6月のサッカーワールドカップを前に、いま「文学」が国別に熱い戦いを繰り広げる「ワールド文学カップ」なるものが開催されていると耳にした。

ところは、紀伊國屋書店新宿本店2階催事場。

同書店文学好きスタッフ有志「紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ」によって、昨年開催されたフェア「対決! 共鳴し合う作家たち」の第2弾として企画されたもので、今回は650点の文学作品を53カ国のチームに編成し、フェア会期中の売上冊数に応じて、毎週ランキングを発表、会期中算の売上から文学世界ランキングを決定するという。

実際に足を運んでみると、運動会さながらに万国旗が掲げられたコーナーには、国別に本が並べられ、1冊1冊にコメントがつけられ、また、コメントをまとめた「ブックレット」が配布されていた。
こうして「国別」に並ぶと、タイトルや装丁など、どこかしらまとまり感、特有の空気のようなものが感じられるから、不思議だ。

また、教科書的に取り上げられがちな、いわゆる「名作」ばかりでなく、そのセレクトはなかなか興味深い。
「650点」は、どのような基準で選抜されたものなのか。紀伊国屋書店総務部に聞いた。

「クラブのメンバーが愛好する、ぜひとも取り上げたい作品をいったん国別に分け、どこの国に何冊足りないかを算出した上で順次埋めていきました。スタッフが実際に読んでみて、本当に面白かったものだけを選び出しています。冊数が多すぎる国については、逐一担当者同士でどちらの作品の方が面白いかを議論しました。上下巻構成などの大著は催事には不向きなので、基本的に外しています」

コメントの担当分けは、「フランス文学やヨーロッパの古典だったら○○」「日本の詩歌だったら△△」「ラテンアメリカなら」「中東なら」「SFや現代ロシアなら」といった具合に、スタッフの誰かが得意としているところはそれぞれに全権を委任して選書をしてもらい、必要に応じて互いに手助けしたのだという。

昨年8月には構想を練り始め、紆余曲折を経た後、ようやく現在の「ワールド文学カップ」のかたちができあがったのは11月頃。
「大変だったのはポップを書くこととブックレットの作成。
1人につき100枚近くはポップを書いているため、その作業に要した時間はとてつもないものでした。読んだことのある人にしかわからないようなポップになってはつまらないので、必要に応じて本棚からその本を引っ張り出してきて再読するなど、一枚一枚にかなりの時間がかかっています」

ところで、そもそもなぜ「ワールドカップ」という形式にしたのか。
「もちろん6月の南アフリカワールドカップを意識してはいますが、前回フェアを実施したときにお客様から、『国別に展開してもらいたい』という声があったことも大きな理由です。基本的に小説を読むときには作家の出身国を意識することはないと思いますが、ならば逆にそのくくりで並べてみたときどんな共通項が生まれるのか、それを見てみたいという気持ちがあり、今回の企画が生まれました」

ちなみに、日本の作家の本が、他国のコーナーにあったりするのが面白いが、これは、
「ただ作家の出身国別に分けるのでは味気ないと思い、その国を舞台としている小説も入れるようにしました。結果、インターネットで調べるだけではできない構成になったかと思います」
とのこと。

文学好きは、ぜひ足を運んでみては?
(田幸和歌子)
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