2022年北京五輪。スノーボード男子ハーフパイプの決勝で金メダルを獲得した平野歩夢のもとへ、一人の選手が歩み寄った。

米国のショーン・ホワイト。3度の金メダルに輝いたレジェンドは、この大会で4位。現役引退を表明していた35歳は、平野を抱きしめて祝福した。長年のライバルが、競技の未来を託す瞬間だった。

【画像】【スノーボード】平野歩夢とショーン・ホワイト 宿命のライバルがつないだバトン

2人が激突したのは、2018年平昌五輪。決勝2回目、平野は縦2回転・横4回転の「ダブルコーク1440」の連続技を決めた。95.25点でトップに躍り出る。

しかし最終滑走のホワイトが、同じ大技で応酬。97.75点をマークして逆転した。平野は銀メダル。わずか2.50点差の激闘は、今も語り草となっている。

平野にとってホワイトは「いつもチャレンジを見せてくれる存在」。

2006年トリノ、2010年バンクーバーで金メダル。数々のオリジナル技を編み出し、競技の魅力を押し上げてきたカリスマだった。

北京五輪に向けて、平野は新たな大技に挑んだ。縦3回転・横4回転の「トリプルコーク1440」。極めて難度の高い大技を、異常なほど練り込んだ。

決勝2回目、トリプルコークを含む完璧な滑りを見せた。しかし点数は91.75点。2位のスコット・ジェームズを下回る採点に、明らかな疑問符が付いた。

2回目の採点に疑問を感じながらも、平野は3回目に集中した。同じ構成で臨み、磨き上げた技を完璧に決める。96.00点。悲願の金メダルを獲得した瞬間、ホワイトは平野のもとへ駆け寄った。

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ホワイトにとって北京は5度目の五輪。膝や腰に古傷を抱えながら、最後まで戦い抜いた。滑走を終えると、両目を潤ませながら笑顔で手を振る。充実感に満ちた表情だった。

決勝後、ホワイトは平野を両手で抱き締め、さらに左手で頭をなでて祝福した。独創的な技で競技の発展に貢献してきた先駆者は、この大会限りで引退。一つの時代が幕を閉じた。

一方、平野の挑戦は続いている。北京から4年。27歳となった平野は、ミラノ・コルティナ五輪に臨む。後輩の台頭もあり、かつてのような絶対的な立場ではない。それでも、ホワイトから受け継いだ魂を胸に、新たな舞台へ向かう。

レジェンドが託した夢の続きを、平野が滑る。

文:SPORTS BULL(スポーツブル)編集部
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