「お父さん お母さんがいなくておなかが空いたら うちのラーメンたべにきてね いつでも無料だからね 子供だけです 店主」と貼り紙をしたのは、東京都足立区南花畑にある二郎系ラーメン『ラーメン ノックアウト』の店長・星野昌志さん(49歳)だ。材料高騰などあらゆる理由からラーメン店の閉業が相次ぐなか、子どもに向けた独自の大胆な食事支援を発信。
「バズ狙いじゃない」貼り紙の本当の理由
3月27日に店の窓に「子供だけラーメン無料」の貼り紙をしていることをX投稿した星野さん。その投稿は784万インプレッションと大注目された。
投稿には数日前に報道された「女子高生が米を万引きした」というニュースを受けて、いたたまれなくなった心境をつづったものだった。星野さんは言う。
「俺は朝6時半から仕込みしてるんですけど、ニュースで17歳の高校生が米5kgをスーパーから万引きして追いかけてきた従業員の足を蹴ったっていうのを見たんです。
女子高生が米万引きって世の中どうなってんだよって思ってさ。お金がなくて、食べ物を盗む子どもがいると心がえぐられるじゃないですか。今回の張り出しはそんな大それたことじゃないんですよ」
星野さんがニュースで見た事件はこのようなものだった。
3月25日正午頃、札幌市白石区のスーパーマーケットで女子高校生(17歳)が米1袋(販売価格4838円)を盗んだところを警備員が見つけて事務所に連れて行くも、逃走。その後、追いかけてきた従業員の足を蹴ったというものだった。
従業員が通報し駆けつけた警察官により事後強盗の疑いで逮捕された。星野さんは言う。
「べつにバズりたいと思って投稿したんじゃないよ。そんなの思ったこともない。実は貼り紙をしたのは投稿した3月27日よりもっと前のことなんですよ。
その前に大阪でシングルマザーが2人の子どもを放置して死なせちゃった事件をもとに作られた映画『子宮に沈める』を見て、たまんなくなっちゃってさ。
俺の住むこの街にも映画の中のような親子がいるかもしれない。どうしたら親子は助けられたのかって。俺ができることは、腹すかしたらラーメン食いに来いって言うくらいだから」
「俺自身が社会への恩返しするしかない」
とはいえ星野さんも自身の生活のための仕事で、その売り物である商品を無料で提供するには大きな覚悟が必要だろう。
「俺は若い頃に悪いことたくさんしたんですよ。自分が楽しいからとか、おもしろいからって理由で悪さして警察のお世話になったこともある。
そういう過去の悪さから自分を救い上げるためにできることって、俺自身が社会への恩返しするしかない。
自分の欲のために好き勝手やる大人いるでしょ。せめて俺は自分を救うための行動をしたいんだよね」
このラーメン店を何度も訪れるラーメンYouTuberのアカボシマシマシさんは言う。
「もともとこのお店は成人の日に20歳限定でラーメン1杯700円にサービスしたり、選挙の日に選挙に行こうキャンペーンを自主的に行なって投票済証提示でラーメン無料にしたりとサービス精神旺盛でした。
今回の『子供のみラーメン無料』と投稿してバズった際に誹謗中傷に対して荒くれた感じの投稿もしていましたが、ふだんの接客も二郎系の中でも丁寧で温和なんですよ」(アカボシマシマシ)
星野さんは『子供のみラーメン無料』と投稿後に起きたことをこう話した。
「ほとんどは温かいコメントでしたよ。『自分の店でもやります!』と言ってくれる店舗さんや、投稿した日に店に食べに来てくれたお客さんで1万円を寄付してくれた方もいた。俺は何度も『いらない』と言ったけど『受け取ってくれ』って何度も言ってくださって。
でも中には営業中に『何歳までですか』と何度も電話をかけてきたり、『偽善者』とか『売名』だとか言ってくる人もいましてね。人のやることに批判ばかりして、それでお前ら自分の人生変わるのかって思ってさ」
お客さんから受け取った1万円はもちろん無料サービスに使うのだという。子ども無料とは別にこんなサービスを考えた。
「2号店の店長ともかなり話し合って4月5日に『焼豚弁当』を無料配布することにしました」
「子どもたちにこの貼り紙が届くまでいつまでだってやりますよ」
星野さんは今後も何かしら食での支援に携わりたいのだという。
「これまでも東日本大震災や能登地震の際にも寄付したり、災害だけに限らずバレンタインの日にお菓子詰め放題サービスとかもやったりね。
ただ我々飲食店はどうしたって税金の関係もあるからさ、あまり勝手なことをバンバンできないわけですよ。
だから、たとえば飲食店が無料で食事を提供することで控除できる仕組みを作ってもらえないものなのかとかさ」
今回の貼り紙で子どもたちは食べに来たのだろうか。
「まだ認知はされてないみたいで肝心な子どもたちは来てないんだよね。
俺はラーメンで誰かの力になりたい。そうして誰かの力になることで自分の人生を救い上げていきたいんです」
「おなかが空いたら うちのラーメンたべにきてね」そんな声が届くことで救える命もあるかもしれない。星野さんの声が子どもたちに届くように願うばかりだ。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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