富士山の麓に広がる山梨県鳴沢村はキャベツをはじめとする高原野菜が特産品。とはいえ、そのキャベツでワインを作ろうという発想は、さすがワイン大国というべきか。
しかもこの商品、20~30年も前から販売していると聞いてビックリ。たしかに富士山とキャベツを描いたレトロなパッケージに歴史を感じる。
商品を販売するJA鳴沢村の担当者によれば、当時、キャベツが豊作で価格が大暴落し、出荷せずに大量に処分したことがあった。そこで、キャベツを使って何かできないか? と考えたのがきっかけだそう。
「鳴沢村はキャベツをはじめ、高原野菜が特産ですが、出荷時期は限られます。年間を通じて売れる特産品を作りたいとも思っていました」
そこで目を付けたのがワイン。当時は世間がワインブームということもあり、勝沼のメーカーに製造を依頼。きゃべつわいんが誕生した。近ごろは最盛期ほどの盛り上がりはないものの、それでも細く長く、売れ続けているようだ。
きゃべつわいんは、鳴沢村のキャベツ60%、それに厳選の甲州ぶどう40%をブレンドしている。あえて、ブドウを混ぜているのは、キャベツだけでは糖度がなく、アルコール発酵しないから。
甲州ぶどう100%のワインに比べると、かなり黄色みが濃いのが特徴。鼻を近づけると、ブドウの香りが弱いせいか、アルコールの香りが際立って、どこかブランデーにも似た感じ。だが、飲んでみるとアルコールの強い刺激はなく、むしろほんのり甘みもある。実際のアルコール分は13%未満で、一般的なワインとほぼ同じ。とはいえ、やはりキャベツ由来の青臭さもあり、味わいは個性的。ちなみに冷やして飲むのがオススメとのこと。
開発にあたっては、キャベツ独特の青臭さがあるため、味のバランスに苦労したようだ。当初は青臭さを消すためにタマネギを入れるなどしたが、試行錯誤の結果、シンプルにキャベツと甲州ブドウのみを使うことに落ち着き、現在まで長らく味は変えていないという。
販売しているのは村内にあるJA鳴沢村と道の駅なるさわの2カ所だけなので、かなりレア度は高い。味の好みはわかれるところのようだが、たまには変わったワインを飲んでみたい人、ぜひ一度試してみては。
(古屋江美子)