私には、冬になるとスノーボード狂と化す友人が多い。毎週ゲレンデに足を運び、飽きることなく雪山を滑る。
しかし、私はスノーボードに挑戦したことがない。毎年お誘いを受けてきたが、「ゲレンデに行くと風邪を引く」との理由で断り続けたせいか、その機会を逃してしまった。そして今では、スノーボードに誘われることもなくなり、途端に私は“雪山を滑りたい願望”を持つようになった。
そんななか、ある人から「雪板」というおもしろいボードがあるとの情報を入手した。雪板についてより詳しく知るため、雪板シェイパーの五明 淳さんにお話を伺った。

雪板はハンドシェイプされた木板で、スノーボードのように足を固定するビンディングが付いていない。スノーボードの原点に戻り、五明さんがアレンジを加え創り出したものだという。
「雪板は、長年の思いを形にしたものなんです。中学生の頃、自由に山へ滑りに行けなかった私は、凍結した道路の上をスケートボードの板だけで滑ってみようと考えました。でも、あまりうまくいかなかった。それから5年ほど経ち、雪上用のスケートボード『スノースケート』と出合いました。パウダーを滑ったら予想以上にコントロールでき進みもよかったので、パウダー用のスノースケートを作ったらおもしろそうだと思ったんです。
そのアイデアを知り合いや友人に話したら、みんな協力してくれて」

当初は間伐材を有効利用するため「からまつ」で作ろうと試みたがうまくいかず、友人の勧めで「えんじゅ」の端材で削りはじめたのが4年前だそうだ。
「大体の形を作った後は、実際に滑って余分な個所と必要な箇所を研究しながら試行錯誤を繰り返しました。圧雪を滑るのは難しいですが、パウダーだとおもしろいほど滑れます。初めて乗った時は、自分の作った雪板に乗っている感動が大きかったです」

こうして、スノーボードでもスケートボードでもない、雪板が生まれた。一つひとつ思いを込めて手作りした雪板には、魂があると五明さんは言う。
「雪板は、がんばれば自分でも作れるのが魅力です。イメージしながら削っても、実際滑ってみるとイメージとのギャップがあったり、逆にすごく一致していたり……。雪板には、自分で削っているからこそ味わえる発見や喜びがあります」

五明さんいわく、雪板に乗るコツは「無理せず楽しむこと」だそう。雪板は、どこまでもシンプルな遊びなのだ。
「まずは、スキー場の誰もいない斜面で練習しましょう。うまく滑れるようになったら、ドライパウダーで滑るのがおすすめです。湿ったパウダーは、板に雪がくっついてしまうのでワックスを塗るといいですよ。」
今後は、子供でも楽しめる手軽でリーズナブルな雪板や長野県産からまつ合板、竹ソールの雪板を作ってみたいと話してくれた。
今回お話を伺ううちに、私の気持ちはスノーボードを飛び越えて雪板へ。まずは、雪に慣れることから始めようと思う。いつかマイ雪板で雪山を滑れる日がくるように。
(うつぎ)
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