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タツノオトシゴ・オスの“出産”に思う

2008年9月10日 10時00分

タツノオトシゴ
写真提供(c)ウェブ屋コプロ(http://www.copro.net/freephoto/)

メスがオスを選り好みすることでよりよい子孫を残そうとする“性淘汰”について以前のコネタで触れたが、タツノオトシゴは逆にオスがメスを選り好みする。と、いうのもタツノオトシゴは、メスが卵を生産したあと、オスのおなかにある育児嚢の中に移し、オスがおなかの中でかえすので、メスとオスの役割がある意味逆転しているのだ。

メスがオスの育児嚢に卵を産みつけ、そこに入っていく途中で受精が行われるため、オスがおなかに持っている卵は全部そのオス自身の子ども。もちろん、産みの苦しみを味わうのもオスのほう。オスのおなかから小さなタツノオトシゴの赤ちゃんが飛び出していく神秘的な出産風景は、テレビなどで見たことがある方も多いだろう。時々子どもが引っかかってうまく出て行かないと、それがもとで父子が死亡することもあるというので命がけ。まさに“出産”である。

タツノオトシゴはその特徴的な姿から、とても人気がある海水魚。稚魚は一度に数十~数百匹生まれることが多く、小さいながらも大人と同じ姿をしているのがまたかわいらしい。以前、2匹のタツノオトシゴがハート型に向き合っているデザインのグッズを見かけたが、彼らは実際、メスが卵を産みつける時、2匹向かい合って抱き合うように抱擁するので、ハート型に見えるらしい。なんともロマンティックなエピソードを持つ魚である。また、たくさんの子どもを産むことから、古くから安産のお守りとして使われてもいる。

さて、そんなタツノオトシゴの子育て事情を描いたユニークな絵本があるのをご存知だろうか? 『はらぺこあおむし』で有名なエリック・カール氏の作品で、その名も『とうさんはタツノオトシゴ』(偕成社)である。オスが子育てをする魚を紹介している科学絵本的な顔を持ちつつ、エリック・カールならではの鮮やかな色彩で描かれた絵が美しく、読み終わったあとは穏やかにじんとしてしまう1冊。最後のページのとうさんの言葉がとても印象的で深い父性愛を感じてしまうし、もちろん子どもがよろこびそうな仕掛けページもあるので(透明シートに擬態する魚が隠れている)、大人が読んでも子どもが読んでも楽しめそう。

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モチーフとしても人気のタツノオトシゴ。これはフランスのフェーヴという陶器

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