアルな私を少しでも汲み取っていただけたでしょうか?
私の発言で笑ってくださったり、共感の拍手をくださったり…話しながらみなさんの反応を感じるたびに嬉しくて涙が出そうでした。
SNSの声に悩むこともありますが、「こんなにも温かい皆さまに番組を見ていただけていたんだ」と初めて実感できました(泣)。
個人的に印象に残っているのは、永野さんに「三谷は浅はかさが突き抜けているから凄いんだよ!」と言っていただけたこと。
「浅はかで薄っぺらい」という批判を受けることも多いので、それが突き抜けたら凄いになるのか! と気付かされました。
言葉がうまく伝わらないことがあっても、型にはめて発言をしていくのではなく、「等身大で突き抜けられるならばいいか!^_^」と吹っ切れられる一言でした。嬉しかったなぁ。
ポジティブ過ぎですかね…(笑)。
昼夜2公演の会場に来てくださった延べ約4000人のみなさん、そして配信でご覧いただいたみなさんにも「浅はかすぎる」私を体感いただけたでしょうか?
これからも“おもしれぇ女”と温かく笑いながら見守っていただけたらとてもとても嬉しいです!
またイベントをやりたいという意欲に溢れていますので、それが実現できるよう番組の応援も変わらずよろしくお願いいたします!
ニーチェファンのみなさん(永野さん風に言うとニーラーのみなさん?)本当にいつもありがとうございます!
配信チケットは現在も販売されていて、オンラインでも楽しんでいただけますので、よかったらご覧ください。
イベントを見ていただければ、普段はこのマシンガントークを編集して15分にしているなんて、制作スタッフが凄すぎる…! とリスペクトが強まるに違いありません。
イベントと番組を見比べていただいて、どうか私たちアナウンサーも言葉を悩み、選んでいる人間だということを、少しだけ感じていただけたらと思います(笑)。
文/三谷紬
写真/SAKAI DE JUN

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