36協定見直しで残業規制へ 「36協定」と「特別条項」の問題点を振り返る

36協定見直しで残業規制へ 「36協定」と「特別条項」の問題点を振り返る

9月7日、政府が「36協定」の運用を見直して残業時間に上限を設定する検討に入ったとマスコミ各社が報じた。長時間労働が、少子化や男性の家庭参加を阻む原因になっているとし、上限を超える残業は原則禁止し、罰則規定の新設を含めて具体化を図る内容が盛り込まれる見込み。これを受けての一連のニュースと世論をまとめた。

NO残業な世の中へ?気になる36協定の見直し内容

日本政府が時間外労働見直しのため、労働基準法の「36協定」の運用を見直し、1ヶ月の残業時間に上限を設定すると読売新聞が報じた。これにより上限を超える残業を原則禁止し、罰則規定を設けるなど規制を強化する方向へ舵が切られることになると言われている。

労働基準法には「1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と定められている。しかし時間外労働協定(36協定)を定めて届け出れば、法定時間を超える労働が認められる。36協定には延長時間の限度について月45時間、年360時間など基準はあるものの強制力はなく、労働時間を際限なく伸ばすことができると指摘されていた。こうした甘さを打開できるのかという点についても、世間から高い注目を集めている。

時間外労働を合法的に課すことができる36(サブロク)協定とは一体なにか

今回政府が見直しを行うのは、労働基準法の「36(サブロク)協定」。時間外労働を合法的に課すことができる制度と言われており、以前から問題視されていた。

そもそも、労働基準法では労働時間の上限が週40時間、1日8時間と定められている。しかし企業と労働組合が協定を結べば、上限を超える残業や休日出勤ができる。これが協定の内容でそれが労基法36条に記載されているため、36協定と呼ばれている。
この協定の影響で、労働時間の上限の週40時間、1日8時間を超えて働いても36協定が適用されていれば違法性をなくすことができる。

ア 実際、上限を超えて働く人ばかりよね?
A 上限を超えたら違反(いはん)というのが原則だけど、この協定によって違反でなくなる。厚生労働省によると、事業場のうち過半数が協定を結んでいる。大企業では9割を超えるんだ。
出典:(いちからわかる!)長時間労働の対策に政府が乗り出すって? -朝日新聞デジタル
労働時間を伸ばすことにより、生産物や成果物を生み出せると考える企業にとっては欠かせない協定であるものの、合法的に社員に労働を課すことができるため「長時間労働を助長させる弊害になっているのでは」との見方もある制度だ。

ここにも罠が……特別条項付き36協定とは

通常、36協定を締結しても1ヶ月45時間が残業の上限として厚生労働省によって定められている。しかし、特別条項付き36協定を労働者代表との間に締結させ用いることで限度時間を超えることが可能なのだ。

無茶苦茶なようにも思えるが、適用可能な条件にはいくつかの厳格な決まりがある。

導入に当たっては、次の要件を満たしていることが必要です。
1:原則となる延長時間(限度時間以内の時間)を定めること。
2:限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない“特別の事情”をできるだけ具体的に定めること。
3:一定期間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続を、協議、通告、その他具体的に定めること。
4:限度時間を超える一定の時間(延長時間)を定めること。
出典:特別条項付き36協定-就業規則変更作成センター

「臨時的」であるかが「特別な事情」に適する条件なのだが、非常に曖昧となっている。いずれにしても、36協定が見直されたとしてもこの特別条項も見直されないと本質的な改善は難しいと見られている。

政府が36協定の見直しに至った背景には「一億総活躍社会」実現のため

そもそもなぜ、ここにきて安部首相をはじめ政府は36協定の見直しを始めたのだろうか。それは、安部首相が掲げる「1億総活躍社会」の実現のためだ。

長時間労働が少子化や、男性の家庭参加を阻む原因となっているとして、月内にも発足する関係閣僚と有識者の「働き方改革実現会議」(議長・安倍首相)で詳細な制度設計を議論する。
出典:政府が残業規制を強化へ…上限設定、罰則も検討-YOMIURI ONLINE

ここでも「少子化」や「働き方改革」といった用語が出ている通り、残業の分を家族で過ごす時間に充てることでより男性も子育てにコミットできるような社会を作る狙いがある。他にも長い残業は、心身ともに疲弊させ鬱病や時には自殺願望まで引き起こす原因にもなるとも言われており、働きやすい世の中実現のためには「長すぎる残業は廃止すべき」という考えも含まれているよう。

「サービス残業を増やすだけ」 36協定見直しに冷ややかなネット上の反応まとめ

一体、政府が今回始めた36協定の見直しによる残業規制への働きがけを世論はどう見ているのだろう。
ネット上の反応をまとめてみた。









協定の見直しよりも「残業代支払いの義務」や「社内環境(雰囲気)改善」を求めるような意見も。





Twitterに挙げられているの意見をみるだけでも今の日本の働き方を巡る問題が非常に複雑であることが分かる。皆が働きやすさを覚えるような素敵な未来はやってくるのか、今後の政府の動きに注目が集まる。

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