〈桜を遮る横断幕〉「注意の声がうるさい」「嫌な世の中になってしまった」中目黒で花見客が困惑 区に聞いた規制強化の理由
〈桜を遮る横断幕〉「注意の声がうるさい」「嫌な世の中になってしまった」中目黒で花見客が困惑 区に聞いた規制強化の理由

春になると毎年、桜の名所はどこも人でにぎわう。その一方で、混雑やマナーの問題が注目されることも少なくない。

2026年の花見シーズン、都内の桜の名所・中目黒の目黒川では、その混雑への対策が例年以上に目に見える形で現れていた。

「目黒川の桜って今こんな感じなの?」

3月下旬の中目黒駅。平日でも駅には人がごった返し、駅中のエスカレーターや出口すぐの信号など、いたるところに警備員が配備されていた。

人の流れは、桜並木で有名な目黒川へと続いている。川沿いでは満開の桜が咲き誇り、圧巻の景色が広がっていた。たくさんの人が足を止めて写真を撮っており、日本人だけでなく外国人観光客の姿も多く見られた。

一方で、そんな美しい景色に似つかわしくないものもある。人気スポットの日の出橋には「滞留禁止」「一方通行」と書かれた横断幕が掲げられ、景色を遮っていた。本来なら、川沿いの桜を一望できるはずの場所がふさがれているのだ。

さらに橋の上では、警備員がしきりに「立ち止まらないでください」「一方通行です」と呼びかけ、歩行を促していた。川沿いを歩いてみると、ベンチなどにはロープが張られ、実質的に立ち入りや利用ができない状態になっている。

満開の桜がつくる華やかな景色とは対照的に、響き続ける警備員の声や、視界に入る規制用の横断幕、ロープ。SNS上では、こうした状況に戸惑う声も上がっていた。

「警備員さんの注意がうるさい…イラっとする」
「目黒川の桜って今こんな感じなの? 何か嫌な世の中になってしまったねぇ…」
「目黒川のお花見エグいな。ロープに柵とかもう見せる気ないやん」
「花見と言ったら目黒川に毎年行ってたけど、ここ数年は外国人や田舎からの観光客の民度の低さと警備員の腹立つ案内のせいで、美しい桜が台無し。もう二度と行くことは無いだろうな」

桜の名所で知られる目黒川で、なぜここまでの対策が必要になっているのか。目黒区道路公園課の担当者に話を聞いた。

「滞留防止のために、このような措置をとっています。横断幕の設置に関しては、今年度が初めてです。目黒川沿いにかかる橋の中でも、横断幕を設置している日の出橋は、どうしても人が集中する場所です。

滞留が多くなってしまう箇所なので、今回、警備員による誘導と併せて横断幕を設置し、雑踏対策をさせていただいています」(目黒区道路公園課担当者、以下同)

ベンチまでも使えなくする理由とは

区によれば、こうした対応は今年突然始まったわけではない。警備員の配置や声がけは以前から行なっており、昨年は滞留防止のため、キープアウト(立ち入り禁止)テープも使っていたという。

「ただ、テープはどうしても景観上、あまり良くなかったというところで、今回は横断幕に変更することになりました」

昨年は黄色と黒のテープの派手な規制で、今年は桜色の横断幕。区としては景観への配慮から変更したという説明だが、横断幕自体もやはりかなり強い存在感を放っている。安全対策としての必要性と、桜の名所としての景観。その両立の難しさがうかがえる。

さらに気になったのが、ベンチの封鎖だ。ロープが張られ、座れないようにしている理由は何なのだろうか。

「こちらは例年行なっている取り組みなのですが、どうしてもベンチを解放してしまうと、買ったものなどを座って食べる方が出てきます。そうなると、必然的に滞留の元になってしまうという判断から、このようにしました」

花見といえば、立ち止まって眺めたり、座って桜を見ながら飲食したりするイメージを持つ人も多いだろう。だが目黒川では、そうした楽しみ方そのものを抑える方向で安全対策が取られていることになる。

「滞留が起きてしまって、雑踏事故とかが起きてしまうのは区としては防ぎたいです。そういう意味でも、事故が起こらないように事前に対策をとっています」

一方で、こういった措置は近隣住民からの強い要望に押されて導入されたというわけではなく、あくまで区として事故防止の観点から判断していると強調した。

「花見をされに来られた人からは否定的なご意見ももちろんありますが、肯定的な意見もあります」

実際、歩行も困難なほどの混雑ぶりに「安全のためには仕方ない」という受け止めはあるだろう。だがその一方で、桜の風景に横断幕がかかり、橋の上では立ち止まれず、ベンチにも座れない。そうした状況を「やりすぎでは」と感じる人がいても不思議ではない。

マナーが良すぎた都内のお花見会場

こうした対策は来年以降も続いていくという。

「桜がある以上、人が集まりますし、来年いきなり人が来なくなるということはちょっと考えにくい。

来年以降も同様の対策を行なっていくことになると思います。ただ、具体的な対策については、地域の方も交えて協議して決めていっている状況にはありますので、今年と全く同じ対策を取るかどうかは、今の時点では申し上げられません」

ちなみに都内中心部では、浅草横の隅田川沿いにある隅田公園も桜まつり会場としてにぎわっている。こちらはシートを敷いて桜を見ながら飲み食いする人も多く、ごみの散乱が心配されそうな環境だが、印象はかなり違った。

夜、花見客が帰り始めた時間帯に現地を見てみると、ごみはほとんど落ちておらず、全体として驚くほどきれいに使われていた。大きなごみ集積場が用意されており、多くの来場者がきちんとそこに捨てているようだった。

もちろん、目黒川と隅田公園では、川沿いの構造も、歩道の幅も、人の流れも違う。単純比較はできない。それでも、中目黒の横断幕やベンチ封鎖を見たあとだと考えさせられる。人気スポットだから規制強化は当然、ではなく、場所の設計や運営、そして来訪者側のふるまいによって、守られる景色もあるはずだ。

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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