〈令和のオイルショック前夜か〉ナフサ価格1.6倍で100円ショップ崩壊の危機…韓国ではゴミ袋が品切れに
〈令和のオイルショック前夜か〉ナフサ価格1.6倍で100円ショップ崩壊の危機…韓国ではゴミ袋が品切れに

プラスチックや合成繊維などの原料となるナフサの価格が急上昇している。4月1日のナフサ1トン当たりの取引価格は917ドル(約14万5800円)で、2月27日の588ドル(約9万3500円)から1.6倍近くまで上がっている。

 

ナフサ価格の高騰は日用品や生活用品の価格を押し上げる可能性も高い。その煽りを受けそうなのが大量のプラスチック製品を扱う100円ショップだ。

韓国ではゴミ袋が品切れ状態に…

トランプ大統領は日本時間4月2日午前にアメリカ国民向けの演説を行なった。今後2~3週間でイランに攻撃を行なう可能性について言及し、「stone ages」(石器時代に戻す)など強硬な発言をしたが、サプライズはなく具体案に乏しい内容に終始した。

中東情勢の早期安定化への期待感が薄れ、2日午前の日経平均は1007円安。一方で演説を受けて、世界の原油価格の目安となる「3大原油指標」のひとつであるブレント原油の価格は一時5%以上の値上がりとなった。原油不足が、経済に深刻な打撃を与えるであろう未来を示唆している。

ナフサはガソリンに似た透明の液体で、石油製品の一つ。プラスチック、合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの原料になる。今や人々の生活に欠かすことのできないものだ。韓国ではナフサ不足を懸念した指定ゴミ袋の買い占め騒動が起こり、一部店頭で手に入りづらい状況が続いている。

1973年に日本を襲ったオイルショックでは、トイレットペーパーの買い占めが横行し、店頭から商品が消える事態に陥った。今の状況は“令和のオイルショック”を想起させるほどだ。

ナフサ価格高騰の影響を受けそうなのが100円ショップだ。プラスチックやゴム、ビニールを使った商品が多く、低価格で販売しているために原価率も高い傾向にあるからだ。ナフサ価格の高騰が続いた場合、価格転嫁せざるを得なくなる可能性も高い。

「ダイソー」や「キャンドゥ」、「ワッツ」といった大手100円ショップはすでに脱100円商品を多く扱うようになっていた。デフレ期を経て、中価格帯・高付加価値商品の比率を高めてきた。そんな中で100円にこだわってきたのが業界2位の「セリア」である。

業界トップの「ダイソー」が幅広い層をターゲットにしている一方で、「セリア」は比較的若い層をターゲットに絞り込んでいた。長きにわたって物価高に苦しむ若者たちの味方だったが、原油価格高騰という外部の脅威が迫ってきたのだ。

100円ショップの主要取引先の株価が堅調な理由

株式市場において、生活用品への価格転嫁が進むことへの懸念と期待感を示す興味深い現象が起こっている。セリアやキャンドゥ、ワッツの株価は軟調だが、ダイソーやセリアなど100円ショップ向けの日用品製造を手掛けるレックの株価が堅調なのだ。

レックは2月13日に発表した決算が好調で、株価は急上昇した。その後、中東情勢が緊迫化しても大きく値を崩すことはなかったのだ。

レックはメラミンスポンジ「激落ちくん」の大ヒットで知られる会社だが、プラスチックを使った低価格の日用品に強みがあり、1990年代にダイソーの運営元である大創産業の主要な取引先となった。

セリアも大口取引先の一つである。

仮にナフサ価格の高騰が続いて、レックがプラスチックや合成繊維などを使った商品の取引価格を引き上げなければならなくなった場合、利益も押し上げられる可能性が高い。市場は利益が増えることによる増配に期待しているのではないか。

レックの原価率は2023年度以降、70%を超える水準にある。インフレの影響をすでに受けていたのだ。ここに更なる原材料高が加わると、取引価格の改定も考えざるを得ないだろう。

セリアは2023年度から原価率が58%を超えるようになった。2022年度は56%である。やはり、インフレの影響を受けているのだ。仕入れ価格が上がった場合、価格転嫁をするべきか選択を迫られる可能性がある。

こうした状況は何もセリアに限ったことではない。キャンドゥの原価率は62%、ワッツも61%であり、両社の原価率はすでに6割を超えている。

キャンドゥとワッツはセリアよりも営業利益率が低く、原価が上がれば価格転嫁を進めざるを得ないのだ。

飲食においては牛丼店が典型的な例だが、安い商品を販売するブランドは値上げが客足に大きく影響する。中東情勢の緊迫化で100円ショップの株価が軒並み下がっているのは、消費減退を嫌気したものだろう。

4月から食料品の値上げが一斉に始まっていた

結局、ナフサ価格高騰の影響を受けるのは一般庶民である。

帝国データバンクによると、4月はマヨネーズやドレッシング、食用油、アルコール類など食料品の値上げは2800品目近かった。値上げ1回当たりの平均値上げ率は14%だという。2025年は値上げ疲れなどという言葉がよく聞かれたが、まだまだ上がっているのだ。

生活費を切り詰める中で、唯一の庶民の味方だったのが100円ショップだ。ディスカウントストアやドラッグストア、ホームセンターの日用品は安いとはいえ、100円ショップに比べればまだまだ割高。100円ショップが値上げした際の影響は大きい。

仮に100円ショップが商品の価格改定を次々と行なった場合、ディスカウントストアのほうが安かったという事態が頻発する可能性もある。消費者の間にその失望感が広がった際の集客への影響は計り知れない。

一刻も早い中東情勢の安定化を願うばかりだ。

取材・文/不破聡

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