「17歳でステージ4の骨肉腫」自衛隊員になる夢を追いかけていた少年がTikTokで発信…フォロワー6500人が励まされる理由
「17歳でステージ4の骨肉腫」自衛隊員になる夢を追いかけていた少年がTikTokで発信…フォロワー6500人が励まされる理由

骨のがんである骨肉腫。自衛隊の最前線での活躍を夢見ていた17歳の高校生・ひゅうがさんは昨秋、骨肉腫(ステージ4)と診断された。

その翌日からTikTokで発信を始めた彼が、胸に抱いているもの――。(前後編の前編)

早く治して、早く学校に復帰しなきゃ

「左膝が痛いなと思ったのは昨年の6月末くらいでした」

と、自身の身体に生じた違和感から話し始めてくれたひゅうがさん。

「僕が通っていた高校は、陸上自衛隊の高等工科学校。部活で柔道をやっていましたし、『行軍』という重い荷物を背負い、銃を携行して、25kmをひたすら歩くという訓練もやっていたので、病気というよりは、『ケガかな?』ぐらいだと思いました。湿布を貼って様子をみていたんですが、なかなか治らない。整形外科に行ったのは、(昨年の)7月末でした」

初診の医師が下した診断は、筋肉損傷。処方されたのは湿布だったという。しかし、だんだんと夜も眠れないほどの痛みになり、どんどん悪化していった。8月末に別の整形外科を受診すると、(レントゲンを見て)『白いモヤモヤがある』と大学病院を紹介されたという。

「行ってみると『おそらく骨肉腫。だけど腫瘍には良性か悪性があるから、生検をしてみないと診断ができない』と言われ、その日一気にいろんな検査を受けました。生検のために入院もしました」

1週間後の9月4日、「ステージ4の骨肉腫」と診断された。

「この病気についてや治療方針など、医師からいろいろと説明されましたが、(同席した)家族も全然イメージできなくてポカンとしていたと思います。

僕が思ったことは『がんなんだ』くらい。骨肉腫って言葉は聞いたことはあったけど、1か月ぐらいで治るものかと勝手にイメージしていました。だから、いちばん気になったのは学校のこと。早く治して、早く学校に復帰しなきゃと思いました」

TikTokをきっかけに同じ病気の子と友達になれた

翌日、ひゅうがさんはTikTok(『17歳で骨肉腫になって今これ』)を開設。そのスピード感に驚くばかりだが、発信を始めようと思った理由は?

「(同居する)叔母から『SNSで何か発信してみたら?』と言われたからです。あと病院にいると、けっこう時間を持て余すんです」

ひゅうがさんのTikTokは、ティーンの流行りネタを取り入れたり、CANDY TUNEやCUTIE STREETなどの曲を踊ってみたり、かなりおちゃめで明るい。そして、時に病状についても発信している。

「基本的に、ただやりたいことをやってるだけですね(笑)。あとは、TikTokをきっかけに同じ病気の子と友達になれたことは、すごくよかったと思います」

開設から約半年、6500人強のフォロワーがいる。

「ノリで始めたから正直、こんなに続くと思っていなかったです。励ましのコメントもいただきますし、こんなにも応援してくれる人がいることにびっくりします。いちばんうれしかったのは、僕の投稿を見て『頑張れます』『勇気をもらいました』といったメッセージが届くこと。僕がなんとなくやっている投稿が、誰かの役に立っているんだと思うと、すごくうれしいです」

ひゅうがさんは『今年中にフォロワー1万人』という目標を掲げている。

「今はスマホだけで撮影しているんですが、Osmo Pocket 3(高性能ジンバルカメラ)とか撮影機材を充実させて、今よりもいい動画をアップできたいいなと思っています」

寄せられるのは温かなエールが圧倒的だが、なかには心無いコメントもある。

「画面上の人からの言葉なので、気にしてないです。きっと、そういう人って心に余裕がないんだと思うんです。普段はそういう人じゃなくても、自分が追い込まれると他人を憎んだり、攻撃したりすることもあると思うので」

小さなことにも幸せだと感じる

現在は18歳になっているひゅうがさんの、俯瞰したものの捉え方に驚かされる。しかも、抗がん剤の副作用に苦しんだり、未来への不安にさいなまれる中で、だ。ひゅうがさんの骨肉腫は神経に癒着しているため、人工関節の手術は難しいという。

「そこがいちばんショックでした。人工関節にできたら、自衛隊員への希望も持ち続けられたんじゃないかと思うので。僕の場合、肺や筋肉、脊髄、リンパ節などにも(がんが)転移しているので。

大腿骨切断手術を受けるためには、抗がん剤をストップしないといけない。なので、難しいところではあるんですけど……。ただ、僕は『餅は餅屋』だと思っているので、主治医の先生の言うことを信じて、治療を続けていくのみです」

冷静な受け答えを続けてくれるひゅうがさんだが、TikTokでは、

≪世の中には知らない方が幸せなこともある これは味わったことない人には絶対わからない感情≫

と無念さをにじませたこともある。

「やっぱり、自分がこういうふうになるとは思っていませんでしたし。僕は骨肉腫になって、初めて『生』というものに向き合った気がします。

今まで悩んでいたことって、すごくちっぽけなことだった。人間関係とか、些細なことでイラッとすることも多かったんですけど、別にどうでもいいことだった。すごくそう思いました。

今は『ご飯がおいしい』とか『天気がいい』とか、小さなことにも幸せだと感じることができるようになりました」

18歳の青年が今かみしめる些細な幸せ以上に、尊いものはない。彼は自分のためじゃなく他の誰かのために、身体の痛みをこらえながら、今日も動画を撮って光を届ける。

後編では在学時代の部活、自衛隊への想い、家族へ伝えたいことを聞いた。

取材・文/池谷百合子

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