「逆流性食道炎」という病気をご存じだろうか? 略して「逆食」などと呼ばれることもある、最近メジャーになりつつある病気だ。アトムが登場するエーザイの啓発CMが印象的だが、「逆食」についての専用のページを設ける製薬会社も多い。

そんな矢先、先日人間ドッグを受けた筆者の父が「逆流性食道炎」の診断を受けた。なんともタイムリーである。今や身近なものになりつつある「逆流性食道炎」とは一体どんな病気で、増えているのはなぜか。気になったので調べてみた。

「逆流性食道炎」とは、その名の通り、胃酸が逆流することで食道に炎症を起こす病気である。ふつう胃と食道の間は、胃から胃酸や食べ物が食道内へ逆流しないよう一定の圧力がかかり閉まっている。
だが、「逆流性食道炎」の患者は、何らかの原因で胃酸が食道へ逆流し、その酸が原因で食道粘膜に炎症を起こすのだという。代表的な症状は、むねやけ、胃もたれ、げっぷ、おなかの張り、胸の痛みなど。場合によっては、耳が痛くなることまであるという。では、最近増えているのはなぜなのか? 山中内科クリニック院長の山中先生に聞いてみた。

まず、どんな人がかかりやすいのでしょうか?
「たとえば、腰が曲がった高齢の人、肥満の人などがかかりやすいでしょう。腰が曲がって前かがみになってしまうと、おながか圧迫され胃が押されます。
すると、胃酸が逆流しやすくなってしまうのです。さらに、加齢により“下部食道括約筋”という胃から食道へのものの逆流を防ぐ働きをする筋肉の機能が低下してしまうと、胃酸の逆流を防ぎにくくなります。また、肥満の人の場合は、おなかの脂肪で胃が押し上げられ、胃酸の逆流を招きやすくなります」

では、「逆流性食道炎」にかかる人が最近増えているのはなぜ?
「日本人の欧米化が進み、食生活でも肉や脂肪の多い食事をとることが多くなっています。こういった食事は胃が刺激されやすく、胃酸の分泌が盛んになります。これが原因のひとつでしょうか。また、最近は忙しい人が多く、遅くまで働いている人が増えています。
深夜に帰宅して食事を摂ると、すぐ就寝してしまう人も少なくないのではないでしょうか。実は食後すぐに横になると、胃酸は逆流しやすくなるのです。ストレスで食道の働きが弱っていたりすれば、なおさらでしょう。こういったいくつかの理由が重なって、逆流性食道炎にかかる人の数は年々増えているのだと思います」

なるほど、これはまさに現代病といえるだろう。たしかに筆者も、遅くに帰宅して夕飯を食べてそのまま就寝、というパターンが常である。逆流性食道炎は目の前か!? 食べてすぐ寝てしまうことが、太る原因になるだけでなく、逆流性食道炎の恐れまで招くとは……。
今後は気をつけようと思う。
ちなみに、なってしまったら内服治療が有効とのこと。たかが「胸やけ」と甘く見ることなかれ。心あたりのある方は、ぜひ一度医師の診察を受けてみることをおすすめしたい。
(堀口麻琴/プロップ・アイ)