「落ちたら死ぬかもしれないのに…」テトラポッドの上で子どもを遊ばせた投稿に批判続出…海上保安庁は「救助作業が困難となる」法令違反で処罰される可能性も
「落ちたら死ぬかもしれないのに…」テトラポッドの上で子どもを遊ばせた投稿に批判続出…海上保安庁は「救助作業が困難となる」法令違反で処罰される可能性も

海岸で波の力を弱め、護岸のために設置されるコンクリートブロック「消波ブロック」。テトラポッドという商品名でもおなじみだが、4月上旬、この消波ブロックの上で子どもを遊ばせたとする保護者のSNS投稿をめぐり、危険性を指摘する声が相次いだ。

意外と知られていない「消波ブロック」の役割やリスクについて、海上保安庁と専門家に話を聞いた。

「消波ブロックの不規則な配置による狭所での救助作業が困難となります」

「落ちたら死ぬかもしれないのに」
「テトラの隙間は『死の隙間』って言われるほど危険」
「落ちてはまったら浮き上がれない」

4月上旬、ある保護者がXに投稿した「危険な事でも挑戦させる事。テトラポットで1時間遊ぶ子達」という内容に対して、その危険性を指摘するコメントが相次いだ。

海の近くに住まない人にとっては間近で見る機会の少ない消波ブロック。そのユニークな形状について認識はしていても、役割や危険性については意外と知られていないのが実情だ。

消波ブロック周辺で発生している事故について、海上保安庁の担当者は次のように説明する。

「消波ブロック上や周辺で釣りをしている最中に、足元への不注意などにより海中転落する事故が毎年複数件発生しています」

同庁の資料によれば、「釣り中における海中転落事故」のうち、消波ブロック周辺で発生しているものは全体の12%を占めており、例年一定数の事故が発生している。

その危険性について同担当者は次のように続ける。

「一般論として、不安定かつ波で濡れている可能性のある足場なので、転落のリスクが考えられます。さらに救助活動においては、消波ブロックの不規則な配置による狭所での救助作業が困難となることなどが挙げられます。

消波ブロック周辺に限った話ではありませんが、釣りなどのマリンレジャーを行なう際は、『救命胴衣の着用』『単独行動を避ける』『連絡手段の確保』などを徹底いただくよう呼びかけを行なっています」

なお、消波ブロックの設置は自治体や港湾管理者が行なっており、立ち入り禁止や制限についても同様に管理されているという。

立ち入り禁止場所への侵入は「軽犯罪法違反」にあたる可能性も

「立ち入り禁止」とされることも多い消波ブロック設置場所。そこへ無断で立ち入る行為は「軽犯罪法違反」にあたり、法令により処罰される可能性がある。

広い範囲で立ち入りを制限しているある漁港の関係者は、「立ち入られるケースは多い」としたうえで、取り締まりの難しさについて次のように話す。

「侵入したところをカメラなどで記録していないと、警察も対応できません。警察が行為をその場で見た場合は、軽犯罪法違反で処罰しています」

立ち入りの多くは釣り人によるもので、件数は減っていないという。

「立ち入り禁止措置がまだ十分に進んでいないのが実情です。フェンスを設置しても容易に乗り越えられてしまうケースもあり、現在も課題として対策に取り組んでいます」

周知が十分に進んでいない消波ブロックのリスクについて、日本水難救済会の担当者は「消波ブロックは、波を弱めるために防波堤のへりなどに設置されるもので、もともと波の高い場所に置かれているものです」としたうえで、主に3つの危険性があると指摘する。

「(消波ブロックが設置される場所は)穏やかな波のときもありますが、一般的に高波が発生する可能性が高い場所です。その上に乗るということは、突然の高波にさらわれる危険性が高いということです。

2点目は、足が滑ったり、高波にさらわれたりして転落してしまった場合、下のブロックに頭などを打ち付けて、骨折や重篤なけがにつながるおそれがあります。

3点目は、ブロックのすきまにはまってしまうと、海上保安庁のヘリが上空から救助しようとしたり、あるいは巡視艇で海から近づこうとしてもアクセスできず、救助が極めて困難になる点です」

続けて、一見海が穏やかに見えても突然高波が押し寄せるケースがあると説明する。

「専門用語で『一発大波』と呼ばれる現象があります。例えば50センチ程度の波でも、いろいろな方向から寄せてきたものが重なり合ったタイミングで、その倍や3倍の波が発生することがあります。非常に怖い現象です。

『この波なら大丈夫だろう』と思っていても、突然、高波がドンと来てのまれてしまうことがあります。

もともとそうした高波が予想される場所に設置してあるのが消波ブロックです。

ですから『大丈夫』と思って上で遊んだり釣りをしたりしていると、そういう高波に飲まれて転落し、けがを負ったうえ救助も困難という状況になる。そういう危険があります」

「『何かが起こってからどうするか』では遅すぎます」

さらに、同担当者によれば、最近発生している海の事故はいずれも波浪注意報が発令されているなかで起こったものだという。

「最近でも、船の転覆や、ダイバー、SUP(スタンドアップパドル・海のスポーツの一種)のプレイヤーが流される事故が相次いでいますが、いずれのケースでも波浪注意報が出ていました。

『注意報だから、注意していれば大丈夫だろう』といった思い違いをしている方もいるのではないでしょうか。

例えば最近の辺野古の事故の場合でいえば、一般的に外洋の場合は波浪注意報が出ると2.5から3メートル程度の波が予想されます。

その高さの波を小型のボートが横から受ければ一度で転覆するおそれがありますし、SUPも同様です。『なぜ注意報が出ているのか』という意味を改めて認識していただきたいと思います。

子どもにワイルドな経験をさせたいという気持ちは理解できますが、それは何かあったときに救助できる体制が整っている場所で行なうことが大原則です」

最後に、担当者は改めて事故防止の重要性を強調した。

「海での事故は、転落や溺水が起こった後に『どうすれば助かるか』という対処法では、100%助かるということはありえません。だからこそ、事故をいかに未然に防ぐか。それが最も重要です。

消波ブロックについても同様で、そうした場所には立ち入らないことが最大の事故防止策です。『何かが起こってからどうするか』では遅すぎる――その点を強く訴えたいです」

海は常に危険と隣り合わせの場所だ。相次ぐ事故を教訓に、その危険性を正しく理解し、備えることが何より重要だ。消波ブロックの上には立ち入ってはならない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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