「鎌倉パスタ、食べ放題のパンが来ない」で大炎上… 本部の回答は? 『パスタ騒動』SNSで企業をさらすのは正義か、いじめか
「鎌倉パスタ、食べ放題のパンが来ない」で大炎上… 本部の回答は? 『パスタ騒動』SNSで企業をさらすのは正義か、いじめか

企業や運営への不満を、直接問い合わせるのではなく、まずSNSに書き込んで拡散する――そんな流れが、すっかり当たり前になってきた。飲食チェーン「鎌倉パスタ」も先日、その波の当事者となった。

「面白投稿」からガチの不満が拡散へ

鎌倉パスタで「パン食べ放題」を頼んだのに、肝心のパンがなかなか来ない――。そんな不満が、3月末ごろからX上で一気に拡散された。

発端のひとつとなった投稿は、鎌倉パスタを訪れた利用者が、焼き立てパンがテーブルに配られる間隔があまりに空きすぎたため、同行者が店員に「あの、もう、パンは、2度と食べられないですか?」と、大げさな質問をしてしまったという笑えるエピソードだ。

ただ、これが7万以上の「いいね」、2300万以上のインプレッションを獲得すると、これに続くように、同店に対する本気の不満が一気に書き込まれる形となった。

「店員に頼んでもパンが1度も出てこなかったことある」
「食べ放題なのに全然食べ放題ではなかった」
「昔から同じことが言われているのに改善されていない」

といった投稿が次々に現れた。

中には、店員がテーブルを巡回してパンを配る方式の店舗で、「巡回ルートが固定されていて、絶対に回って来ない席があるように感じた」といった声まであり、単なる個人的な不満というより、サービス設計そのものへの疑問に近い広がり方を見せた。

もちろん、すべての利用者が不満を抱いていたわけではない。鎌倉パスタをよく利用するという人の中には、「自分の近所の店舗では問題なくパンが来る」「16個くらい余裕で食べている」といった声もあった。

だが、こうした“問題なく利用できた”という投稿は、不満の声ほどには拡散されにくい。結果として、強い不快感を伴う体験談が、より目立つ形で広がっていった。

そして4月上旬、今度は別の方向から注目を集める投稿が現れた。

「悲壮な顔をした店員さんが、5分に1回くらいのペースで『パンはいかがですか?』と山盛りのパンを抱えてやってきた」という体験談である。ネット上では、炎上を受けて店舗側が火消しのような対応を迫られ、現場にしわ寄せがいっているのではないかと同情する声も上がった。

ただその一方で、同じ時期にも「相変わらずパンが全然来なかった」という投稿はあり、体験が一様に改善されたわけでもなさそうだ。この数日、SNS上では「鎌倉パスタ」が、まるで不祥事を起こした企業のように、一挙手一投足を観察される状態になっていた。

鎌倉パスタの公式回答「把握している」

そこで、鎌倉パスタの運営側はこの一連の動きをどう認識しているのか、取材を申し込んだ。

まず、株式会社鎌倉パスタの営業部担当者は、SNS上で「なかなか回ってこない」といった声が投稿・拡散されている事実について、「把握している」と回答。そのうえで、「これらの声は真摯に受け止めており、店舗の状況について点検を行なうとともに、再発防止に向けた確認・改善を進めております」とした。

ただし、直近でSNS上の反響を受け、新たに運用を変更した事実はないという。会社側は「従来より、すべてのお客様に十分にパンをお楽しみいただけるよう、常に良好な状態での運営体制および巡回・パンサービスに関する指示を店舗へ行なっております」と説明し、「今回のSNS上での事案を受けて、新たに運用を変更したという事実はございません」と回答した。

また、もし「パンが来ない」「巡回が少ない」と感じる場面に遭遇した場合については、そもそも、そのような事態が生じないよう運営を行なっているとしたうえで、万が一遭遇した場合は「お近くの店員までお声がけいただけましたら、優先してお席までパンをお持ちいたします」としている。

つまり、会社としては一連の不満の拡散は把握しつつも、“炎上を受けて急にマニュアルを変えた”という見方は否定していることになる。SNSでは「急に回ってくるようになった」と受け止めた人もいたようだが、少なくとも運営側の説明はそうではない。

では実際の店舗体験はどうなのか。筆者も、SNSで話題になった後の4月上旬、都内の鎌倉パスタを訪れてみた。

平日の20時30分過ぎ、店内にいた先客は2組ほど。

比較的落ち着いた時間帯だった。訪れたのは、店員がテーブルを巡回して配る方式ではなく、客が自分で取りに行くセルフサービス式の店舗だ。

パン食べ放題セットを注文すると、パン台には各種のミニパンがしっかり並んでいた。時間帯的に、残り物で冷め切っているのではないかとも思ったが、実際には少し温かさが残っており、食感も軽くてサクサクしている。

しかも驚いたのはその後だ。筆者たちの後に来た客はほとんどいなかったにもかかわらず、新しい焼きたてのパンが追加投入されたのである。小さなメロンパンやよもぎパンが、それぞれ10個前後は並ぶほどの量だった。パンがないどころか、むしろ、客数が少なくても、できるだけ焼きたてを切らさないようにしている印象を受けた。

企業への不満をSNSで書き込むのが当たり前の時代に

加えて、滞在中には店員が10分に1回ほどパンのストックを確認しに来ていた。これがもともとの通常運用なのか、あるいは最近のSNS上の騒動を受けて現場レベルで気を配っていたのかまでは分からない。ただ、少なくとも筆者が訪れた店舗では、「パンが来ない」といった不満は生まれにくく、むしろサービスの丁寧さが際立っていた。

そもそも、「鎌倉パスタ」が今回SNSで炎上した点も、その真偽は不明だ。

元々の投稿主に告発の意図はないだろうし、実際に不快な思いをした人がいたのも事実だとしても、約200店舗ある中の一部店舗、あるいは特定の時間帯での体験が強く拡散されることで、それがあたかも全国どこでも日常的に起きている問題であるかのように受け取られてしまった可能性もある。

店舗運営としては、たとえ一度でも「パンが来ない」という状態を起こしてはならない、という考え方はあるだろう。だが、SNSで拡散されることで、その一例がブランド全体の印象を決定づけてしまうリスクは、あまりにも大きい。

そして今や、企業や運営が十分に対応してくれないと感じたとき、人はまずSNSに訴えるようになっている。しかも、それが“成功体験”として共有されつつある。

たとえば最近も、メルカリなどでは、個別に問い合わせても動かなかった案件が、SNSで大きく拡散されると急に対応が進んだように見えるケースがたびたび話題になる。利用者からすれば、「普通に言っても変わらないなら、可視化するしかない」という発想になるのは自然だろう。

だが一方で、以前ならそこまで大ごとにならなかったかもしれないオペレーションミスや一部店舗の不備が、SNSでさらされ、不特定多数から集中砲火を浴びる光景は、どこか企業や現場への“いじめ”のようにも見えてしまう。

声を上げることは必要だ。企業に改善を求めることも当然だ。だが、「SNSでさらして動かす」ことが半ば前提の社会になっていくことに、どこか居心地の悪さを覚えるのもまた事実である。

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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