過剰とも受け取られかねない娘の学習管理の様子をブログやSNSで発信し、そのたびに賛否を呼んできた教育投資ジャーナリストの戦記さん。活動の根底にあるのは一貫して“効率性”だが、そもそも家庭とは不合理なものの連続でもある。
後編では、合理主義である戦記さんの発信活動の裏側にある、知られざる家庭人としての輪郭に迫る。〈前後編の後編〉
友だちではない、でも家族として仲は良い?
──巷では娘さんの管理をすべてExcelでやることから“Excelパパ”などと呼ばれて、その合理主義的側面がクローズアップされることの多い戦記さんですが、娘さんとのご関係はどうでしょうか。
戦記(以下同) 学習においては、民間企業における上司と部下の関係が一番近いかもしれません。新卒の子と、入社5年目くらいでしょうか。他人ではないけれども、友だちでは絶対にないという距離感を保っていると思います。
プライベートでは仲が良いほうだと私は思っているのですが。たとえば毎年娘とは長期休みに2人きりで長距離サイクリングする旅行に行きます。一昨年は小豆島を一周、昨年は伊豆大島を一周しています。
また、娘は妻と2人きりでディズニーランドを毎年楽しんでいますね。夫婦どちらかが娘と出かけるときは、片方はお休みできるという感じです。
──特に反抗期もなく?
ありがたいことに激しい反抗期はなかったですね。そもそも娘は小1の最初に勉強をする習慣をつけてしまったので、基本的にはずっと勉強をしているんです。
──戦記さんはメディア露出が多いですが、娘さんはご覧になったりするんですか。
見ていないと思います。スマホを禁止しているわけではないですし、実際に娘は動画サイトでよく動画もみていますが、それは部活動に関する動画が主です。おそらく私が戦記であることは知っているはずですが、それが話題になることはないですね。公然の秘密のような感じになっています(笑)。
──娘さんのお友だちとの関係ではどうでしょうか。
難関進学校はだいたいそうだと思いますが、娘が通う学校は自分の勉強や部活や趣味に夢中な生徒が多く、あまりゴシップに興味がない子が多い印象です。今打ち込むべきことが明確で、そこに集中するため、他人の親の職業を大きく取り上げることはないでしょうね。
そもそもスマホを持っていない子もいますし、高校2年生になると勉強に集中するために自主的に親に“返納”する子も多いようです。
なお、僕が娘の学校の文化祭で書道部の作品を鑑賞していたら、在校生2名から「すいません、もしかして戦記さんですか? いつも応援しています!」と言われて驚いたことがあります。
学校に苦情電話も…
──学校からは活動について何か言われたりしませんか。
入学式後、最初の保護者面談に出席した際に、先生にはご挨拶させていただくとともに「戦記というブログを運営しています」と説明しました。
学校に迷惑がかからないように活動をするとお約束をして、学校側も寛大に受け止めてくださったように思います。女子難関校はとかく閉鎖的で保守的なのですが、娘の学校は学習カリキュラムや探求活動内容を積極的に情報公開している珍しい方針です。
──その後、特にトラブルはなかったですか。
私にはアンチも多く、いろいろな攻撃を受けるのですが、娘の学校に対する嫌がらせがあったこともあります。具体的には「戦記氏が娘さんの成績を公表するのは、プライバシーの侵害にあたるため児童相談所に通報する」と匿名での苦情電話があったときですね。
一見ロジックがきちんとしているので、賢いアンチの方だなと思いました。とはいえ、私が公表している成績は、娘が“同学年ではなく上の学年”と東大模試や共通テスト模試や英検で戦った結果が中心ですので、成績と言われても微妙ですよね。上の学年と競った結果を成績と言われても。
また、僕が娘の学校名を正式に公表したことは一度もありませんし、そもそも学校は僕とは無関係なので学校に苦情を言うのは筋違いです。そこで、「学校への偽計業務妨害の可能性が出てくるので気を付けてね」とツイートしたら嫌がらせもなくなりました。
「くだらない話もしますし(笑)」
──ところで戦記家の家族だんらんは非常に想像しづらいものがあるんですが、どのような感じか教えてください。
普通だと思いますよ、くだらない話もしますし(笑)。
あるいは、そのときホットな場所やそれに関連する場所を次の家族旅行先を決める軸にしたりもしますね。例えば、ChatGPTを開発したOpenAIが話題だからカリフォルニア旅行をした際にOpenAIの創業の地を訪問してみよう、みたいな計画の立て方です。
──知識が紐づいていくうえで重要そうなプロセスですね。
そうですね。思えば中学受験のときも、当時の学習内容とリンクした旅行先を選びました。当時小4の娘と「関ヶ原に行ってみたいよね」という話になり、親子で自転車を輪行して新幹線で東京から岐阜羽島まで運び、そこから関ヶ原古戦場をサイクリングしました。2人で「徳川家康最後陣地」で島津義弘敵中突破ごっこをしたり(笑)。
でもそういうのは忘れにくいですから、学習効率を高めて、知識と経験を紐づける大切なことなのではないかと考えています。
合理主義者が家庭で見つけた「非効率」の正体
──家庭生活は不合理なことの連続だと思うのですが、合理主義者の戦記さんからみてそのあたりはどう折り合いをつけていますか。
家庭は密室なので、その不合理さや非効率性に気付かないことが多いと思います。
たとえば我が家では、料理が妻の担当、それ以外が私です。で、娘の学習管理も私がしてきました。料理と学習管理は相性がよくないんですよね。料理はそもそも火を使うし、夕食の準備をする時間帯と勉強の時間帯が丸かぶりで集中がしづらい。
そういうわけで、妻は料理に集中してもらって、ほかの家事は基本的にすべて私が引き受けることにしています。
──ネットで「モラハラ」とか言われている戦記さんがほとんどの家事を引き受けているのは意外ですね。単純な楽しさもありますか。
あると思いますね。掃除にしても洗濯にしても、「やった分だけの報酬が必ず返ってくる」点がいいと思います。仕事ではそういうわけにはいかないですよね。
──仕事をして、娘さんの学習管理もして、家事もして、そのうえ発信活動もするのは相当たいへんそうですね。
基本的にひとりでいるときしか発信しないんですよ。誰かとご飯を食べているときにはスマホは触りませんし。家族といるときは会話と家事があるので。これは受験における鉄則と同様ですが、「いろいろ頑張る」は間違いで、「何をしないかをまず決める」ことが効率化につながると私は考えています。
──投資家でもある戦記さんは、資産運用などにおいて「早期から始めることの大切さ」を説かれていて、それは娘さんの学習でも実践されていますよね。
そうですね。たとえば娘は中学受験と並行して数学と英語をやっていたので、中学入学のときにそこそこの“貯蓄”がありました。投資における複利効果と同様に、早い時期に始められれば、前倒しに学習を積めるため、有利になるのだと考えています。特に英語は複利効果が大きいですね。
──投資家としても成功され、娘さんの学習管理も相応の結果が出ています。人が一生をかけて築こうとしているものがすでに完成されつつあるわけですが、そんな日常において“テンションが上がる瞬間”はあるのでしょうか。
テンションが上がる……いい質問ですね……。
ただ、たとえば私が誰かに貢献することができたときは喜びを感じるかもしれません。家族でも他人でも、誰かが成長していく姿をみるのは今でもうれしいですよね。
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取材・文・写真/黒島暁生

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