駅の改札で、SuicaのようなICカード乗車券が入った財布を、自動改札機にドスンッ! と叩きつける人がいる。Suicaをぶつけてるのか、ストレスをぶつけてるのか分からないけど、突然の打撃音にドキッとする。
と同時に、イヤ~な気分にもなる。

Suicaなどは「非接触型ICカード」と言われるように、別に改札機のタッチ面(読み取る部分)に触れず、空中を通すだけでも読み取ってもらえる。ただしJR東日本などでは、タッチ面からSuicaを離し過ぎて読み取れないことを防ぐため、「Suicaをふれてください」などとアナウンスしている。文字通り「タッチ」するのが公式の使い方だ。

とはいえ、財布で強く叩きつけるのは、さすがにやり過ぎのはず。改札機は壊れちゃわないんだろうか? 多くの自動改札機を作っているメーカーに聞いてみた。

「タッチ面はアクリルでできておりまして、パネルの厚さや材質を工夫することで、耐久度を高めています。しかし、やはり極端な負荷をかけると、破損するおそれがあります」

じゃあ、どのくらいの衝撃まで耐えられるようになってるの?
「具体的な数値の回答につきましてはお答えできませんが、通常の使用状態で、お客様が安定的にご利用いただけることを想定しており、極端に重いもので叩かれたり、過剰に強く叩かれた場合は想定しておりません。通常の使用状態として想定していますのは、定期券ケース等にICカードを入れて、歩きながらタッチするものであり、大きな財布やカバンで強く叩く状態ではありません」

またタッチ面は、衝撃に耐えることだけが目的じゃないという。
「タッチ面の材質を硬くし過ぎると、モバイルSuicaなどを搭載した携帯電話でタッチした場合、携帯電話が破損してしまう恐れが出てきます。そのため、適度な硬さのアクリルで作られているんです」

ちなみに携帯電話を破損させないよう、パネルの下にクッションを入れることも、ひとつの方法として考えているとのこと。今のところコストの関係で実現していないものの、これからさらなる対策が施されていくかもしれない。
もちろん、だからって改札機を叩いていいわけじゃなく。

「ICカードを財布に入れている場合、財布の中のICカードの位置により、タッチ面に正しくかざされず、読み取りできないケースがあります。これらの経験を重ねるうちに、財布をタッチ面に強く叩くようになってしまうのかもしれませんね」

タッチ面へ上から置くようにかざし、改札機が「ピッ」と鳴るまでタッチしてほしい――。
自動改札機は、財布で唐突に叩いてくる人に、そう訴えてます。
(イチカワ)