たとえば、エレベーターの中で。

どこからともなくプーンと漂ってきたとき、見ず知らずの人のオナラであれば、あからさまに鼻をつまむわけにも、ハンカチを顔にあてるわけにもいかないだろう。

だが、これが自宅での出来事で、お父さんや夫、彼氏などの常日頃浴びせられているオナラだとしたら? 「いかに避けるか」は、けっこう重要な問題ではないだろうか。

自分の場合、身近でオナラをされるときの注意として「屁が出ると思ったら別室でしてきてくれ」と頼むことがあるのだが、移動するゆとりがないときというのも、当然あるはずだ。
また、移動してくれたは良いが、脱衣所やトイレなど、狭い場所で放たれて、ずっと充満していた……なんて恐ろしいケースもある。
そこで、てっとり早く、「屁がくるときは、立つか、尻を上にあげてくれ」と頼んだりするが、オナラが本当に上にあがっていくかは、自信がない。
『知って得! 正しい医学知識』(成隆出版)著者で、医療法人社団池谷医院の池谷敏郎院長に聞いた。

「オナラが出たとき、お尻にわざわざ顔をくっつけて嗅ぐ人はいないでしょうが、匂いは漂ってきます。
これは空気と混ざってしまうから。ちなみに、昔は汲み取り式のトイレで、糞尿が化学変化を起こし、可燃性のメタンガスが発生して、爆発した……なんてこともあったんですよ」
オナラの成分の1つ、「メタンガス」の空気に対する比重は、0.555。空気より軽いわけで、「だったら、身を低くしたり、伏せたりして避ければ良いのか」と思うのだが、ことはそれほど単純ではないらしい。

「他にもオナラの成分は、窒素や水素、炭酸ガスや酸素など、個人差はあるものの、400種以上あります。結局、空気との比重はそれほど変わらず、混じり合って拡散していくはずですよ」
比重にあまり差がないとなると、「身を低くする」のがベストとも言えない。では、どうすれば良いのか。

「オナラと空気の比重にそれほど差がないとなると、オナラは気流によって流されているはずなので、風上に行くのがいちばん良いでしょう」

ちなみに、オナラの中でも、「安全圏」のレベルのものと、緊急避難が必要なニオイのものとがある。

オナラのニオイを決定づけるのは、「前日に食べたもの」だそうだが、要注意なのは、どんなとき?
「前の日に、肉類や、動物性タンパクをたっぷりとると、翌日は臭いものが出ます。また、ニンニクやニラ、ネギなど、『硫化アリル』という成分が含まれたモノをとった翌日も、ニオイが強いです」

オナラが出そうになったら、前の日に食べたものを考え、別室もしくは風下にいくなどの工夫を。また、危険なニオイが漂ってきたら、すみやかに風上に移動しましょう。
(田幸和歌子)