「池のコイが飛び跳ねると雨が降る」を検証してみた
「しーん」……飛び跳ねる気配ナシ
今年の秋はとても暖かく安定した晴れの日が多かったが、ここ最近は周期的に天気が崩れることが多くなってきた。こんなとき、人間は天気予報が欠かせないわけだが、動物たちは天気が崩れることを事前に自ら察知しているという噂を耳にした。
ナマズの地震予報は有名だが、天気予報ができる生き物たちがいるらしいのだ。

調べてみると、天気に関することわざで動物や植物、昆虫などに関係するものは意外に多い。よく知られているものとしては「ツバメが低く飛ぶと雨」、「蚊柱がたつと雨」、「雨カエルが鳴き出すと雨」などがある。
このようなことわざは、低気圧が接近してきて雨が近くなると暖かい南風が吹き始めることが原因と言われている。その暖かく湿った空気の流入による気温や湿度の変化を、地上にいる動物や昆虫などが敏感に感じとって反応しているのだ。人間にはわからないくらいの変化も、ずっと屋外で暮らしている生き物にとっては大きな変化に感じられるのだろう。
でも人間だって、台風の前なんかは、ナマ暖かい風に「来るぞー」っていう気配を感じられる。神経を研ぎ澄ませれば天気図なんかなくても予報できるのかもしれない。

ただひとつ、どうしても理由がわからないことわざがある。「池でコイが飛び跳ねると雨」というもの。気象予報士の私だが、どうも雨となる所以がイマイチピンとこない。低気圧による南風が吹くという理論は、池の中の世界のことなので通用しなさそう。
気温が変動しても水温はそんなに変わらないはずだし、湿気がどうのこうのという訳でもなさそうである。

科学的な検証に行き詰ったので、とりあえず日本海に低気圧が進んでくると独自に予想したある日、近くの公園にあるコイが泳ぐ池に行き一日ずっと池の様子を見てみることにした。レジャーシートにお弁当・水筒に暖かいお茶を入れて、コイが跳ねた瞬間の記録用デジカメと、天気図のチェックにPDAを持参し準備は万全。HPの速報天気図と雲画像をちょくちょくチェックし、実際に見える雲の様子などもチェック、南風が徐々に強まってきているように感じ間違いなく天気は下り坂。
期待は高まるが、池のコイはなんら飛び跳ねる様子も見せずただ黙々と池の中を優雅に泳ぐのみ。それから待つこと数時間、弁当も食べお茶も全部飲み干してすっかり飽き飽き……。
しかし、その後もまったくコイは飛び跳ねる気配すら感じさせず、調査は終了した。

空しさとともに、まあこんなもんだと思いつつ空を見上げてみるとカラスが何羽も集まって乱れとんでいることに気づく。ああ、確か「カラスが乱れ舞うは雨の兆し」ということわざもあった。カラスが南風に乗って遊んでいるのである。その後、数時間経って、本当に雨が降り出してきた。こちらの現象が見られただけでもヨシとしようじゃないか。
どなたか、コイが飛び跳ねる理由、知りませんか?
(リップカレント)