「納豆は保存食なのに、スーパーやコンビニで売られている納豆の賞味期限は意外と短いよね? なぜ?」
これは、ある編集さんからの疑問。

確かに、もともと発酵してる食品なのに、スーパーやコンビニで買う納豆は、賞味期限が1週間後ぐらいだったりする。
これってなぜなのだろうか。
全国納豆協同組合連合会に聞いた。

「納豆を『保存食』と思われている方は多いですが、そもそもそれは正しくはなく、正確には『携帯食』です。昔は大豆を藁に入れ、持っていったものから発展したと類推されるんですよ」

納豆の風味を生かして「保存食」にした製品もあるが、一般の納豆はあくまで「携帯食」。納豆菌より強い「麹菌」によって、納豆菌の進行を止めているのだという。
つまり、「納豆菌」はそのままだとどんどん進行するということ?
「そうです。
納豆菌は、大豆のタンパク質、糖質などをエサにして分解し、粘りやビタミンK2、ポリグルタミン酸、アミノ酸などの様々な栄養素を生成します。納豆菌は進行が早く、自分たちが出したモノもエサにしてどんどん発酵を進めてしまうのですが、そうした中にアンモニアも含まれているんです。そのため、時間が経つと、どんどんツーンとしたニオイが強くなって、鼻につくニオイになったり、納豆の良さがどんどん損なわれてしまうんですよ」

納豆の製造工程は、室に入れて蒸した大豆に納豆菌をふりかけ、容器に入れて寝かして、発酵させるのが一般的。その後、冷却させることで、発酵をいったんストップさせているという。
賞味期限が意外と短いのはそのためで、期限だけでなく、「保存状態」も非常に重要な食品なのだ。
「製品にもよりますが、一般的に納豆の賞味期限が出荷してから8日とか10日とかなのは、あくまで“冷蔵した状態”でのことで、最良の段階で食べられる期限目安なんです。
それを過ぎたら食べられなくなるわけではありませんが、納豆菌による分解がどんどん進んでしまい、ニオイが強くなったり、糸引きが悪くなったり、また、表面にはアミノ酸の1種・チロシンという白い結晶ができてしまいます。これはジャリジャリしていて、不味いんですよ」

通常、納豆はスーパーやコンビニでは冷蔵で売られているが、そういえば、八百屋や一部小売店など、常温で売られている場合もある。これって……?
「本来は冷蔵していないとダメですよ。まして夏場は、発酵がどんどん進んでしまいますから。一次発酵で冷却し、発酵をストップさせた納豆も、流通過程ではジワジワ発酵が始まってしまいます。納豆にとって大事なのは、二次発酵をいかに防ぐか。
スーパーなどの扱いが悪いと、本来の美味しさが損なわれるんです」

『おいしい微生物たち』(野正昭/集英社)によると、納豆は発酵食品であるにもかかわらず、酒のように「火入れ」のような殺菌工程を行わない。だからこそ、流通過程や家庭での保存方法に、十分な注意が必要なのだそうだ。

美味しく納豆を食べるためには、賞味期限だけでなく、保存方法にもご注意を。
(田幸和歌子)