最近、イタリアではアジアンフードの人気が高い。和食や中華をはじめ、韓国やタイ、ベトナムなどさまざまな国のレストランが増え、スーパーでアジア系食材を見ることも多くなった。
イタリア人はもともと健康的な食事へのこだわりが強く、アジアの食事はヘルシーというイメージが強いことも影響していると思う。
個人的にはアジアンフードが気軽に楽しめるのは嬉しいが、やはりここは遠く離れたヨーロッパ。イタリア人の舌に合うようアレンジされたものも多く、中には「どこの国のエッセンスを集めたのだろう」と困惑してしまうような食べ物もある。今回はそんな、イタリア風にアレンジされたアジアンテイストを試してみたい。
わさび味のポテトチップ……と思ったら?
「はいはいわさび味ね」と手にとった瞬間に、すごい違和感に襲われる
まず最初に紹介したいのはこちらのポテトチップ。わさび味は日本でも時折見かけるので馴染み深いが、その隣に配置されているものをよく見てほしい……りんごだ。
これはイタリアでは有名なポテトチップスのブランド「サン・カルロ」が最近出している「piu gusto(ピュウ・グスト)」シリーズ。「ピンクペッパーとライム」「ミントとチリペッパー」など一風変わったフレーバーを集めたシリーズで、その新作が「わさびとりんご」味だ。
外見はわりと普通、わさびらしき緑色の粉がかかっている
肝心の味だが、ざっくり言うと甘いわさび味という感じ。わさび特有のピリッとした辛さはかなり抑えられていて、代わりにりんごの甘味が強く出ている。味自体は決して不味くないとは思うのだが、日本人である自分にとっては「甘いわさび」の違和感が強すぎて受け付けにくい。食べられなくはないけど、わざわざこれを選ぶ必要もないかな。
最近は緑茶もブーム、だけどなんか変だ
緑茶&シトラス&アロエ……これはお茶なのだろうか?
緑茶は日本らしさを感じる飲み物のひとつだが、最近はイタリアのスーパーで見かける機会も多くなった。そんな中で見つけたのが上の写真のお茶だ。
パッケージを見るとオーガニック・グリーンティーにシトラスとアロエが入っているらしい。これはおいしそうにも思えるが、実際どうなのだろう。早速淹れてみた。
中身はティーバッグだったので、パッケージに書いてあるとおり100度のお湯を注いで2〜3分待ってみたのがこちら。色はともかく、香りは完全にレモンティーだ。実際に飲んでみると、紅茶のレモンティーに比べて味がぼんやりして物足りない感じ。これは紅茶に比べると緑茶のほうが味がデリケートなせいもあるかもしれない。
ただ、試しに砂糖を入れてみると味のぼんやりした感じが気にならず、むしろ優しい味わいのレモンティーのように感じられておいしい。イタリアで(というか、おそらくヨーロッパ全般で)緑茶といえば砂糖を加えるのが一般的なので、それに合わせて作られた商品なのかもしれない。
定番の日本食は寿司、アレンジされたらインドが混じった!?
もう、どこからツッコんでいいのやら……
世界中どこでもそうだと思うが、日本食の代表格といえばやはり寿司だ。というわけで近くのスーパーで見かけたのがこちらの商品。
「そののりたまは何だ」「これは寿司か?」など、いろいろなツッコミがあるのは十分承知している。ただ、まずはパッケージに書いてある「CHIRASHI AL CURRY」の文字に注目していただきたい。
イタリア語がわからなくても十分理解できると思うが、直訳するとご想像どおり「カレー味のちらし」となる。こんなに小さいパッケージで6.99ユーロ(約900円)という値段に思わず手が止まりそうになるが、勢いとノリだけで買ってみた。
カレー味のチラシに醤油をかけていいものか迷う
予想はつくと思うけど、ご飯にかかっているのりたまのようなものはカレー味のフレークだ。どうしてこんなことになったのかは分からないが、実はカレーフレークの風味がそれほど強くないため、思ったほど刺身とケンカしていない。ちらし寿司にほのかにスパイスが混じっているだけで、不思議なことに味は意外とまとまっている。
もちろん、900円出してもう一度買おうとはまったく思わないけど。
ヘルシーな豆腐も人気が高い、イタリアの正統派アレンジは意外とイケる味
豆腐が箱に入ってるだけでも新鮮なビジュアル
豆腐はイタリアでも人気の高い食材のひとつ。低カロリー高タンパクなうえヘルシーというのがその理由。スーパーのベジタリアンコーナーでよく見かける食材だ。その中で、ちょっと奇妙な豆腐を見つけたのでご紹介したい。
商品名にある「Tofu alle Erbe」は「ハーブ入り豆腐」の意味になる。原材料を見てみると、豆腐のほかニンニクやイタリアンパセリ、バジル、マジョラム、タイムなどが入っている。パッケージを見る限りでは、サラダに入れることを想定した商品なのだと思う。
醤油の量が少ないのは……ちょっとビビっているからです
というわけで、勇気を出して冷奴にしてみた。
豆腐部分にガッツリとハーブが入っているためブルーチーズのようにも見えるが、においは紛れもなく豆腐。味はニンニクが入っているせいか、しっかりと風味があっておいしい。日本のデリケートな味わいの豆腐とは全く違うけど、別の食材として考えればかなりイケる。
褐色のフレーバーウォーター……中身はキュウリ?
褐色の水、何味か想像できますか?
最後に、フレーバーウォーターでとんでもない味のものを見つけたので紹介したい。上の写真がその商品だが、その味は「リンゴ、キュウリ、アーティチョーク、ショウガ」の4つ。もちろん単品ではない、4つの味がミックスされた飲料だ。
これはイタリアの「サンタンナ」という飲料ブランドが最近出した「カルマ」というフレーバーウォーターのシリーズ。ほかにも「トマト、ブラッドオレンジ、バジル」「パイナップル、カボチャ、アロエ、セージ」など攻めまくった味の商品を出しているが、今回はアジアンテイストということでこの褐色の水を買ってみた。
君たちはなぜ出会ってしまったのか……
味は土臭いリンゴ……たぶんショウガのせいだと思う。キュウリとアーティチョークの風味はほとんど感じないが、見えないところでただただ雑味を加えている気もする。
視点を変えれば「甘いショウガ」ということで、ショウガ湯のように感じられないこともない。
ただショウガ湯と大きく異なるのはほっとする感じがなく、飲んでいてただただ不安を感じることだ。おいしいかと聞かれれば、「うーん……」と言ったままずっとうつむいていたくなるような味。このシリーズの他の味も試してみようか迷っていたけど、買わなくてよかったと思う、ほんとに。
というわけで、日本人にとっては違和感だらけの食べ物ばかりだったがいかがだろうか。当然といえば当然だが、今回紹介したのはどれもイタリアでアレンジされた食べ物。そのため、日本人が持っている「こういう味付けがおいしい」という共通認識がまったく通用しない。このあたりは見ていて面白いし、心地よくすらある。
ただ今回いろいろ食べてみて感じたのは、意外とどれもうまく味がまとめられていたこと。一番のゲテモノだと信じて買った「カレーちらし」でさえ、カレーが控えめで味がうまく整えられていた。そのせいか、組み合わせや見た目に違和感があっても「まずくて食べられない」なんてことはなかった。このあたりは、食にうるさいイタリアの底力といったところなのかも。
こういうアレンジされた食べ物っておそらくどの国にもあると思うので、海外旅行に行った際に試してみたり、お土産にするのも面白いかもしれない。
ほんとに、意外とイケる味のものも多いので。
(鈴木圭)
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