「親にやめておけと言われた」兵庫県職員採用で辞退率58.9%の異常…背景に知事告発問題と組織不信、検察“クロ認定”の側近は今も要職に
「親にやめておけと言われた」兵庫県職員採用で辞退率58.9%の異常…背景に知事告発問題と組織不信、検察“クロ認定”の側近は今も要職に

過去のパワハラが“認定”された斎藤元彦知事がいる兵庫県で、採用試験合格者の6割近くが入庁を拒み、別の自治体や企業に流れた。さらに斎藤県政は県債も自由に発行できない財政危機が深刻化。

知事を告発した元県民局長(故人)の個人情報を漏えいし、検察が地方公務員法違反罪が適用できると認めた知事の元側近が今も要職に居続ける異様な状況の中、県庁内では県職員の必死の抵抗が続いている。

「辞退率をふまえて多めに合格を出している」

2024年4月に斎藤知事のパワハラなどが問題になった後、兵庫県では25年4月の大卒程度の総合事務職採用で、辞退率が46.0%と、前年より20ポイント以上跳ね上がった。採用方式の変更があったため単純な比較はできないが、急上昇と言えるだろう。

今春の採用の現場はさらにひどい状態で、合格者209人のうち入庁したのは86人だけ。じつに123人に逃げられ、辞退率は58.9%に達している。

 4月9日の定例記者会見で原因を聞かれた斎藤知事は、

「辞退率をふまえて多めに合格を出している。そういった影響から辞退率が増えたと考えている」と回答するなど、ナゾの分析をしてみせた。

地元の関西テレビは兵庫県内の大学生協の話として、知事告発問題の混乱を見た学生本人が兵庫県への⼊庁に不安を訴えたり、親に「やめておけ」「他の所にしておけ」と説得されたりするケースが⽬⽴つ、と伝えている。

在阪記者も、

「職場トップの異常な行動を告発したらつるし上げられて死に追い込まれて……。しかもその中心になって追い込んだ人間を今も県上層部に置いておく。そんな組織に自分の子どもを入れたくないと思う人を責められないでしょう」

と評する。

そんな兵庫県庁の異常事態は、現在進行形だ。

兵庫県では2024年3月、当時の県民局長Aさんが斎藤知事を告発する文書を県警や県議に送ったことで、知事のパワハラが露呈した。

知事の命令を受けた側近グループに特定されたAさんは懲戒処分を受ける。

「それだけではありません。知事の右腕だった当時の総務部長・井ノ本知明氏は、調査過程で入手したAさんのプライベートな書類を持ち歩いて複数の県議に見せて回りました。Aさんをおとしめ、告発には信用性がないと吹いて回る目的だったとみられます」(地元記者)

井ノ本氏の漏えいの後、Aさんは2024年7月に自死。同年11月に行なわれた知事選では「斎藤知事を応援する」と言って出馬し“2馬力選挙”を展開したNHK党党首の立花孝志被告(別の自死した兵庫県議への名誉棄損罪で逮捕・起訴)がデマを吹聴し、Aさんは亡くなってもなお攻撃され続けた。

井ノ本氏は停職3か月の処分の後、県競馬組合の副管理者に…

県が設置した第三者委員会は、斎藤知事らが行なった告発者探しとAさんの処分はいずれも公益通報者保護法違反と断定。さらに井ノ本氏は県議への情報漏えいを「斎藤知事と片山安孝副知事(当時)の指示で行なった」と県当局に供述している。

「神戸地検は井ノ本氏の行為を地方公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで捜査し、3月下旬に漏えいの疑いが証拠上認定できると結論づけました。しかし起訴して裁判になればAさんのプライバシーが明らかにされる影響が大きいとして、起訴猶予としました。斎藤、片山両氏は嫌疑が“不十分”だとして不起訴にしました」(在阪記者)

検察が“クロ”と認定した井ノ本氏は今も県の要職にいる。

「井ノ本氏はこれだけのことをしながら県は停職3か月の処分にとどめ、いま彼は県競馬組合の副管理者というポストにいます。何があっても井ノ本氏は切らないとの斎藤知事の意志の表れだと受け止められています」(県議会関係者)

斎藤県政の問題はこれだけではない。県民生活に深刻な影響を及ぼす、財政運営の失敗も隠せなくなってきている。

「兵庫県はことし8月から国の許可なしには県債発行ができない『起債許可団体』に転落する見通しです。県収入に対する借金返済の割合が過去3年平均で18%を超えた要注意の自治体に適用される制度で、他には北海道と新潟県、夕張市(北海道)しかありません」(県関係者)

このうち新潟県は「2038年度に起債制限を脱すべく財政計画を立て、予定通り進めている」(同県担当者)状態だ。本州にあって関西経済圏の一角を占める兵庫県が、経済活動の環境で本州よりハンデを負う北海道と並んで “財政運営失格”の烙印をおされたことになる。

しかも兵庫県は26年度から33年度までの8年間の収支不足が2100億円に達する予測であることを、2月になって初めて公表。起債許可団体から抜け出せる見通しはまったく立っていない。

「兵庫県は斎藤知事の主導で大阪・関西万博に計45億円も支出し、大阪府以外では突出していました。そんなことにカネを使ってる場合ではなかった」と在阪記者は指摘する。

中堅や幹部職員が続々と退職し神戸市や尼崎市へ

今年3月、県職員の組織や仕事への満足度や期待度を調べた県の調査で、64の調査項目のうち「首長に対する信頼度」が最も低く、兵庫県庁の「組織の弱み」と分析されていた、と地元神戸新聞が報じた。

複数の記者や県関係者によると、実際に中堅や幹部職員が続々と退職し神戸市や尼崎市などへ流出しているという。

「この調査が示すように、正当な人事や財政運営が行なわれていないと考える多くの県職員は知事を信頼していません。現職の職員がトップを信頼できない組織に入ることをためらう人が多いのは確かでしょう。

でも報じられた調査は県が非公表を前提に行ない、斎藤知事に恥ずかしい結果が出たのでなおさら闇に葬るつもりだったはずです。

にもかかわらず調査結果の全体が神戸新聞にリークされたことは職員らが陰で危険を顧みず抵抗を続けている証です。まだ兵庫県を立て直せると信じてがんばっている人がいることも確かなんです」(同前)

県議会関係者の願いが届き、県政が正常化される日はくるのだろうか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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