2011年5月8日(日)、今年も母の日がやってくる。
母の日を目前に、赤いカーネーションの装飾で彩られるのは、キッチン用品や婦人用品の売り場だけではない。
お菓子売り場もそのひとつだ。

母の日にチョコレートを贈る「母の日 ガーナ」のキャンペーンが、今年で11年目を迎える。2001年にスタートしたこのキャンペーンは、多くの消費者からの共感を呼び、ガーナチョコレートは、ロッテが扱うお菓子の中でもトップの売上を誇る商品となった。

この時期、ガーナチョコレートのパッケージを裏返すと、ある写真が印刷されていることに気づく。自転車に乗ったアフリカ人らしき男女が、カメラにむかってにっこりと笑いかけている写真だ。
このたった1枚の写真に、「チョコレート」と「母の日」の、切っても切れない深い歴史が刻まれているのだという。
早速、株式会社ロッテのチョコレート商品開発担当、田所さんにくわしくお話をうかがった。

「ガーナチョコレートのパッケージが、カーネーションの花のように真っ赤であるということから、母の日に感謝の気持ちを込めてチョコレートを贈ろうというキャンペーンを始めました。ご存知の通り、ガーナは、1枚100円の板チョコレートです。小さい子どもでもお母さんにプレゼントできるように、との願いをこめてスタートしました」
はじめは小さなエリアからの試みだったが、毎年キャンペーンを続けていくうちに、小さいお子さんを持つお母さんたちから、喜びの声が届くようになった。

そんな折、カカオの産地であるガーナ共和国において、母親となる女性たちが、妊娠や出産によって命を落としているという問題を知った。
「ガーナをはじめとする途上国では、3つの遅れがあると言います。

1つめは、判断の遅れ。教育が不十分と言うこともあって、妊婦さんの命に危険が迫っても、なかなか医者に連れて行こうと判断することができません。そして2つめに、アクセスの遅れ。農村部から医者のいるクリニックまでは、たいへんな長距離を移動しなければなりません。そして最後に、医療の遅れ。もしクリニックに辿り着けたとしても、電気もない、水もない。
医者の数も、医療の設備も十分でない、という状況です。
こうした3つの遅れによって、多くの女性が妊娠・出産によって命を落としてしまいます。何とかこの状況変える手助けができないかと考えました」

これまで日本国内のお母さんを笑顔にしてきた「母の日 ガーナ」キャンペーンは、海を越え、赤道を越えて、「世界のお母さんを笑顔にする」チョコレート、というコンセプトに跳躍することとなった。
2008年より、ガーナチョコレートの売上の一部は、国際協力NGOジョイセフを通じて、再生自転車を寄贈するための海外輸送費に役立てられている。その自転車はガーナのお母さんたちの「足」となり、また保健推進員の保健教育普及活動にも活かされている。

一見、関係のないように見える「母の日」と「チョコレート」、そして、「アフリカのお母さん」。
その3つには、お菓子をつくる企業ならではの、「お菓子こそ、人を笑顔にするものでありたい」という思いがつらぬかれている。
「お菓子の魅力はおいしさだけではなく、人の気持ちを和ましたり、人と人を繋いだり、そういったところにあると思っています」

お菓子は、お腹を満たすためだけに食べるものではない。だからこそ、心を満たす要素がいっぱい詰まっていると言えるのではないだろうか。
そうしたお菓子のよさに対する姿勢が、アフリカのお母さんへの自転車寄贈という取り組みにつながっている。ロッテでは、東日本大震災を受けて、「キモチつながるプロジェクト」もスタートしたばかり。
「お菓子だけでは単なる“モノ”ですが、お菓子を通して、お母さんが笑顔になる、みんなが笑顔になる。
そうした“コト”にもっと注目していきたいと思っています」

ぜひ一度、近くのお菓子売り場で、チョコレートのパッケージを裏返してみてほしい。こんな小さなところにも、お菓子をつくる企業ならではのこだわりがにじみ出ている。
(木本一花)