トランプ大統領の支持率が急落している。「MAGAが支えているから政権は安泰」という見方は根強いが、実態はまったく逆だ。
MAGAが支持しているから大統領は安全という認識は誤り
トランプ大統領の支持率が大幅に低下している。
世間では、熱狂的な支持層である「MAGA」がイラン攻撃を強力に後押ししているゆえに、大統領の足元は決して揺らいでいないという意見が存在する。
なお、MAGAとは「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」の略であり、トランプ大統領が掲げたスローガンに由来し、現在は米国第一主義を熱狂的に支持する保守層や政治運動を指す。
MAGAの支持は揺らいでいない――読者の中にも、ニュースメディアやインターネットの議論を通じて似たような主張を目にした経験があるかもしれない。MAGA層がイラン攻撃に非常に肯定的であるという事実はデータ上も間違いない。
しかし、MAGA層が支持しているから大統領は安全圏にいるという認識は完全に誤りである。事態は全くの逆方向に進んでおり、大統領は就任以来最大級の深刻な危機に直面している。
アメリカ全体の支持率は明確に下落を続けている
熱狂的な一部の層が支持を固める一方で、アメリカ全体の支持率は明確に下落を続けているからだ。大統領を強固に支えてきたはずの岩盤は、中心部だけを残して外側から確実に崩れ始めている。
本稿では、最新の報道や世論調査のデータを用いて、大統領が陥っている大ピンチの状態を一緒に丁寧に紐解いていきたい。
まず、国全体で大統領がいかに大きく支持を失っているかを確認しよう。
有事の際には、国民が国の指導者のもとに団結して支持率が急上昇する現象が起きやすい。しかし、現在のアメリカ社会に団結の気配は全く存在しない。
むしろ軍事行動自体が国民の不満を大きく高める結果を生んでいる。大手ニュースメディアのCNNは、数々の厳しい数値を報じている。
「イラン情勢の対応に関するトランプ大統領の支持率は33%で、全体支持率35%や外交政策36%を下回っている。司令官としての職務遂行支持率も33%で、1月の調査から8ポイント低下した。
イランでの米軍事行動に対するアメリカ人の広範な不支持は、戦争開始以降さらに強まっている。米軍事行動を『多少は支持する』と答えたのはわずか34%で、戦争直後のCNN調査から7ポイント減少し、不支持は66%に上昇した」(CNN、4月1日)
支持率33%という数字は極めて危険な水準
支持率33%という数字は、現職の指導者として極めて危険な水準である。国民の過半数が強い不満を抱えている状態では、新しい政策を前に進める政治的な力は完全に失われる。
有事であるにもかかわらず不支持が66%に達している事実は、一般の国民がイランへの攻撃にまったく納得していない明らかな証拠である。大統領の求心力は、目に見える形で急速に失われつつある。
CNNのようなリベラルな傾向を持つメディアが厳しい見方を示すのは当然だと考える読者もいるかもしれない。では、保守的な傾向を持ち、以前から大統領に好意的な報道を続けてきたメディアは、何を発信しているのだろうか。
「最新のFox News全国世論調査でトランプ大統領の支持率は41%、不支持59%となった。支持率のマイナス18ポイント差は前回調査から拡大した。最近の全国調査平均では支持率40%超え、不支持率50%台後半となっている。イラン戦争と急騰するガソリン価格がトランプ大統領の支持率を削っている」(Fox News、4月1日)
政治的な熱狂よりも、日々の生活費
保守メディアの調査においても、不支持が支持を大きく上回っている。特筆すべきは、支持率を削っている原因として「イラン戦争」と「急騰するガソリン価格」が挙げられている点である。
ホルムズ海峡の封鎖懸念は原油価格を押し上げ、市民の生活を直接的に脅かしている。車の燃料代が高騰すれば、人々の生活は急激に苦しくなる。
