相方の逮捕、活動休止…結成20周年のヒルクライムTOCが語る“それでも解散しなかった理由”「カッコいいままのヒルクライムでいなきゃダメ」
相方の逮捕、活動休止…結成20周年のヒルクライムTOCが語る“それでも解散しなかった理由”「カッコいいままのヒルクライムでいなきゃダメ」

今年結成20周年を迎えるHilcrhyme(以下、ヒルクライム)。2009年の『春夏秋冬』の大ヒットに続いて、その後も数々のヒット曲を生み出し、武道館ライブを満員にするなど順調な活動を行なっていた。

しかし2018年、突如DJ KATSUがヒルクライムを“脱退”することに。一人でヒルクライムを背負うことになったフロントマンのTOCは何を思うのか。

順風満帆な活動のなか突如起こった“悲劇”とDJ KATSUに対する思い

『春夏秋冬』の大ヒット以降も、4thシングル『大丈夫』がオリコンチャートTOP10にランクイン、続く5thシングル『ルーズリーフ』が、成宮寛貴主演のドラマ『ヤンキー君とメガネちゃん』(TBS)の主題歌に抜擢されるなど、順調に活動していたヒルクライム。

しかし2017年12月、相方のDJ KATSUが、大麻取締法違反の疑いで現行犯逮捕されるという悲劇が訪れる。

「KATSUの件を知ったのは、ソロの仕事で東京に向かっていた新幹線の中でした。

車内に流れているニュースのテロップに、突然“ヒルクライムの~”と見えて、『えっ』ってなって。最初はドッキリかなんかだと思うほど驚いたのを覚えています。

新潟から東京に向かうまで、途中で長いトンネルを通るんですけど、トンネルを通過している時は電波が届かないんですよね。

トンネルを抜けた後、携帯に大量の着信やらLINEの通知やらが届いていて、いろいろと混乱していました」

世間からはTOCに対する同情の声が多かったが、TOCは自身にも責任を感じていたという。

「ニュースに対するコメントを見ると、僕に対して“かわいそう”みたいな声もあったんですけど、自分はその反応が不思議で。

ヒルクライムは2人で活動していたし、ヒルクライムの一員として自分にも責任はあると思っていたので、取引先やファンなど各方面に迷惑をかけたことに対する反省や申し訳なさはもちろん感じていました」

また、DJ KATSUに対する当時の思いについて、こう語る。

「実際若くて才能もある仲間たちが、薬物などでダメになって潰れていった姿は何度も見てきた。

僕自身は音楽としてのヒップホップは好きでしたが、そういった違法な行為に対しては明確に“NO(ノー)”を突きつけていたので、ここで彼と僕とでは考え方が違うんだなと、はっきり感じたんです」

一人でもヒルクライムを続ける――TOCが決意した理由

騒動の直後からヒルクライムは無期限の活動休止となるが、翌年の9月にTOCの1人体制で復活を遂げる。

活動休止中にTOCは、DJ KATSUと二人きりで今後について話し合いを行なったという。

「二人組のユニットだったら普通は“解散”じゃないですか。けど彼は“脱退”という形を僕に申し出たんですね。

当時のKATSUの心境について深くはわからないので、あくまで憶測ですが、彼としてはおそらくヒルクライムを存続させて、僕に迷惑をかけないために脱退という言葉を選んだんじゃないかと解釈しています。

さらにKATSUが担当していたDJの仕事はトラックを作ること。でもトラックに関しては代わりのトラックメーカーから提供してもらえれば、僕自身は活動を続けられる状況だったんです。

そして所属事務所からは、僕のソロ名義での活動は変わらず続けることと、ヒルクライムがなるべく早く復活できるようにサポートするということを言われていました。同時にKATSUとの二人体制で続けることは事務所の立場上できないということも」

DJ KATSUの決断、事務所の意向、また一人になってもヒルクライムを続けられる可能性が残されていたこと――。

これらが重なり、TOCは自然とヒルクライムを一人で続けていくことに前向きになれたという。

2018年9月に行われた日比谷野外音楽堂での新体制後初となるライブステージでの心境について、TOCはこう振り返る。

「活動休止後、約10ヶ月ぶりとなるひさびさのライブだったので、とにかく楽しかったです。

チケットもありがたいことに完売しまして、ファンの皆さんがこれからの新しいヒルクライムも変わらず温かく受け入れてくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいでした。

印象的だったのが、ライブが終わった直後に雨が降り始めたこと。

観客のファンたちもいろいろな思いから涙を流していた方が多かったんですけど、なんだかそのときの雨と涙が重なっている気がして、すごく感動したのを覚えています」

また、この復活ライブの際に披露した新曲『Good Luck』では、元相方のDJ KATSUに対する想いを歌っている。

ヒルクライムとしては決別した二人だが、プライベートでは現在もお互いに顔を合わせているという。

ヒルクライムとして約12年近く共に活動してきたパートナーであるだけに、二人の間には“憎しみ”といったネガティブな感情はないという。

結成20周年を迎えたTOCが思い描くヒルクライムの“これから”

今年7月に結成20周年記念公演『朱ノ鷺(あけのさぎ) 2026』を控えているTOC。20周年目の意気込みや、心境を聞いてみた。

「自分が今44歳なので、人生の約半分をヒルクライムとして過ごしてきたのだと改めて思うと非常に感慨深いです。

僕のなかで結成20周年という年は、ヒルクライムとしての“物語”がひと区切りついた感じです。

7月の記念ライブでは、新しいヒルクライムの姿ももちろん準備していますが、メインとしてはやっぱりこれまでの20年の総括を、ファンの皆さんとできたらなと思っています」

また、これからのヒルクライムの姿についてこう語る。

「昔も今もメインのファン層は変わっていなくて、10代や20代の若い方が多いんです。

自分の音楽がリスナーの人たちにとっては“青春の1ページ”になるかもしれないということ、だからこそ大人になってから聴いても色褪せず、カッコいいままのヒルクライムでいなきゃダメなんだということは常に意識しています。

そして自分が若い頃に憧れていた大人って、いつまでも楽しむマインドを持っている人たちだったんです。

だから自分もこれからの時代の変化に合わせて、AIなどの新しいツールも使いながら、全力で楽しみながら音楽をやっていきたい。

ヒルクライムがこれからどう変わっていくのか、僕自身も楽しみなんです」

〈インタビュー前編『“生きてる実感”を求めたヒルクライムTOC、名曲「春夏秋冬」誕生の裏側』〉 

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio) 撮影/立松尚積

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