雑誌「東京カレンダー」の麻布特集内の記事をきっかけに、SNSで「麻布令嬢」「“本物”の港区女子」として注目を集めたタレントの團遥香。三井財閥総帥・團琢磨を高祖父に、作曲家・團伊玖磨を祖父に持つ“名家の娘”として育ちながらも、決して家柄に縛られることのない自身の価値観と、「港区女子」について思うこととは。
「私、港区女子なんだよね」
──「麻布令嬢」「本物の港区女子」としてSNSでとんでもなくバズってましたね。
團遥香(以下同) 東京カレンダーさんに取り上げていただいたのをきっかけに、私の存在がXでバズってて……友達からもたくさん連絡が来ました。なかには「倒してくれてありがとう」と言ってきた子も(笑)。私、いったい何を倒したんでしょう?
Instagramのフォロワーも一気に増えました。きっとみなさん、「麻布令嬢の暮らし」みたいなものを覗けると期待してくださってると思うんですけど、別にそんな豪勢な生活をしているわけではないんですが……(笑)。
──今日お会いして思ったんですけど、いわゆる「港区女子」みたいなイメージとは全く違った印象を受けました。
本当に普通なんですよ! 「電車に乗るんですね」「こういう庶民派なご飯も食べるんですね」とかよく言われるんですけど、もちろん電車にも乗りますし、ごく普通に生活しています。
そもそも「港区女子」という言葉が出てきたとき、私はその意味をあまり知らなくて。昔、友達にふざけて「私、港区女子なんだよね」みたいなことを言ったら、「それ、あんまり言わない方がいいよ」って注意されてしまって(笑)。そこで初めて、あまり自分から口にしない方がいい言葉なんだと気づきました。
別にひけらかすつもりもなく、本当になんの気なしに言っていただけなんですけどね(笑)。
──東京カレンダーって、本来はなかなか行けないようなお店を紹介する雑誌じゃないですか。でも團さんが紹介していたのは、わりと手の届きやすいお店が多いですよね。
子どもの頃に家族で行ってたお店や、今もよく通うお店を紹介しました。どこも予算は単価1~2万円くらいですかね。だから「團さんしか知らない高級料理店を教えて」みたいに聞かれても、実は全然知らなくて。(麻布)十番には親戚も大勢住んでいるので、おすすめを聞いて行くことはよくあります。
昔から父も母も、気取ることを一切しない人なんですよ。おいしいと思ったら行く。それだけなんです。父なんて、一つの店を気に入った途端、一ヶ月毎日通ったりしてるみたいです。
芸能活動を始めたときの両親の反応は…
──ご自身の家系について、子どもの頃に家族から説明を受けることはあったんですか?
家族から説明されるというより、それが当たり前の世界だったんですよね。
幼い頃も、私立ではなく国立の学校に通っていたので、いわゆる「お嬢様学校」みたいな環境でもなかったんです。すごく自然な、わんぱくな子たちが集まるような学校だったので、自分のことを特別だと思う感覚があまりなくて。
ただ、祖父(團伊玖磨)の名前が教科書に載っていたり、音楽室に肖像画が飾られていたりするのを見て、「あ、普通の家ではないのかも」と思うことはありました。祖父が亡くなったときに、NHKのニュースで取り上げられていたのは衝撃でした。
──芸能活動を始めたとき、ご家族の反応はどうだったんですか?
母は最初から応援してくれました。母はずっと専業主婦だったんですけど、昔からずっと「女の子でも絶対に職を持ちなさい」と言っていたので、私が学生の頃から仕事をすることに対しても反対しませんでした。
ただ、父にはすごく言いづらかったですね。わりと亭主関白な家だったので、やっぱり怖い存在で……。大学生のときに『ZIP!』のレポーターとして出演してたんですけど、そこで初めて、私が芸能活動をしてることを知ったみたいです。
──お父様には伝えてなかったんですか。
そうなんです。父は普段ほとんどNHKしか見ないので、周りの知人から「娘さん、テレビ出てたよ」と言われて初めて知ったそうです。あとで「相談してくれなかったのは寂しかったんだけどね」と言われました。やっぱりちゃんと報告してほしかったんだと思います。
うちでは「代々同じ職についてはいけない」という家訓みたいなものがあって「同じ職業を継ぐのではなく、それぞれ違う職業でトップを目指しなさい」と幼い頃から伝えられてきました。
芸能の世界に飛び込むのも勇気が必要だったけど、むしろ父と同じ建築の仕事に進めと言われた方が、きっと100倍プレッシャーだったと思います。
──ご自身が活動を続けて行く上で、ご家族の影響も大きいんですね。
大きいと思います。うちの家族って、あまり他人と比較しないんです。「他の家ではこうなのに、なんでできないの」みたいなことを言われたことがなくて。父も母も、他人が何をしているかをそんなに気にしない人なんですよね。私も、自分を人と比較したことがほとんどないんです。
──比較や競争が当たり前の芸能界では、珍しい感覚かもしれません。
最初は、その「当たり前」に戸惑いました。芸能の仕事を始めた頃は、自分を前に出さなきゃいけないんだってことを知らなくて。
食事の場でも、「大人が話すものだから、私は聞いていればいい」と思っていたんです。そしたら事務所の方に「もっとしゃべった方がいい」「このままだと印象に残らないよ」と言われて。
お嬢様キャラから子どもの相棒へ
──家柄が先に注目されてしまうことへのやりづらさも?
ありましたね。自分では一度も「私はこういう家の人間です」って言ったことがないのに、いつの間にかそういう情報が一人歩きしてしまって……。バラエティ番組にたくさん出ていた時期は「お嬢様キャラ」を求められることも多かったです。
自分の中にはそんなに分かりやすいエピソードがあるわけでもないのに、「何を話せばいいんだろう」と苦しくなるときもありました。
──でも、その「作っていない」感じこそが、新鮮に映ったのかもしれません。
そうだったらうれしいです。それこそ「品」って、たぶん作るものじゃないんですよね。私が思う「品」って、きちんと挨拶をするとか、口に出してはいけないことが判断できるとか、そういう当たり前のことが自然にできることなんじゃないかなって思うんです。
それってきっと、親に教育されたというより、家庭の空気の中で自然と身についたものなんだと思います。
──2024年に結婚や出産を経て、ご自身のご家庭を持った今の生活はいかがですか?
子どもが生まれてから大きく変わりました。最初の半年くらいは、「母親ってこうあるべきなんだろうな」って、自分の中で勝手にすごく思い込んでいたんです。
でも、自分はそんなに完璧じゃないし、このまま完璧な母親になろうとしても無理だなって思って。だったら、子どもとは「相棒」みたいな関係でいた方がいいんじゃないかと思うようになりました。一緒に学んで、一緒に楽しんで、ダメなことだけ「ダメ」と言う。今はそういうスタイルの方が、自分には居心地がいいです。
──最後に、「麻布令嬢」として生活する上でいちばん心掛けていることはなんですか?
(笑)。ご機嫌でいること、かもしれないです。昔よりも自分に合う暮らし方とか、人との距離感とかをちゃんと選びたいと思うようになりました。家族から受け継いだものはたくさんあるけれど、それに縛られるんじゃなくて、自分の生活の中でちゃんと更新していきたい。その感覚は、仕事でも家庭でも大切にしていきたいですね。
取材・文/キムラ 撮影/杉山慶伍

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