政治的な熱狂よりも、日々の生活費という現実的な痛みが人々の判断基準になっている。大統領は経済の悪化という罠にはまっている。
さらに、大学の研究機関が行った調査を見ると、状況の絶望的な側面が強調される。マサチューセッツ大学アマースト校が実施した調査は、現在の下落が一時的な現象ではない可能性を示唆している。
「UMass Amherstの全国世論調査で、ドナルド・トランプ大統領の支持率は33%に低下し、第2期政権で最低となった。
残酷という言葉で表現されるほど、調査結果は無惨な数値を示している。
NYT「共和党内の分断とMAGA層の孤立」
第2期政権で最低の支持率を記録したという事実は、かつて大統領を支えてきた消極的な支持層すらも見切りをつけ始めた証拠である。
政策を強行すればするほど有権者は離れていく。ガソリンスタンドで高い支払いを済ませるたびに、国民の頭には大統領への怒りが蓄積していく。
大統領の言葉は少数の熱狂的な支持者にしか響いていない。国民全体の生活を苦しめる政策を続ければ、政権を維持することは著しく困難になる。
話題を冒頭に触れたMAGA層の問題に戻そう。MAGA層がイラン攻撃を熱烈に支持している事実はデータにも表れている。だが、MAGA層の思考は、もはや一般の共和党員の意見すら代表していない。
大手新聞のニューヨーク・タイムズは、「共和党内の分断とMAGA層の孤立」という見出しで共和党内部で起きている深刻な分断を指摘している。
「最近のCBS News世論調査では、MAGA共和党員の92%がイランに対する軍事行動を支持したのに対し、非MAGA共和党員はわずか70%だった。イラン戦争の観点から見ると、伝統的共和党員がタカ派で、MAGA共和党員が戦慄するはずだった。
穏健な有権者が一斉に逃げ出している
熱狂的なMAGA層の92%が戦争を支持している一方で、MAGAを自認しない層の支持は低い水準にとどまっている。MAGA層は圧倒的に好戦的であり、共和党という枠組みの中でさえ浮いた存在になりつつある。
特定の過激な層の熱狂だけでは、広大な国をまとめることは不可能に近い。過激な支持層の意見ばかりを優遇した結果、穏健な有権者が一斉に逃げ出しているのが現在起きている現象の核心である。
最後に、共和党内部の崩壊を決定づける報道を紹介しよう。再びFox Newsの分析を参照する。味方であったはずの層が離れていく現象こそが、大統領にとって最大の致命傷となる。
「大統領の強固な支持基盤は、大統領と進行中の軍事行動に対して極めて強い支持を維持している。しかしながら、現在見られる支持率低下の大部分は、驚くべきことに共和党内部から生じている。具体的には、非MAGA共和党員と見なされる穏健な層からの支持離れが、全体の数字を大きく押し下げている要因となっている」(Fox News、4月1日)
圧倒的多数のアメリカ国民が大統領に明確なNO
外部からの批判であれば、対立を煽って味方を団結させる材料に使うことができる。だが、内部からの崩壊は防ぐのが非常に難しい。
以前大統領に投票した穏健な共和党員たちは、終わりの見えない戦争と、家計を押し潰すガソリン価格の高騰に耐えきれなくなっている。
政治の行方を決めるのは、大きな声を上げる熱狂的なファンではなく、静かに生活費の計算をしている穏健派の有権者たちである。大統領は、味方を自らの政策によって遠ざけてしまった。
総括しよう。MAGA層がイラン攻撃を強く支持しているという意見は事実を含んでいる。しかし、一部の熱狂的な支持をもってトランプ大統領の支持率は下がっていないと結論づけるのは、現実の数字から目を背ける行為に等しい。
データが冷酷に示している現実は、経済的な打撃と戦争の泥沼化への不安から、圧倒的多数のアメリカ国民が大統領に明確なNOを突きつけている姿である。
文/小倉健一 写真/shutterstock

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