平成9年、39件。平成19年、184件。

この数字、大麻取締法違反による検挙数のうち、栽培で検挙された案件の数である(出典:警察白書)。この10年で5倍近くにまでふくれあがった検挙数。
ここ最近、ニュースで薬物問題が多く取り上げられるようになったが、大麻をこっそり栽培する人が増えたことも関連しているのだろう。

もちろん大麻の栽培は違法だし、やっちゃいけないことなのだが、何しろ相手は植物である。タンポポのようなノリで、お庭の片隅に大麻が自生してしまったら、一体どうすればいいのだろうか。
勝手に抜いて捨てちゃったらあとで問題になりそうだし、かといって放っておいていいわけないし……。


まったく対処法が思いつかないので、東京都福祉保健局に聞いてみることにした。
麻薬関連の案件は、健康安全部薬務課麻薬対策係という部署が扱っているらしい。
どうでもいいけど、長い名前である。

実際問い合わせてみると、東京都の場合は「そのままの状態で最寄りの保健所に連絡」というのが鉄則らしい。
何しろ大麻は、栽培しているだけで即逮捕の代物。放っておくなどもってのほかだが、場合によっては計画性や事件性がないか、警察の判断が必要になる。

だから現場を荒らしてはいけないのである。

判断までの手続きはケース・バイ・ケースだが、大麻が自生したと判断された場合、土地の所有者が「いつの間にかウチの庭に大麻が生えていて困ります。保健所の皆さん、抜いてください」と連絡すると、計画性・事件性がないか確認の上で、都の職員が大麻をひっこ抜く。
ちなみに、この作業は『抜去(ばっきょ)』という。

じゃあ、抜去された大麻はどうなるのか。
これも東京都の場合だが、小平市に東京都立薬用植物園という、薬用植物・有毒植物・ハーブ等の収集・栽培育成・試験検査などを目的とした施設に運び、土に埋めてしまうのだそうだ。

サヨナラ大麻、人知れず眠れ。

今回は東京都福祉保健局に取材したため、上記で紹介した内容はあくまで東京都での対処。ただ、大麻が生えている時点で事件性の有無の検証が必要になるため、地域が異なってもおおむね上記のような手順で自生した大麻を処分していると思われる。

なお、営利目的で大麻を栽培した場合、10年以下の懲役、300万円以下の罰金が科せられる。また、大麻の所持や譲渡には5年以下の懲役、とくに営利目的の所持には7年以下の懲役と、それぞれ200万円以下の罰金が科せられる(2009年9月現在)。

大麻や覚せい剤などの薬物汚染がニュースでもたびたび取りざたされているが、自らの健康のことや、罪の重大さを考えたら、絶対に薬物に手を出してはいけない。
絶対だ!
(新井亨)