先日、ドールハウスとミニチュアの展示会「ジャパンギルド・ミニチュアショー」に行ってきた。日本ミニチュア作家協会「ジャパンギルド」が主催する、国内外のドールハウス・ミニチュア作家が一堂に会するこの展示会。
100万円近くの予算を準備して来場するようなコレクターさんもいるらしく、ドールハウスファンにとって夢の祭典のようだ。

少女時代、お人形の家の窓からそっと中を覗いて空想(妄想)を繰り広げるのが趣味だった私だが、それはデパートで買ってもらった市販の“おもちゃのお家”の話。本格的なドールハウスの世界に触れるのははじめてのビギナーであるゆえ、会場に入るとまず「本物と違うところは大きさだけなのでは?」というほどのクオリティーに驚かされた。出展には厳しい審査があるため、その道の一流の人だけが集まっているのだそう。関西から見学に来たというミニチュア愛好家の方に話を聞いてみた。

「ミニチュアの世界って、レベルが上がれば上がるほど小物は“分業制”になっているんです。
世界的にもミニチュアのプロの人は、家具なら家具だけ、花なら花だけ、靴なら靴だけ、陶器なら陶器だけ、という人がほとんどです。例えば、家具を出展している方は元々本物の家具を作っていた職人さんが多いです。すべて本物と同じ作り方で作られていて、見えない部分にもきちんと溝が彫り込まれています。ミニチュア家具ひとつに数万円というと驚かれたりもしますが、実際に作ってみるとそれが決して高くないとわかります。職人の手仕事の結晶で、芸術作品なんですよ」

もちろん引き出しなどもすべて開けることができるし、まさに“スモールライトで縮小してみました”という感じ。作品の近くに虫眼鏡が配置されているのがミニチュアワールドならでは。
ちなみにドールハウスの国際的な基準サイズは、実物の12分の1。これはイギリスで1921年、ミニチュア好きのメアリー女王に贈るためのドールハウスを製作する際に確立されたサイズで、12進法に基づいている。3年の歳月をかけてつくられたというこのドールハウスは現在もウィンザー城に展示されており、当時の文化を伝えている。

「クイーンメアリーのドールハウスは、エレベーターなどの機械類は実際に動きますし、蛇口からは本当に水とお湯が出ますし、貯蔵室のワインには当時のワインが入っていますし、それはそれは素晴らしいものです。今、私達が個人で作っているものも、例えば、ミニチュアの籠を編むのなら、本物の籠編みから勉強する……、花束を作るのなら、植物図鑑から勉強する……という感じで、リアルに作ろうと思うと気が遠くなるくらい大変な世界です。私は“すべてを自分で作る!”という心意気で一軒のパティスリーを作ったのですが、2年くらいかかりました」

自分の究極の憧れ空間を縮尺12分の1で表現するなんて、とても夢があるなあと思う。
その作品の写真を見せていただいたのだが、まさにパティスリーそのもの!(写真参照)。あまりの素晴らしさに思わずため息をついたら、「そんなに凝らなくてもいいなら、お手軽なキットなども売っているので、気軽にドールハウスを楽しむこともできますよ」ともアドバイスいただいた。後日探してみたら1,000円台からあったので、それなら初心者でも気軽にチャレンジできそう。ドールハウスの世界に興味のある方は、まずはそこから入門してみるのもいいかもしれません。
(磯谷佳江/studio woofoo)