「死んだほうがマシ」30年苦しむ女性も…“ただの頭痛”で片づけられる「群発頭痛」の地獄
「死んだほうがマシ」30年苦しむ女性も…“ただの頭痛”で片づけられる「群発頭痛」の地獄

骨折、出産、盲腸――生きていれば、強い痛みを経験することは少なくない。もちろん、どの痛みがいちばんつらいかは簡単に比べられるものではない。

ただ、しばしば「この世でもっとも痛い」とまで言われる病気がある。

毎日、決まった時間、決まった箇所に謎の激痛

4年前の春先、筆者はひどい頭痛に襲われた。季節の変わり目で気候も安定しない時期だったため、最初は「今日の片頭痛はやけにしんどいな……」くらいに思っていた。だが、そこから奇妙な苦しみの日々が始まった。

毎日、決まった時間に、決まった箇所が痛み出す。痛みは横になって頭を押さえていないと耐えられないほどで、ただの片頭痛にしてはさすがにおかしいと思った。だが一方で、一日2時間ほどくるその痛みに耐えれば、あとは何事もなかったかのように体は動く。体調はいい。

こうして「治ったかもしれない」と思った翌日、また同じ時間に同じ痛みが来る。そんなことを繰り返すうちに知ったのが、「群発頭痛」という病気だった。

群発頭痛は、心筋梗塞や尿路結石と並んで“世界3大激痛”の病気のひとつと呼ばれることもある。名前だけ聞くと「頭痛の一種でしょ。大げさじゃない?」と思ってしまいそうだが、当事者が語る実態は、一般的な頭痛のイメージとは大きく異なる。

ある時期に発作が集中し、毎日のように決まった時間、決まった場所、主に片方の目の奥に激しい痛みが起きる。

発症すると数週間から数か月、ほぼ毎日のように痛みに襲われる人もいる。特に季節の変わり目に頭痛が発生する“群発期”が訪れる人も多く、この春もSNSでは悩まされているという声が目立つ。

厄介なのは、その深刻さが周囲に伝わりにくいことだ。病名に「頭痛」とつくため、「少し休めば大丈夫なのでは」「我慢できるのでは」と軽く受け止められてしまうこともある。だが実際には、仕事や育児、人間関係、人生設計にまで影響が及ぶこともある。

今回は、群発頭痛に長く悩まされてきた2人の当事者に話を聞いた。

約10年前に群発頭痛を発症した30代男性は、群発期に入ると発作が毎日のように起きるという。特に夜間や明け方に多く、ピーク時には日中にも発作が出て、1日2~3回に及ぶこともある。

「頭痛が始まると、“目の奥をえぐられるような痛み”に襲われ、あまりの痛みにじっとしていられず、うずくまることしかできない状態になります」(30代男性、以下同)

発作がいつ起こるかわからないため、生活のリズムは大きく崩れてしまう。特に夜間の発作は睡眠を直撃し、その影響は翌日の仕事にも及ぶ。

「夜間の発作で十分な睡眠が取れない日が続くと、日中は強い疲労感が残り、集中力も落ちます。

簡単な判断に時間がかかったり、普段なら問題なくできる作業で手が止まったりすることもあります」

「いつ発作が来るかわからない」という不安も大きく、長時間の会議や拘束時間の長い予定、急な対応が求められる業務は、事前に調整せざるを得ないこともあるという。

さらに、この男性にとって切実なのが育児との両立だ。

インフルエンザ、コロナ感染、骨折と一線を画す苦しみ

「隣の部屋で娘が眠っている中で発作が起きた際、泣き声が聞こえても様子を見に行くことができなかったことがあります。起き上がろうとしても体が動かず、ただその場でうずくまることしかできませんでした。

本来であればすぐに抱っこしてあげたい状況でも、痛みで立ち上がることすらできず、『父親なのに何もできない』という無力感を強く覚えました。その間、妻にすべて任せるしかなく、家族に負担をかけてしまっているという思いも大きいです」

この男性は、これまでインフルエンザやコロナ感染、骨折、足の不全断裂も経験してきたが、それでも群発頭痛による苦しみは“別格”だと話す。

「正直、群発頭痛はそれらとは比較にならないと感じています。他の痛みは、強くてもどこか耐えられる感覚がありましたが、群発頭痛はじっとしていることすらできないほどの激しい痛みが続きます。

目の奥をえぐられるような痛みが一定時間続き、逃げ場がないまま、その時間をやり過ごすしかない感覚です。これまで経験したどの痛みとも性質が異なり、強さとして近いものは思い当たりません。一言で表すなら、『耐えるという選択肢すら奪われる痛み』だと感じています」

もう一人、取材に応じてくれたのは58歳の女性。28歳で発症して以来、約30年にわたり群発頭痛と向き合ってきた。今でこそ病名を知る人は増えつつあるが、彼女が発症した当時は、医療現場でも十分に知られていなかったという。

「30年前は一般の医者もあまり群発頭痛を知らなかった時代です。若いときは半年~1年おきに群発期が訪れており、現在は加齢のせいか、1~2年おきになりました」(58歳女性、以下同)

痛みについて、女性はこう語る。

「死んだほうがマシというレベルです。片目の奥がえぐられるような痛さです。心筋梗塞や出産、尿路結石などは体験したことありませんが、それよりは痛いと思います」

現在は発作を抑える注射薬を使用しているが、当時は十分な対処法もなく、生活への影響は深刻だった。昼は事務職、夜はスナックで働いていたが、群発期は2か月ほど続き、その間はほとんど出勤できなかったという。

「一回の群発期が、当時は2か月ほど続いたのですが、その間はほとんど出勤できず、大体は『うちではもう雇えない』と言われて、自分から退職という形をとってきました。群発頭痛という病名なので、ただの頭痛と思われていまして、死ぬほど痛いと伝えても伝わらないのが辛かったです」

発作中は、働くどころか会社に連絡を入れることすら難しかった。

「一日4回以上発作がきて、鎮まるまでに1~2時間かかるのです。痛すぎて顔に汗がダラダラと流れてきて止まらず、目からは涙、鼻からは鼻水が出ます。

痛くて電話で会社に連絡、ということもできませんでした。仕事中に発作がきたこともありますが、痛さのあまり何も手につかず、2時間くらい机につっぷしてました。

発作中はとにかく痛くて何もできません」

痛みのあまり気絶をしたことも

そんなとき、会社の人からは「頭痛ぐらいで仕事を休むなんて」という言葉をかけられたという。やはりどれほど苦しくても、他人が見れば「ただの頭痛でしょ?」という認識にしかならないのだ。

現在、この女性が不安に感じているのは、発作時に使う注射薬が入手しづらくなっていることだ。

「今困っているのは、注射が薬不足なようでして、なかなか薬局に入ってこないことです。これを打てば発作がおさまりますが、無かった当時は痛さのあまりによく気絶していました」

2人の話から見えてくるのは、群発頭痛が単なる「ひどい頭痛」では済まされないということだ。眠れず、働けず、動けない。それでもなお、「たかが頭痛」と受け止められてしまうことがある。

群発頭痛は、その激しい痛みから、海外では「suicide headache」と表現され、日本でも「自殺頭痛」と呼ばれることがある。実際、今回話を聞いた58歳の女性も、「安楽死制度を導入してほしいと強く希望したいです」と語っていた。

大げさに言っているのではない。そう口にせざるを得ないほどの激痛と、長年向き合ってきたということなのだろう。この病気が一人でも多くの人に知られることが、当事者の救いにつながるのかもしれない。

取材・文/ライター神山

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